日産フェアレディZ 価格:524万1500~646万2500円 試乗記
伝統を巧みに織り込んだ造形はスタイリッシュ。走りはダンスパートナー!
フェアレディZは、1969年の登場以来、50年以上の歴史を積み重ねてきた。新型は次の50年に向けた意欲作である。
まずは車両をひと回り。日本刀をイメージした引き締まったプロポーションと歴代モデルのオマージュ(フロント回りは1stモデル、リア回は4thモデル)をバランスよく織り込んだデザインはスタイリッシュだ。過去と未来が上手にバランスされており、マッチョな印象が強かった旧型に対してスマートさがプラスされている。
運転席に座る。インパネ回りは横基調の機能的なレイアウト。視界に余計な物が入ってこないため、タイトなのに開放感がある、という不思議な感覚だ。
メインメーターはフルデジタル、伝統の3連メーターはアナログとエクステリアと同じく過去と未来をバランス。ステアリングやシートは体にスッと馴染み、形状や触感も良好だった。
エンジンはスカイライン400Rと共通スペックだ。実際に走らせると「似て非なる印象」。歴代最強の絶対性能の高さはいうまでもないが、いい意味でターボらしさを感じない。段付きのないトルク感とアクセルの応答性、伸びのよさとサウンドが印象的だ。官能的で繊細な特性の持ち主である。
6速MTは従来の改良版。ゴリゴリした印象と抵抗感が薄れ、硬質なタッチながらもスッとシフトが入る。ドライビングのリズムが取りやすい。シンクロレブコントロールの制御も進化しており、ダウンシフトの正確性はプロドライバー並みである。
9速ATもいい。シフトの繋がりはもちろん、エンジン特性とのマッチングは良好。MTより上だと感じた。滑らかさよりもダイレクト感を重視したフィーリング、走行状態に合わせたシフト制御により、「スポーツできる」ATに仕上がっている。
フットワークは素晴らしい。基本骨格こそ旧型を踏襲するが、前後車体構造の一新やサスペンションジオメトリーの変更、ラックアシストEPSの採用とほぼ全面刷新された。安定性は模範的。操舵力は旧型より軽くなっており、操舵感もいいベアリングに変えたかのような滑らかさとスッキリ感を実現している。
ハンドリングは一連の流れに連続性があることと、前後重量配分が適正化されたかのようなバランスのよさが印象的だった。旧型はよくいえば豪快、細かい操作が難しかった。新型は豪快さをそのままに繊細な操作にクルマが忠実に反応する。
もちろん400psオーバーのFRである。ラフなアクセル操作をするとクルマは不安定な方向になる。とはいえ動きは唐突ではなく対処できるレベル。コントロールしやすい。つまり、安心を担保しながらFRの旨味を味わえる。まさに「ダンスパートナー」である。ただし無理は禁物だ。
新型は型式がZ34と先代と同じなので、口が悪い人は「大幅改良レベル」と評価しているようだ。だが、実際に見て、触れて、乗ると、むしろ型式が変わった5th、6thの進化よりも伸び代は大きい。個人的には「Z35」と呼びたい完成度である。