【最新モデル試乗】新型スバル・レヴォーグはどこがすごいのか、公道を走ってわかった実力

SUBARUレヴォーグGTーH・EX 新型はGT/GTーH/STIスポーツを基本にアイサイトX標準のEXを設定 パワーユニットは全車1.8リッター水平対向4ターボ(177ps) 造形はSUBARUの新デザインキーワード「BOLDER=大胆」を具現化
SUBARUレヴォーグGTーH・EX 新型はGT/GTーH/STIスポーツを基本にアイサイトX標準のEXを設定 パワーユニットは全車1.8リッター水平対向4ターボ(177ps) 造形はSUBARUの新デザインキーワード「BOLDER=大胆」を具現化

SUBARUレヴォーグGT-H・EX 価格:8CVT 370万7000円 試乗記

すべてを新設計。新型は今や貴重な日本優先設計

 SUBARU(以下スバル)渾身の力作――、2ndレヴォーグには、そんなフレーズが似合う。レヴォーグは、1stモデルが2014年に誕生、2020年10月に初のモデルチェンジを行ったAWDステーションワゴンだ。

 世界の2大市場(中国と米国)が、ともに大型サイズを好む事情もあり、多くのモデルは世代交代のたびに大型化を繰り返している。その中で、レヴォーグが「日本中心」の開発姿勢を再び明確にしたことはうれしい限り。同時に、最新の骨格、SGPに詰め込まれたハードウェアが、パワートレーンからシャシー、そしてスバル自慢の運転支援システム、アイサイトに至るまで、すべてが「メーカーの総力を投入した、最新のアイテム」という点も大きな見どころだ。
 スタイリッシュになった新型のボディサイズは、全長×全幅×全高4755×1795×1500mm。従来型比で全長は65mm長く、全幅が15mm拡大され、全高は10mmアップしている。それでもパレット式立体駐車場への適合も含め、日本での使い勝手が重視されたディメンションの持ち主であることは間違いない。

 インプレッサ系と同じ2670mmのホイールベースは、従来型比で20mmのプラス。それを活かして「ニースペースを25mm拡大」した後席の居住空間は、大人2名が長時間過ごすのに十分な広さ。特別に広いとまではいえないが、快適な空間だ。

レヴォーグはトヨタ・ヤリスやホンダ・フィットなどの強豪を退け、見事に2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。実力の高さは折り紙付き
レヴォーグはトヨタ・ヤリスやホンダ・フィットなどの強豪を退け、見事に2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。実力の高さは折り紙付き
走りは上質&俊敏 ボディはフルインナーフレーム構造 ねじり剛性は旧型比44%アップ
走りは上質&俊敏 ボディはフルインナーフレーム構造 ねじり剛性は旧型比44%アップ

EXは新アイサイトX標準。斬新で機能的なメーター&ディスプレイ採用

 試乗車はGT-H・EXとSTIスポーツ・EX。アイサイトXが標準装備された両車には、いずれも11.6インチセンターインフォメーション・ディスプレイが装着されていた。わずかにパッセンジャー(左)側へとオフセットしてレイアウトされたそれは、大きく、そして縦型であることが特徴だ。

 ディスプレイは、基本的にはナビゲーションとマルチメディア関連、車両機能の設定操作を行うタッチパネルである。オーディオのON/OFFやボリューム調整、空調の温度調整などは画面脇に配置された物理スイッチで直接操作できる。トンネル進入時など、咄嗟に操作を行いたくなるメーター照度の調整も、ダッシュボード右下のダイヤルでダイレクトに操作が可能。スイッチ類を一律にタッチパネル式にすると、時に安全性を損なうことを知っている「スバルの良心」だ。

 ドライバーズシートに腰を下ろす。新開発シートは、ホールド性に優れると同時に腰椎部分をきちんと支えてくれる。着座感のよさと、スバル車ならではといえる運転視界の広さに感心する。新型は、全モデルにステレオカメラを主役とした運転支援システム「アイサイト」を標準装備。高精度GNSS(衛星測位システム)や高精細マップを活用し、一定条件下でのハンズオフ走行を可能にした「アイサイトX」が大きなセールスポイント。しかし、視界のよさや正しい運転姿勢の取りやすさなど、基本的な部分の完成度が高い。スバルの安全性確立のための真摯な取り組みを、改めて実感した。

全長×全幅×全高4755×1795×1500mm 旧型比で全長は65mm長く全幅は15mmワイドになったが日本の道路環境に適応したジャストサイズ
全長×全幅×全高4755×1795×1500mm 旧型比で全長は65mm長く全幅は15mmワイドになったが日本の道路環境に適応したジャストサイズ
インパネは先進デザイン EXは11.6インチセンターディスプレイ&フル液晶メーター標準 GTーHは各部にブルーステッチが入る
インパネは先進デザイン EXは11.6インチセンターディスプレイ&フル液晶メーター標準 GTーHは各部にブルーステッチが入る

伸びやかなパフォーマンス、フットワークは国産トップ

 現時点でのパワーパックは、新開発1.8リッター水平対向4気筒ターボ(177ps/300Nm)と、変速レンジを拡大させるなどの大幅リファインを受けたCVTユニットの組み合わせ。街乗りシーンから高速道路まで加速力は十分だし、静粛性もハイレベル。気持ちのいい走りが楽しめる。ただし、改良の手が加えられたとはいえ、CVTはまだアクセルONでエンジン回転数の上昇が実際の加速感よりも先行する「ラバーバンド感」が残っている。これは残念だ。

