ゲームソフト「グランツーリスモ SPORT」に登場するマクラーレンの未来的コンセプトカーが、サーキット専用モデル「ソーラス(Solus)GT」として現実化。パワーユニットには自然吸気の5.2リットルV10エンジンをミッドシップ搭載。販売台数は25台限定で、すでに完売
英国マクラーレン・オートモーティブは2022年8月20日(現地時間)、サーキット専用モデルの「ソーラス(Solus)GT」を発表した。販売台数は25台限定だが、すでに全車が売約済み。デリバリーは2023年からを予定する。現在、サーキットでのテスト走行を鋭意実施しているそうだ。
今回発表されたソーラスGTは、ゲームソフト「グランツーリスモ SPORT」に登場するバーチャルのマクラーレン・コンセプトカーがベース。このモデルに命を吹き込むため、最高峰のモータースポーツからスーパーカーおよびハイパーカーの開発まで、マクラーレンの幅広い経験と専門性をフルに活かして現実のクルマに仕立てた。
スタイリングはインスピレーションを得たバーチャルカーに則り、シングルシートのクローズドコクピットとティアドロップ形のキャビン、ジェット戦闘機を思わせるスライド式キャノピー、ハンマーヘッドのフロントセクション、シュリンクラップのボディワークなどで構成。エアロダイナミクスも最大限に重視し、巨大なフロントスプリッターで取り込んだ空気はグラウンドエフェクトトンネルを通過してフルワイドのディフューザーから排出され、合わせてタイヤは空力的な形状のポッドで覆って、整流効果を大きく高める。また、大型のフロントリップスポイラーやサイドのアンダースポイラー、サスペンションのカーボンファイバー製エアロシュラウド、そしてツインエレメントの固定式リアウィングを装備して、強力なダウンフォースとドラックの比率を最適化。さらに、ロールフープのカバーと一体化したコクピット上配置のインテークや、サイドポットに内蔵したラジエーターによって、優れた冷却性能を実現した。
基本骨格に関しては、事前にカーボンに樹脂を含浸させるプリプレグ工程を導入して構造的強度を高めたカーボンファイバー製のモノコックと、同じくカーボンファイバー製の前後シャシーストラクチャーで構築。また、エンジンとギアボックスをシャシーのストレスメンバーとして活かすとともに、カーボン製クラッシュストラクチャーをギアボックスと一体化する。さらに、チタン製ヘイロー保護装置やロールバーなどの構造コンポーネントに3Dプリント技術を活用した。一方、懸架機構は前後ダブルウィッシュボーン式を採用し、インボード式トーションバーダンピングをフロントはプッシュロッド、リアはプルロッドで作動させる。また、マニュアル調整が可能な専用セッティングの4ウェイダンパーを組み込んだ。装着するホイールは18インチの鍛造アルミニウム製で、固定にセンターロック式を採用。タイヤはル・マン プロトタイプ仕様で、スリックとウエットを用意する。ブレーキは6ピストン/モノブロックのアルミニウム削り出しキャリパーと、カーボン製のブレーキディスクおよびパッドを組み込んだ。
ミッドシップ配置のパワーユニットには、自然吸気の5.2リットルV型10気筒DOHCエンジンを搭載。パフォーマンス向上に最適な、少数生産の削り出しコンポーネントで構成し、最高回転数は1万rpm超を成し遂げる。最高出力は840ps以上、最大トルクは650Nm以上を発生。また、完全なギア駆動を取り入れ、補機類用のチェーンやベルトは省略した。組み合わせるトランスミッションには、鋳造部と、マグネシウム製パネルを持つアルミニウム製ケースを組み合わせた専用設計の7速シーケンシャルギアボックスを採用。モータースポーツ由来のストレートカットギアを内蔵したうえで、カーボンファイバー製クラッチをソフトウェアで自動化する。性能面では、0→100km/h加速の目標タイムが2.5 秒、最高速度が200mph(320km/h)超と公表している。
内包するインテリアは、センター配置のシングルシートで構成。ドライバーはスライド式キャノピーから乗り込み、そこにF1スタイルのヘイロー型コクピット保護装置を装着する。シート自体は固定式で、ペダルの位置調整のみが可能だ。また、カーボンファイバー製のステアリングホイールには主要な操作系とTFTインストルメントディスプレイを配備。さらに、広角のリアカメラをロールフープ上に設け、リアビューディスプレイでの確認を可能とした。
なお、マクラーレンではソーラスGTによるサーキットイベントを計画。オーナーのサーキット活動をサポートするため、すべてのマシンはフライトケースとともにデリバリーされる。そのなかには必要なツールやジャッキ、スタンド、無線装備一式、クーラントプリヒーターが含まれるという。