SUBARUの最新SUV、クロストレックは、ネーミングこそ日本では”ブランニュー”となるものの、これまでのXVのモデルチェンジ版。今回、名称を北米モデルと共通化している。ちなみに名称は、「クロスオーバー」と「トレッキング(=軽い山歩き)」に由来する造語だ。
「アウトドア・アクティビティへの冒険心をかき立てる」をコンセプトに開発されたエクステリアは、好評だった従来のXVの雰囲気を強く受け継いでいる。その上で、大型のヘキサゴングリルに代表されるフロントマスクと躍動感を強調したフェンダーとクラッディング処理、ボディ幅一杯に張り出した4本のタイヤがもたらす踏ん張り感が印象的だ。これまでのXVを上回る個性と躍動感を演出している。
ボディサイズは全長×全幅×全高4480×1800×1575mm。基本的に従来のXVと同等で、2670mmというホイールベースも共通。昨今、モデルチェンジを行うたびに肥大化するのが世界的な潮流となっている中で、手頃なサイズを守ったのは朗報だ。最大のマーケットであるアメリカを筆頭にカナダやオーストラリアからもサイズ拡大を求める目立った声は現れなかったという。5.4mという最小回転半径を含めて、日本でもまず持て余すことのないサイズ設定は、大きな魅力である。
ラインアップは、必要十分装備のベースグレードと、上級モデルの2グレード。パワートレーンは2リッターのe-BOXERとリニアトロニックCVTの組み合わせ。駆動方式は前述のように4WDとFWDが選べる。
クローズドコースで、短時間ながら4WDとFWDをテストドライブした。
両仕様を乗り比べるとやはりFWDの方が、加速感はいくばくか軽やかな印象。CVTを用いながらいずれもラバーバンド感の少ないリニアな加速フィーリングには好感が持てた。
ただし、145psの2リッターエンジンに最高出力がわずか10kW(13.6ps)に留まるモーターをトランスミッションに組み込んだ簡易型ハイブリッドのe-BOXERの働きは相変わらずかなり限定的。体感できるメリットは、クリープ力をモーターで発生することと、中間加速時にキックダウンを行うポイントがやや遅くなる程度だ。
一方、ボディの剛性感がより高くなり、ステアリングフィールにも自然な感覚が増したのは好印象。これは構造用接着剤の適用部位を大幅に増やし、とくにサスペンションの取り付け部位の剛性を高めたボディと、EPSの2ピニオン化といったリファインが功を奏していると想像出来る。短時間のテストドライブながら、取り付け方法やフレーム構造から見直したというドライバーズシートの、しっかりとしたホールド感も確認することが出来た。
ところでSUBARUは、100年に一度の変革期に対応して、積極的な改革を推進している。自動車部門のルーツである軽自動車から手を引き、バスの車体製造や鉄道事業、産業機器事業などからも撤退をするなど「選択と集中」を急速に進めたことは、ひと昔前から比べると成長を遂げたとは言え必ずしも「大きい」とは言えない規模を考えれば当然かも知れない。
同様に、商品群ではこのところはSUV系モデルに力を入れている。重要な北米マーケットを筆頭に世界的にSUVがもてはやされいることを考えれば、こちらも自然な流れと受け取れる。
そうした中にあってスバルのSUVならではの特徴は、十分な最低地上高や「Xモード」の積極展開に見られるように、決して見かけだけではなく高い踏破性を実現している点。4WD技術をコアコンピタンスに実質的メリットを追求し続ける姿勢にありそうだ。
遅れがちだった「電動化」でも、現在より本格的なフルハイブリッド・システムを開発中である。トヨタとコラボレーションを組んでのピュアEVの展開にももちろん注目だ。
グレード=上級モデル(AWD)
価格=8CVT 未定
全長×全幅×全高=4480×1800×1575mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
最低地上高=200mm
車重=1610kg
エンジン=1995cc 水平対向4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=107kW(145ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(18.6kgm)/4000rpm
モーター最高出力=10kW(13.6ps)
モーター最大トルク=65Nm(6.6kgm)
WLTCモード燃費=未公表(燃料タンク容量48リッター)
(市街地/郊外/高速道路=未公表)
サスペンション=前ストラット/後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/55R18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m