ホンダが新型シビック・タイプRの販売を開始。スポーツモデルの本質的価値である「速さ」と官能に響く「ドライビングプレジャー」が両立する究極のピュアスポーツ性能を徹底追求。車両価格は499万7300円に設定
ホンダは2022年9月2日、新型シビック・タイプRを発売した。車両価格は499万7300円に設定。月販計画台数は400台で、生産は埼玉製作所の完成車工場で実施する。
今回の全面改良で第6世代となる新型シビック・タイプRは、従来モデルのコンセプトである「Ultimate SPORT」をさらに進化させた「Ultimate SPORT 2.0」というコンセプトのもと、スポーツモデルの本質的価値である「速さ」と官能に響く「ドライビングプレジャー」が両立する究極のピュアスポーツ性能を徹底追求したことが特徴である。
まずはデザイン面の注目ポイントを見ていこう。
基本フォルムは現行シビックの5ドアハッチバックボディをベースに、タイプRとしての走行性能を高めるため、さらにロー&ワイドなパッケージを追求。また、広い水平視野角を持った視界とすることで、高い車速域においてもドライバーに情報がダイレクトに伝わるプロポーションを構築した。
エクステリアについては、圧倒的な速さと美しさを兼ね備え、かつ空力特性に優れるデザインで仕立てる。専用タイプのグリル開口部およびフロントリップスポイラーはワイドスタンスを強調しながらエンジンの冷却効果とダウンフォースを高め、またサイドパネルから美しく隆起する一体型ワイドフェンダーやリアタイヤ前に配したサイドシルガーニッシュによって、フロントからリアに抜ける一連の空気の流れを最適にコントロール。さらに、アルミダイキャストステーを採用して質感を向上させたリアスポイラーや、フロア奥からつながる専用設計のリアディフューザーおよびリアタイヤ後方の“えぐり形状”が大きなダウンフォースを発生させる。ディテールのデザイン性にもこだわり、赤いHバッジやTYPE Rのロゴ、逆L字型のデイランプを配したLEDヘッドライト、メッシュタイプのフロントグリル、ダクト部を逆台形に拡大したうえで空力性能を高めたバンパー、アルミ製のフロントフード、グロスブラックで仕上げた空力パーツなどを配して高性能と個性を主張した。ボディサイズは既存のシビック・ハッチバック比で45mm長く、90mm幅広く、10mm低い全長4595×全幅1890×全高1405mmに設定。トレッドも同比で前90/後50mm幅広い前1625/後1615mmとなる。ボディ色はタイプRの象徴的なカラーであるチャンピオンシップホワイトに加えて、新色としてソニックグレーパールを追加。ほかにクリスタルブラックパール、フレームレッド、レーシングブルーパールをラインアップした。
内包するインテリアは、ドアを開けた瞬間に気持ちが昂るような赤いシートとフロアカーペットを採用するとともに、インパネまわりは運転に集中できるようノイズレスなブラックを基調とする。また、フロントシートはサーキットでの限界走行時においても安心して身体を委ねられるよう多面体の3D形状で身体をサポートすると同時に、摩擦係数の高いラックススエードの表皮を採用することでコーナリングや急な加減速時などの高G状態での身体の滑りを低減。リアシートにもホールド性を高めるスエード調表皮を張った。一方、メーターには通常のCOMFORTおよびSPORTの表示に加えて+Rモードを設定した専用10.2インチデジタルグラフィックメーターを採用。サーキット走行などにおいて、ドライバーが必要な情報をいかに瞬間認知できるかを重視し、上部にはエンジン回転数やレブインジケーター、ギアポジションなどを配置し、下部をマルチインフォメーションディスプレーとすることで車両情報を任意に表示できるようにアレンジする。さらに、レブインジケーターは注視しなくても感覚的に認識できる点灯式を採用し、瞬間的に情報を視認でき、気持ちが高揚するデザインとした。装備としては、赤ステッチを施したアルカンターラ巻き専用ステアリングホイールやアルミ製シフトノブ、偏光ガンメタリック塗装インストルメントパネル、シリアルナンバー入りアルミ製プレート、アルミ製センターコンソールパネルなどを標準で装備。機能面では、Honda CONNECTディスプレー+ETC2.0車載器〈ナビゲーション連動〉やアクティブサウンドコントロール、ドライブモードスイッチ(INDIVIDUALモード/SPORTモード/COMFORTモード)、+Rモードスイッチ、レブマッチシステム、専用データロガー Honda LogR(ホンダ ログアール)などを組み込んだ。
パフォーマンス面に関しては、圧倒的な速さを追求するとともに、運転時におけるあらゆるフィーリングを磨き上げ、FF最速を目指す“Fastest(ファステスト)”、痛快なドライビングフィールで運転することに夢中になる“Addicted Feel(アディクテッド フィール)”、高速安定性と信頼感に満ちた“Secure Feel(セキュア フィール)”の具現化を開発の目標とする。
