メルセデス・ベンツE200ステーションワゴン・スポーツ 価格:9SATC 810万円 試乗記
Eクラスは、オーナードライバーの終着点ともいわれる。メルセデスならではの上質性と高い実用性に魅了され、Eクラスを乗り継ぐオーナーは珍しくない。現行モデル(W213)の日本デビューは2016年。SUV全盛の時代にあって、一時は輸入車販売台数ランクで年間4位に入った。さすがは世界のスタンダードモデルである。今回、4年が経過して定例のマイナーチェンジを実施。完成度をいっそう高めた。
Eクラスのラインアップは、ステーションワゴン、セダン、クーペ、カブリオレと豊富。中でもオールマイティな使い勝手を誇るワゴンの人気が高い。
スタイルの変更は予想どおり。フロントフェイスは他の最新メルセデスと同様に、目が細く釣り上がり、台形のグリルを置く。リアのランプは細身になった。ワゴンのボディサイズは全長×全幅×全高4955×1850×1465mm。実に堂々としているが、最小回転半径は5.4m。メルセデスのよき伝統で取り回し性に優れる。ステアリングはよく切れ、小回りが利く。良好な視界と相まって、実に運転しやすい。このあたりを評価して、 Eクラスを指名するユーザーは多いと聞く。
新型は450やオールテレインなどの一部を除き、AMGエクステリアラインを標準装備するスポーツグレードが基本。スポーティで精悍な「グリルスターマスク」は、若々しく魅力的だ。ただし、往年のEクラスの雰囲気が好きだというファンのために、ジェントルな「ボンネットスター仕様」も選べるとうれしいのだが。
インテリアデザインの変更は最小限だ。目立つのは新造形のステアリング。「この手があったか」とうなる逸品だった。個人的にステアリングホイールのスポーク上にやたらとスイッチのあるクルマは好きではない。だが、Eクラスの新デザインは秀逸だった。各スポークをダブルにして、そこに機能スイッチが配されている。見た目に新しく、操作性は良好だった。
注目すべきは各種機能の進化だろう。運転支援技術は最新モードになって、右折時の対直進車緊急停止やドアを開く際の後方接近警告など、いっそう充実したシステムになった。ハンズオフ検知は、トルク感応式から静電感応式に変更され、使い勝手が向上した。
面白い新装備としては日本市場初となるAR(拡張現実)ナビゲーションがある。ナビ誘導時、進むべき道の指示が地図ではなく実際の景色上(ヘッドアップディスプレイ)に現れる。より直観的に進路判断が可能だ。使ってみると、確かに便利なシステムだった。「未来」が確実に「現実」になっていることを実感した。
パワートレーンは8種類とバリエーション豊か。エントリーグレードの200はBSG+48V電気システムのマイルドハイブリッド 1.5リッターガソリンターボ(184ps/280Nm)を搭載。そのほか、 300を名乗る2リッター直4ガソリンターボ(190ps/370Nm)や2リッター直4ディーゼルターボの220d(194ps/400Nm)、さらにはISG搭載の3リッター直6ガソリン、そしてAMGの53および63、プラグイン・ガソリンハイブリッド350eにディーゼルハイブリッド350deまで、すべてのニーズに応える体制を誇る。幅広いラインアップは、メルセデスの主力モデルらしい。
今回は200スポーツのワゴンを中心に、200スポーツのセダン、 300スポーツのクーペとカブリオレを試した。
エンジンの実力は高い。プレミアムモデルは、6気筒以上が似合うという考えは、そろそろ改めたほうがいいかもしれない。 200スポーツでもパフォーマンスは十分以上。出足の加速はよく、高速の追い越しも悪くない。300になるとエンジンの回り方やその動的フィール、動力性能まで4気筒とは思えない出色の仕上がり。クーペをスポーティに、オープンをラグジュアリーに走らせる余裕があった。ただしエンジンサウンドはやや興ざめ。200のディーゼルのような鼓動は、耳についた。
足回りの完成度は高い。落ち着き払ったフットワークに感心させられた。ワゴンは空荷でも安定感ある走りをみせる。しなやかでいて強靭。スポーティな走りにトライしても、素直に応える。ドライビングは絶大な安心感に支配され、しかも楽しい。SクラスやCクラスとは異なる、オーナーカーらしい味わいはEクラスならではの個性といえる。
グレード=E200ステーションワゴン・スポーツ
価格=9SATC 810万円
全長×全幅×全高=4955×1850×1465mm
ホイールベース=2940mm
トレッド=フロント:1600×リア:1590mm
最低地上高=130mm
車重=1790kg
エンジン=1496㏄直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=135kw(184ps)/5800~6100rpm
最大トルク=280Nm(28.6kgm)/3000~4000rpm
モーター定格出力/最高出力=_8kW/10kW
モータートルク=38Nm(3.9kgm)
WLTCモード燃費=12.7km/リッター(燃料タンク容量66リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=9.9/12.9/14.2)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:245/40R19/リア:275/35R19+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
●主な燃費改善対策:ハイブリッドシステム/アイドリングストップ/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング
●主要装備:レーダーセーフティパッケージ(アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック+アクティブステアリングアシスト〈アクティブレーンチェンジアシスト+アクティブエマージェンシーストップアシスト+緊急回避補助システム+アクティブブレーキアシスト〉+PRE–SAFE/PRE–SAFEサウンド+アクティブブラインドスポットアシスト+アクティブレーンキーピングアシストほか)/アダプティブブレーキ/アテンションアシスト/360度カメラシステム/パークトロニック/アルミニウムボンネット/19インチAMG5ツインスポークアルミ/AMGスタイリングパッケージ/マルチビームLEDヘッドライト/アダプティブハイビームアシストプラス/アジリティコントロールサスペンション/レザーARTICO&ファブリックシート/ブラックアッシュウッドインテリアトリム/ダイレクトステアリング/ダイナミックセレクト/12.3インチワイドディスプレイ(ナビ機能付き)/MBUX/クライメートコントロール
●装着メーカーop:AMGラインインテリアパッケージ(ナッパレザーシート+レザーARTICOダッシュボード+ステンレス製ペダル+AMGスポーツステアリング+後席シートヒーター+プライバシーガラス)52万5000円/エクスクルーシブパッケージ(Burmesterサラウンドサウンドシステム+エアバランスパッケージ+ヘッドアップディスプレイ)28万7000円/パノラミックスライディングルーフ22万8000円
●ボディカラー:ヒヤシンスレッドメタリック(op20万7000円)