プジョー208GTライン 価格:8SAT 293万円 試乗記
新型プジョー208が発売された。新型は当初から、同じボディで内燃機関と電気の2つの動力源が選べるように開発されており、EVはe―208と呼ばれる。価格はガソリン仕様が239万9000~293万円。e―208は389万9000~423万円だ。今回は1.2リッター直列3気筒ターボ(100ps)を積む上級グレード、GTラインに試乗した。
208は、205、206、207の系譜を継承するコンパクトサイズの実力車。新型のボディサイズは全長×全幅×全高4095×1745×1465mm。旧型比で120mm長く、5mm幅広く、5mm低くなった。2540mmのホイールベースは共通だ。4mを超えた全長が目立つが、実は2世代前の207とほぼ同サイズ。旧型より確かに大きくなったが、取り回し性は優秀。コンパクトカーならではの美点をしっかり堅持したサイズ設定だ。
スタイリングは、スポーティですっきりとした印象。206から旧型までは躍動感を強調した造形だったのに対して、新型は落ち着いた台形フォルムに変化した。ボディサイドのラインは水平に近く、前後ウィンドウの傾きは絶妙にバランスしている。ヘッドランプの下に伸びるデイタイムランニングランプが個性を演出し、幅広いユーザー層に好まれそうな造形にまとめている。
サイドウィンドウの輪郭が、1980年代の205に似ていることにも気づく。とりわけGTラインはリアクオーターパネルのロゴや黒いホイールアーチなど、日本でもヒットした205GTIを彷彿とさせる。
だが、けっしてレトロなイメージはない。縦に伸びるデイタイムランニングランプ、全幅にわたる黒いガーニッシュにランプを隠したリアビューなど,各部のデザイン処理は最近のプジョーテイスト。新型は、伝統と革新が絶妙に融合したスタイリングである。
室内は先進的。小径ステアリングの上から遠くに置かれたメーターを見るプジョー独特の「i―コクピット」はいちだんと機能的でスタイリッシュに発展した。旧型と比べてドライビングポジションは自然になり、メーターは3Dデジタル式にリファインされた。3Dメーターは情報にメリハリをつけてあるので、速度など大事な表示を見つけやすいというメリットを感じた。
シートは素晴らしい。GTラインはスポーティなタイプになるが、レモンイエローとライトブルーのステッチが配され、カジュアルな雰囲気を演出することに成功している。メーターやディスプレイも同色でコーディネートしており、日本車やドイツ車では味わえない粋が伝わってくる。
前席はフランス車ならではの優しい座り心地と、しっかりしたサイドサポートを両立。後席は身長170㎝のパッセンジャーに十分な空間が得られる。大人4名がゆったりとくつろげる室内空間が与えられ、後方の荷室は低いフロア設定が印象的だった。
1.2リッター直3ターボは力強い。スペックは100㎰/205Nmにすぎないが、1170kgという車重は旧型と同等であるうえにATが6速から8速になったので、加速に不満はない。静粛性もハイレベルで、流れに乗って走る限り、いい意味で3気筒であることを意識させない。一方でドライブモードをスポーツにセットすれば、低めのギアを積極的に選びレスポンスが鋭くなる。スポーティな走りにトライしても満足感が高い。
旧型から大きく進歩したのは運転支援システムだ。高速道路で試したアクティブクルーズコントロールやレーンキープアシストなどは、現在の市販車としては最高レベルの完成度を持つ。
新型208は新世代プラットフォームをDS3クロスバックに続いて採用している。
乗り心地はフランス車らしさを強く感じるもので、しっとりとした足回りの動きに感心する。快適な座り心地のシートもプラスに作用し、1時間程度では疲れる気配さえない。フットワークは、かつてのプジョーのコンパクトカーのような鋭さは影を潜め、代わりに接地感がもたらす安定感と安心感が主体となっていた。
ペースを上げてもこの性格は変わらず、懐の深さを実感した。快適性もハイレベルにあり、ゆっくり流していても満足できるところがフランス生まれらしい。後日乗ったアリュール・グレードはさらにまろやかで、グレードごとの特徴が明確であることも確認できた。
名車205の面影を反映したスタイリング、モダンかつおしゃれなインテリア、乗り心地と操縦性が高次元で楽しめるシャシーなど、新型208は強力なライバルが多いこのクラスでも積極的に選びたくなるクルマに仕上がっていた。正真正銘の実力車だ。
グレード=GTライン
価格=8SAT 293万円
全長×全幅×全高=4095×1745×1465mm
ホイールベース=2540mm
トレッド=フロント1495×リア1495mm
車重=1170kg
エンジン=1199cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=74kW(100ps)/5500rpm
最大トルク=205Nm(20.9kgm)/1750rpm
WLTCモード燃費=17.0km/リッター(燃料タンク容量44リッター)
(市街地/郊外/高速道路=13.0/17.3/19.3km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/45R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
●主要燃費改善項目:可変バルブタイミング/筒内直接噴射/アイドリングストップ/電動パワーステアリング
●主要装備:アクティブセーフティブレーキ/レーンポジショニング&レーンキープアシスト/アクティブブラインドスポットモニター/トラフィックサインインフォメーション/ドライバーアテンションアラート/アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)/エレクトリックパーキングブレーキ/フロント&サイド&バックソナー/ワイドバックアイカメラ/フルLEDヘッドライト/インテリジェントハイビーム/スポーティフロントグリル/シャイニーブラックホイールアーチ/クロームエグゾーストエンド/スーパーティンテッドガラス(リア3面)/ルーフスポイラー/オートAC/3Dデジタルヘッドアップインパネ/本革巻きスポーツステアリング/パドルシフト/ドライブモードセレクター/アルカンタラ&テップレザーシート/7インチタッチスクリーン
●装着メーカーop:パノラミックガラスサンルー10万2000円/ナビゲーションシステム+ETCユニット24万6950円
●ボディカラー:パールホワイト(op7万1500円)
※価格はすべて消費税込み