 さらにいえば、できれば新時代のボクサーサウンドを聞きたいと感じた。静粛性は高いものの「心地よい音質」という印象はない。「ない物ねだり」であることは理解しているが、独自技術でドライバーを魅了するスバルである。もう一歩のチャレンジを期待する。

 新型レヴォーグの走りで最も感心した点は、しなやかで洗練されたフットワークだった。これは、「スバル車で初」という電子制御式の可変減衰力ダンパーを採用したSTIスポーツの印象。フリクションを感じさせず、路面を問わず滑らかでフラットな乗り味を実現したフィーリングは、「日本車の常識を超えた絶品」である。

 流行のSUVではなく、むしろそこから外れたステーションワゴンに、ここまで気合いの入った開発を行ったことがレヴォーグの価値であり個性。クルマ好きの立場からいうと、「これでMTを設定してくれれば最高_」だ。新型レヴォーグの走りは一級品。ドライバーを魅了するグランドツーリングカーが誕生した。

レヴォーグは歴代レガシィ・ツーリングワゴンの伝統を継承した「グランドツアラー」  サスペンションはフロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン アイサイトXは50km/h以下のハンズフリー走行を実現
レヴォーグは歴代レガシィ・ツーリングワゴンの伝統を継承した「グランドツアラー」 サスペンションはフロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン アイサイトXは50km/h以下のハンズフリー走行を実現
新設計シートはホールド性優秀 腰椎部をきちんと支える設計 乗り心地は高水準 新型はホイールベース延長分(+20mm)を後席空間の拡大に充てた 室内長1900mm
新設計シートはホールド性優秀 腰椎部をきちんと支える設計 乗り心地は高水準 新型はホイールベース延長分(+20mm)を後席空間の拡大に充てた 室内長1900mm
荷室空間はワゴンならではのユーティリティ 後席使用時容量は従来比39リッター増の561リッター 荷室開口部最大幅1120mm 後席シートバックは4対2対4分割
荷室空間はワゴンならではのユーティリティ 後席使用時容量は従来比39リッター増の561リッター 荷室開口部最大幅1120mm 後席シートバックは4対2対4分割
EXのフル液晶メーターは標準/アイサイト/地図の3種の表示モードが選べる 写真は標準 どのモードも視認性優秀
EXのフル液晶メーターは標準/アイサイト/地図の3種の表示モードが選べる 写真は標準 どのモードも視認性優秀
ACCは全車速対応&自動再発進機能付き アイサイト関連スイッチはステアリングに集約 操作性に優れ使いやすい
ACCは全車速対応&自動再発進機能付き アイサイト関連スイッチはステアリングに集約 操作性に優れ使いやすい
トランスミッションは8速マニュアルモード付きリニアトロニックCVT アップテンポな走りでは若干「ラバーバンド感」が残る
トランスミッションは8速マニュアルモード付きリニアトロニックCVT アップテンポな走りでは若干「ラバーバンド感」が残る
新開発1.8リッター直噴ターボ(177ps/300Nm)は発進時の力強さ/豊かなトルク/スムーズな吹き上がりが魅力 WLTCモード燃費:13.6km/リッター
新開発1.8リッター直噴ターボ(177ps/300Nm)は発進時の力強さ/豊かなトルク/スムーズな吹き上がりが魅力 WLTCモード燃費:13.6km/リッター
GTーHは225/45R18タイヤ+ブラック塗装&切削光輝アルミ標準 ダンパーはKYB製 足回りはしっかりとした印象
GTーHは225/45R18タイヤ+ブラック塗装&切削光輝アルミ標準 ダンパーはKYB製 足回りはしっかりとした印象

SUBARUレヴォーグGT-H・EXの主要諸元と主要装備の主要諸元と主要装備

グレード=GT–H・EX
価格=8CVT 370万7000円
全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント1550×リア1545mm
車重=1570kg
エンジン=1795cc水平対向4DOHC16Vターボ(レギュラー仕様)
最高出力=130kW(177ps)/5200~5600rpm
最大トルク=300Nm(30.6kgm)/1600~3600rpm
WLTCモード燃費=13.6km/リッター(燃料タンク容量63リッター)
(市街地/郊外/高速道路:10.0/14.5/15.3km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/45R18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m
●主な燃費改善対策:アイドリングストップ/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング/自動無段変速機
●主要装備:アイサイトXテクノロジー(渋滞時ハンズオフアシスト+渋滞時発進アシスト+アクティブレーンチェンジアシスト+カーブ前速度制御+料金所前速度制御+ドライバー異常時対応システム)/アイサイトコアテクノロジー(プリクラッシュブレーキ+緊急時プリクラッシュステアリング+後退時ブレーキアシスト+AT誤発進抑制装置+ツーリングアシスト+全車速追従機能付きクルーズコントロール+車線逸脱抑制機能ほか)/アイサイトセーフティプラス(スバルリアビークルディテクション+エマージェンシーレーンキープアシスト+アレイ式アダプティブドライビングビーム+デジタルマルチビューモニターほか)/ドライバーモニタリングシステム/コネクテッドサービス(SUBARUスターリンク)/アクティブトルクスプリットAWD/2ピニオン電動パワーステアリング/フルLEDロー&ハイビーム/ハンズフリーオープンリアゲート/ブルーステッチ本革巻きステアリング/アルミパッド付きスポーツペダル/12.3インチフル液晶メーター/11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステム/前席電動調節機構/アクセスキー対応運転席ポジションメモリー機能/前後席シートヒーター/ダークメタリック塗装Ⓕグリル/マフラーカッター/18インチアルミ/左右独立温度調節式フルオートAC/電動パーキングブレーキ
●ボディカラー:アイスシルバーメタリック
※価格はすべて消費税込み

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