フィットにRSが帰ってきた。見た瞬間に”ボーイズレーサー”復活、と嬉しくなった。ロードセーリングを意味するRS(e:HEV・RS 234万6300円)は初代シビックのスポーツ版から継承する伝統の記号である。
ホンダはシビックに最強のタイプRが誕生したばかり。タイプRはサイズもクラスも価格もお手頃とは言い難い。先代のフィットRSはモータースポーツ全般を含め、スポーツコンパクトハッチとして、ちょうどいい設定だった。新型も同様。再び、人気が再燃しそうである。
フィットそのもののマイナーチェンジを機に追加されたRSは、期待通りスポーティな印象。エクステリアも足回りもスペシャル。パワーユニットにも工夫がある。RSの走行モードはECON/ノーマルに加えスポーツを用意。アクセル操作に対する応答性をより早めた。
ドライブした印象は本誌『CAR and DRIVER』をみていただくとして、このフィット e:HEV・RSは、ドライバーを心地よくする演出も十分。モーターとほぼ発電機に徹するエンジンの協調制御により、あたかもATが変速するかのようなシフトアップ感を演出してくれる。次代に最適なスポーツ性、e:HEVの新たな可能性を体感した。
3年計画でスタートしたフィット開発チームとボクを含めたジャーナリスト・レーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」との共同作戦も今年2022年が最終年。チームの目標は「もてぎエンジョイ7時間耐久」へフィット e:HEVで参加。レースという過酷な条件でe:HEVの可能性を探り、鍛える事が目標だ。
もちろんレースだけではなく新規アイデアを盛り込み、まさに走る実験室として、駆動系、サスペンションのチューンとe:HEVの駆動/発電モーター、発電エンジン、バッテリー制御など多岐に渡る項目を各種担当とやり取りした。それらの成果のいつかは、今回のe:HEV・RSに活かされている。実に勉強になった。
ホンダは古くから「ジャーナリストを育てる」意味も含めて共同でレース活動を行なってきた。規模は縮小されてはいるが、継続しているのが今回のフィット e:HEV開発チームとの共同作業である。我らジャーナリストも育てられたが、若い開発陣も仕事として取組み、その成果として今回のe:HEV・RSを生み出した。まさにモータースポーツから生まれたクルマである。
グレード=e:HEV・RS
価格=234万6300円
全長×全幅×全高=4080×1695×1540mm
ホイールベース=2530mm
トレッド=フロント:1485/リア:1475mm
車重=1180kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=78kW(106ps)/6000~6400rpm
最大トルク=127Nm(18.6kgm)/4500~5000rpm
モーター最高出力=90kW(123ps)/3500-8000rpm
モーター最大トルク=253Nm(32.1kgm)/0-3000rpm
WLTCモード燃費=27.2km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路=20.6/31.8/27.0km/リッター)
サスペンション=前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ディスク
タイヤ&ホイール=185/55R16+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=4.9m