マセラティ・ブランドストーリー Since:1914
初のレーシングカー、ティーポ26にトライデントを採用
マセラティは、アルフィエーリ、エットーレ、エルネストのマセラティ兄弟により1914年に設立された。もともとレースに情熱を抱く長男カルロの影響で自動車界に足を踏み入れた3人だったが、創業直前にカルロは病死。続いて第1次世界大戦が勃発するなど、その船出は決して順風満帆ではなかった。
それでも点火プラグの製造を足がかりにして事業を拡大。1926年には初のレーシングカー、ティーポ26でタルガフローリオに参戦し、初戦でクラス優勝を果たす。このとき、マシンに掲げられていたのがトライデント(三叉の矛)。これは、ボローニャのシンボル、トライデント像の手に握られているもので、以来、マセラティのトレードマークとなっている。
1929年にはV16エンジン搭載のV4で速度記録に挑戦。246.069km/hをマークして新記録を樹立した。ただし、財政状況は思わしくなく、1937年にはアドルフ・オルシが買収。その一方でF1などに参戦して多くの成功を収めたほか、美しいクーペボディを架装したグランドツーリズモを次々と発表し、次第に名声を確立していく。
しかし、その後もマセラティの経営は安定せず、1960年代以降はシトロエン、デ・トマソ、フィアット・グループなどが経営権を掌握。現在はフィアットを傘下に収めるステランティス・グループの一員としてラグジュアリーカーの開発と生産に取り組んでいる。
製品面では、1960年代から70年代にかけてミッドシップスポーツカーを手がけた時期もあったが、基本的には豪華で長距離ドライブを安楽にこなすグランドツーリズモをブランドの軸に据えてきた。さらに2020年にはMMXXと題したブランド再構築のイベントを開催。今後は電動化を強力に推し進めるとともに、スーパースポーツカーのMC20やSUVのグレカーレといった新世代モデルを投入する方針を明らかにしている。
最新モデルはすべてを新設計したMC20
走り出しての第一印象は、エンジニアリングの真面目さが際立っていること。とくに新開発のエンジン(=ネプチューンユニット)がそうだ。ターゲットスペックを一途に狙って開発したという感じがにじみ出る。その分、フィールやサウンドといった遊び心にはやや欠ける。
スポーツカーとしての性能はすべての指標において超一級だ。500kmの長旅を一気にこなすしなやかさも持っている。街中の乗り心地もよく、ドライバビリティに優れる。ワインディングロードでは、思わず息を詰めて走ってしまうほどに楽しい。
ステアリングフィールはあくまでもダイレクトかつソリッド。前輪はハンドルを通じて両腕と直接つながっているかのようだ。しかもリアのトラクションは絶大で、一般道レベルであればどんなコーナーでも安心して踏んでいける。ブレーキフィールは安心と正確さという点でロードカーとして最高の部類だった。MC20はマセラティの新基準を樹立したスーパーモデルだ。