Fastestでは、これまでのタイプRを上回るパフォーマンスを目指して、小型軽量化し回転レスポンスを向上させた新開発モノスクロール・ターボチャージャーの採用や、ベアリングの構造変更、インテークの管径アップとストレート化、ラジエーターとインタークーラーの冷却性能のアップ、エンジンECUのリファインなどを図ったK20C型1995cc直列4気筒DOHC16V・VTECユニットを搭載し、より高出力・高レスポンスの実現を極限まで追求。最高出力は330ps/6500rpm、最大トルクは42.8kg・m/2600~4000rpmを発生する。また、フロントグリル開口面積を大きくしてラジエーターの有効開口面積を48%拡大するとともに、グリル開口部から取り込んだフレッシュエアをコアサイズとファン能力を向上させたラジエーターに効率良く通し、ボンネットに設けたフードベントから排出する新設計のエアフローレイアウトを採用した。一方、足もとにはミシュランと共同開発したタイプR専用の265/30ZR19 93Yスチールラジアルタイヤ(ミシュランPILOT SPORT 4S)を装着。組み合わせるホイールには、通常タイプに対してインナーとアウターのリム形状を反転させた「リバースリム構造」を採用してホイールイン側の歪みを低減させる専用の19インチリバースリムアルミホイール(9.5J×19)を配備した。
Addicted Feelでは、速さを追求するだけでなく、ドライビングに夢中になれるよう、思い通りに操ることを目指したハンドリングや、足裏に吸いつくようなスロットルワークによるドライバビリティを磨き上げる。基本骨格はベースモデルと同様に樹脂製テールゲートを配するなどして軽量化を図りながら、高効率継ぎ手構造などを用いた高剛性プラットフォームの採用や、スポット溶接部へ構造用接着剤の塗布エリアを先代から大幅に増加させることで、ダイナミクスの基盤となるボディ性能の軽量化および高剛性化を実現。また、前デュアルアクシスストラット式/後マルチリンク式のサスペンションに組み込む4輪独立電子制御ダンパーのアダプティブ・ダンパー・システムの制御は、車体のモーションとタイヤ4輪の接地性を連携してコントロールするロールピッチ制御に、バネ下加速度を加えた制御を行うことで、荒れた路面でも優れた運転操作によるクルマとの一体感とダイレクト感のあるハンドリングを成し遂げる。さらに、究極のシフトフィールを目指して新設計のシフトレバー構造を採用。レバーの高剛性化と横方向のレバーのガタつき要素を排除し、ダイレクト感と節度感を向上させる。合わせて、トランスミッション内部のシフトリンク機構の最適化や、シフトゲートのストレート部分を延長することで、5速から4速といった斜めシフト時のスムーズ感を向上し、すっきりとした操作感を達成。組み合わせるクラッチのフライホイールを軽量化し、レスポンスを高めたこともトピックだ。そして、タイプRならではの迫力あるエンジンサウンドにするため、エンジン回転上昇時の中周波音を増強して迫力ある排気原音に進化。同時に、排気の主流が通過するサイレンサーの中央配管にアクティブ・エキゾーストバルブ機構を新たに組み込んで、エンジン出力向上と迫力ある排気サウンドの両立を実現する。さらに、アクティブサウンドコントロールシステム(ASC)を採用して、駆動力レスポンスに呼応する気持ちの良いエンジンサウンドを演出した。
Secure Feelについては、洗練されたデザインとしたうえでさらなる空力進化を図り、前後バランスの良いダウンフォースの発生と、空気抵抗の低減を高次元で両立。また、制動機構にはマスターパワーの特性を従来仕様から変更したBrembo社製フロント大径ベンチレーテッド2ピースディスクブレーキ(Φ350mm)およびBrembo社製フロントアルミ対向4ポットキャリパーを配して、低速から高速までのさらなるコントロール性を向上させる。さらに、操舵機構にはモーターコントロールユニット(MCU)制御の再設計やトーションバー径のアップなどを果たしたEPSを、駆動機構にはヘリカルLSDなどを採用した。
新たなドライビングプレジャーの提供を目指して、リアルタイムにクルマの機械的な運動情報や自分自身の運転操作による車両の挙動などを知ることができるHonda LogRを活用したことも、新型タイプRの訴求点。まずパフォーマンスモニター機能では、エンジンの水温・油温など車両自体の情報に加え、ステアリング舵角やブレーキ圧、アクセル開度、ヨーレートなど運転操作やそれに伴う車両の状態に関する情報を表示。さらに前後左右のGや3Dモーション、タイヤの摩擦円をリアルタイムに算出して表示するなど、これまで知ることのできなかった様々な車両情報を表示して、ドライバーのスキル向上に貢献する。
一方でスコアリング機能では、日常の自分自身の運転操作や挙動を知ることがドライビングスキルの向上に重要と考え、一般道向けの「Auto Score機能」と、サーキット走行向けの「Data Log機能」の2つの機能を搭載。さらに、Data Log機能で保存したデータを、次の同じサーキットでの走行ラップと比べて一画面で表示するVSモードも設定した。
ほかにも、スマートフォンから走行情報にアクセスできるHonda LogRアプリや、スマートフォンを車両に搭載してHonda LogRアプリで走行動画を撮影すると走行データと同期させた1つの動画が作成できる機能も新たに採用した。
安全面の向上にも抜かりはない。広い範囲と高い精度で対象物を検知するフロントワイドビューカメラや、ガラスや外壁など非金属も高い精度で検知する前後ソナーセンサー、リアのレーダーを採用した最新の先進安全運転支援システム「Honda SENSING」を標準で装備している。