サクラの売れ行きが絶好調だ。航続距離が180kmと短くても、それが軽自動車なら大丈夫という物事を合理的に考えられる人や、いち早くBEVに乗ってみたいという人がそれだけ大勢いたということだろう。
サクラは日産EVのエントリーモデルであり、軽自動車のフラッグシップに位置づけられる。プラットフォームを含め、諸々はデイズと共通性が高いものの、内外装は別物。新鮮な印象を与える。ディテールまで作り込まれたボディパネル造形や、一文字のテールランプなどは、軽自動車らしからぬ雰囲気をかもしだしている。
モータースペックは64ps/195Nm。ドライブしてまず感じるのは、非常に乗りやすいことだ。俊敏で力強い加速と、静かでなめらかな走りは、660ccのターボとは一線を画する。最大トルクは軽ターボの倍近い。おかげで流れに乗せるのもラクだ。
エコモードでも、モーター駆動の強みでストレスを感じることはないが、市街地は車速をよりコントロールしやすいノーマルモードが適する。スポーツモードはよりキビキビとした走り味を楽しめる。
ハンドリングはスッキリとしていて気持ちがよい。BEVの強みで重心が低いおかげで安定感を感じる。トレッドに制約のある軽自動車では、これはありがたい。動力性能面でも運動性能面でも、軽自動車とBEVは相性がよいものだとつくづく思った。
乗り心地は前席については良好。後席は足回りのストロークが短い影響で、硬さを少し感じる。サスペンションの共通性が高いデイズ4WDで感じたのと同様だ、ただし、サクラはブッシュの容量を増やすなど手当てされたことが効いて、いくぶん突き上げは軽減された。取り回し性は抜群。街中では最小回転半径わずか4.8mと小回りがきく。
実走の電費計測結果は上々だった。この電費をリーフで出すことはかなり困難。やはり軽さというのは強力な武器であることを実感した。ちなみにWLTCモードで180kmという航続距離は、実際の走行感覚にかなり近い。絶対的には短いが、日常ユース中心なら、さほど不満は感じないだろう。
充電については、バッテリー容量が小さいからこそのメリットを感じる。短時間の充電でSOC(バッテリー充電率)がみるみる上がっていくのはサクラならでは。しかもSOCが高くなっても充電電力の落ち込みは小さい。リーフにはないバッテリー冷却システムを採用したのは、やはりそれだけ効果があり有益だと判断されたからに違いない。
サクラは、乗ってみたいと感じさせ、実際にドライブすると、「いいな!」と思うBEVである。
100%モーター駆動である点で共通する3台だが、それぞれの特徴がある。エンジンを発電用に積むノートは、エンジンが始動すると音や振動が生じ、それが少なからず気になる半面、給油することで航続距離を瞬時に伸ばすことができるのが強み。
また、4WDの設定があるのもノートの特徴だ。新しいe-POWER 4WDは従来のe-4WDとは別物で、リアモーターの出力が大幅に向上しており、それがハンドリングにも効いている。ちなみにサクラには、ノート4WD用のMM48型というリアモーターを軽自動車の自主規制値である64psに調整して搭載されている。
一方のリーフはより万能で、世界のどこでも通用する本格的な普及を念頭に置いた存在。BEVのベンチマークといえる。WLTCモード航続距離も最大で450kmに達している。ただし、バッテリーの温度管理こそしているものの冷却はしていない点など、最新モデルであるサクラと比べると見劣りする部分もある。
グレード=サクラG
価格=294万300円
全長×全幅×全高=3395×1475×1655mm
ホイールベース=2495mm
トレッド=前1300/後1295mm
車重=1080kg
モーター型式=MM48(交流同期電動機)
モーター定格出力=20kW
モーター最大出力=47kW(64ps)/2302 -10455rpm
モーター最大トルク=195Nm/0-2302rpm
一充電走行距離(WLTCモード)180km
交流電力量消費率(WLTCモード)=124Wh/km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=20kWh
サスペンション=前ストラット/後3リンク
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ドラム
タイヤ&ホイール=155/65R14+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=4.8m
装着メーカーオプション:プロパイロットパーキング 5万5000円/プレミアムインテリアパッケージ4万4000円/165/55R15タイヤ+15inアルミ2万2000円/充電ケーブル(コントロールボックス付き100V・7.5m)5万5000円/LEDフォグランプ+ホットプラスパッケージ8万3600円
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