マクラーレン720Sスパイダー 価格:7DCT 3930万円 試乗記
マクラーレンは現在、アルティメイト/スーパー/スポーツ/GTという4つのシリーズを展開中だ(スポーツシリーズは次世代V6ハイブリッドモデル、アルトゥーラの登場待ち)。
この中で世界唯一のミッドシップ専門メーカーのメインを担うのがスーパーシリーズ、720S(クーペ&スパイダー)である。ライバルは、フェラーリF8シリーズやランボルギーニ・ウラカン。720Sはマクラーレンの主役であるとともに、スーパースポーツ市場全体を見渡しても中心に位置するモデルだ。2011年に鮮烈デビューし、ブランドの起源となったMP4―12Cシリーズの第2世代である。先日、最新グレードとして高性能仕様の765LT(ロングテール)が追加された。
試乗車は720Sスパイダー。3桁数字の名前はそのまま最高出力を表す。つまり4リッター・V8ツインターボエンジンの最高出力は720ps/7500rpm。最大トルクは770Nm/5500~6500rpmを発生する。720Sは、それに7速のデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせて、後輪を駆動する。
圧倒的なパフォーマンスを効果的に運動性能へと変換するための最も重要なパートが、フォーミュラ1で培ったCFRPテクノロジーによるモノコックボディである。第2世代スーパーシリーズでは、アルティメイトシリーズのP1で初採用されたモノゲージ2と呼ばれる最新のCFRPバスタブ構造を進化させて搭載した。
CFRPバスタブ構造とは本来、ルーフ骨格やエンジンルーム上部までをCFRPとする技術だ。スパイダーはモノゲージ2を、2―Sに改良。ルーフを取り払ってもなおロードカーとして十分な強度を確保した。リトラクタブルハードルーフもパネル素材はカーボン。軽量かつモーター駆動ゆえ、クラス最速の11秒で開閉し、走行中でも50km/h以下であれば操作できる。トップの開閉方式がスマートになったのは旧型650Sスパイダーからの大きな進化ポイント。
スパイダー化にあたっての重量増はわずか 50kg。その意味するところは明白。そう、パフォーマンスはクーペと同等だ。
それは性能スペックに明確に表れている。0〜100km/h加速は2.9秒でクーペと共通。0〜200km/h加速はわずかに0.1秒後れを取って7.9秒になる。だが、最高速度はルーフを閉じた状態で341km/hと、クーペと同じだ(ルーフを開けると325km/h)。
クーペとスパイダーの車両本体価格差は400万円。それでもスパイダーを選ぶべき、と思える。最近のスーパースポーツは、オプションを800万円程度選ぶのが一般的。スパイダーは720Sシリーズにおける最も価値ある「オプション」かもしれない。
運転すると、スパイダーの価値が実感できる。ルーフを閉じて走れば、それがスパイダーかどうかは、よほど繊細なプロドライバーでもなければわからない。ボディが実にしっかりとしているからだ。スパイダーは、リアウィンドウの開閉に対応し、クーペ状態でV8サウンドを楽しむことができる。
圧倒的な加速性能ときめ細かに制御されたアクティブシャシーによるドライブフィールは、いまなおこのクラスの最高レベルだ。シャシーとパワートレーンのモードをトラックに合わせれば、たちまちハンドリングの正確さは驚異的な水準になり、轟音を伴った加速と沈み込む制動フィールもまた愉悦の至りである。
そのうえで、快適なオープンエアモータリングが堪能できるのである。走行モードがスタンダードであれば、乗り心地はまるで高級サルーンのように快適。天気のいい休日のクルージングは、オーナーには至福の時となるだろう。
グレード=720Sスパイダー
価格=7SMT 3930万円
全長×全幅×全高=4545×1930×1195mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント:1674×リア:1629mm
車重=1470kg
エンジン=3994㏄・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=530kW(720ps)/7500rpm
最大トルク=770Nm(78.6kgm)/5500〜6500rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/35R19/Ⓡ305/30R20
駆動方式=MR
乗車定員=2名
最高速度=341km/h
0〜100㎞/h加速=2.9秒
0〜400m加速=10.4秒
※価格を除きスペックは基本的に欧州仕様