SUBARUレヴォーグ 2020年10月15日発売予定 試乗記
プラットフォームはインプレッサから採用がスタートしたSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の進化型。具体的にはフルインナーフレーム構造(外板パネルを最後に結合)と構造用接着剤の使用拡大、樹脂リンフォースにより高いボディ剛性を追求(ねじり剛性は従来比44%アップ)。新型は、締結剛性を引き上げる新形状ボルトを採用した。
足回りは新世代。体幹を鍛えた車体に、ロングストローク化されたサスペンションを組み合わせる。GTとGT-Hはコンベンショナルダンパー(KYB製)、STIスポーツはスバル初採用の電子制御可変ダンパー(ZF製)を装備。加えて、2ピニオン式電動パワーステアリングや操縦性を高める空力アイテムをプラスした。
走りは「正常進化」ではなく「激変レベル」だ。たとえるなら、STI社がファインチューニングした至高のコンプリートカーのSシリーズ、その中でもSTIハンドリングマイスター・辰己英治氏が手掛けたS206に近い走りに到達している。
具体的にいうと、車体は固さだけでなく、しなやさを持っている。フロントからリアへの力の伝達に遅れがないうえに、伝わり方が滑らかな点が印象的。サスペンションの味つけは「ロールを抑え、クイックに動かす」ではなく、「ロールを上手に活かし、綺麗に動かす」セッティングだ。ステアリング系は穏やかなのに、レスポンスがよく、直結感が高い。
電子制御可変ダンパーを採用したSTIスポーツの完成度は、さらにハイレベル。STIスポーツはパワートレーン、パワーステアリング、ダンパーなどの特性を変更するドライブモードセレクトを採用。その効果はテキメンだ。
コンフォートは別名「奥様モード」。超しなやかな足の動きでSTIスポーツとは思えないほど優しく、柔らかな感触が味わえる。スポーツ+を選ぶと、ダイレクトで一体感を備えた「お前はWRXか!?」と思うほどシャープになる。ベストはオールラウンダーな特性のノーマルだが、単純に柔らかい、硬いとは違う「キャラクター変化」はうれしいポイントだ。
従来モデルは、ドライビングに相応の技量を要求したが、新型は誰でも上手に走らせられる。まさに「運転が楽しくなるクルマ」だ。
従来モデルでも定評のあった先進安全性能、アイサイトは飛躍的にレベルアップ。広角化されたステレオカメラ、前後合わせて4基のレーダー、電動ブレーキブースターの採用などで衝突回避性能は世界トップレベル。加えてEX仕様は、3D高精度地図データとGPS情報を利用する先進運転機能、アイサイトXを搭載している。
アイサイトXは高速域でレーンチェンジを支援するアクティブレーンチェンジアシスト、コーナー通過速度を最適にするカーブ前速度制御、料金所でもアイサイトをOFFする必要のない料金所前速度抑制。渋滞時に50km/hまで手放し運転が可能なハンズオフアシスト、渋滞時に自動で再発進する渋滞時発進アシスト。ドライバーに何かあった際にクルマを安全に停止&周囲に状況を伝えるドライバー異常時対応システムなど、多彩な機能を搭載。実際の制御は、まるでプロドライバーが操っているかのような滑らかさ。「これならクルマに任せてもいい」と思える。実走テストを徹底的に繰り返し、システムを煮詰めた成果だ。
価格は310万2000円から409万2000円のもよう。従来モデル比で少し値上がりしているが、装備の充実と走りの性能を考えると、「実質値下げ」といっていい。
開発の陣頭指揮を取ったプロジェクト・ゼネラル・マネージャーの五島賢氏は、「スバルが持つ技術をすべて盛り込んだ」と語る。新型レヴォーグは新世代スバルの方向性を示す先駆モデルであり、イメージリーダーである。
グレード=GT-H・EX
価格=8CVT 370万7000円(編集部調べ)
全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント1550×リア1545mm
車重=1570kg
エンジン=1795cc水平対向4DOHC16Vターボ(レギュラー仕様)
最高出力=130kW(177ps)/5200~5600rpm
最大トルク=300Nm(30.6kgm)/1600~3600rpm
WLTCモード燃費=13.6m/リッター(燃料タンク容量63リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/45R18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m