日産ノートX 価格:218万6800円 試乗記
日産ノートの○と×
○:際立つ静粛性、クラストップの走りの質感
×:セット化され選択自由度の低いオプション群
旧型ノートは、モデルライフ途中でシリーズ式ハイブリッド車「eパワー」を追加。メーカー自身の予想を超える大ヒットを記録した。3rdモデルとなった新型は、キャラクター面でもハードウエア面でも、2ndモデルの影響を受けた作品である。
ボディサイズは全長×全幅×全高34045×1695×1520mm。ホイールベースは2580mm。ルノー主導で開発されたという新世代骨格「CMF-B」を用いながら、従来比で全長が55mm、ホイールベースは20mmのコンパクト化が図られた。
最近は海外市場をメインターゲットとし、〝日本軽視〟の印象が否めなかった日産車が、考え方を改めたことを連想させる。搭載パワーユニットを「eパワー」に絞り込んだ点にも注目したい。価格が最重視される法人需要を失う可能性を承知のうえで、「真に自信のある作品を提供したい」という新たな考え方が支配的になったことを彷彿とさせる。
スタイリングはモダンな印象。すでに発表され、年内に発売されるブランニューBEVのアリアとの血縁を感じる。シンプルかつクリーンな造形は、多数のライバルを相手に独自の存在感を主張する。なかなかの好印象だ。
ラインアップも充実している。FFモデルに加え、従来型比で10倍以上の出力を発する後輪用モーターを採用した4WDバージョンが早々に加えられた。これも開発陣の積極姿勢の表れだろう。
試乗車は、最上級のXグレード。車両本体価格は218万6000円だ。新型ノートは、運転補助機能「プロパイロット」を筆頭に魅力的な装備の多くはオプション設定で、しかも単体では選べない。実際、テスト車の場合、3種のメーカーオプションと、その他ディーラーオプションを加えた総額は、320万円オーバーというなかなかの高価格車になっていた。
ボディが「ダウンサイジング」していることから、居住性が気になるユーザーもいるだろう。だが、実際は心配無用。数字上で従来型を下回る部分があるものの、「フル4シーター」と自信を持っていえる居住空間が確保されている。前席も後席も広さは十分、しかも巧みな着座設定によって開放感はハイレベルだ。
室内で強い存在感を放つのが、高く、長いセンターコンソール。下段に物入れスペースを設定するなど、特徴的な見栄えと高い実用性を巧みに両立していた。バイザーレスでワイドな一枚ガラスに収められたメーターパネルと、そこに段差を介して連続するセンターディスプレイも、なかなかモダンな雰囲気である。
空調やオーディオ系の主要スイッチを、プッシュ式ボタンとして操作性を高めたのは大歓迎。インパネ両端にビルトインした折りたたみ式カップホルダーもアイデア装備といえる。ただし、カップホルダーの質感はいまひとつの印象を受けた。
システムを立ち上げ、軽いタッチで動く新デザインのレバーでDレンジを選択して走り始める。「第2世代」のeパワーが、これまでよりも遥かに高い実力の持ち主であることを即座に実感した。EV走行時の静粛性が優れているのは当然ながら、エンジン始動時でも静粛な状態をキープする。「常時モーターで走行している」という感覚が大幅に色濃くなった。
モータースペックは116ps/280Nm。駆動力はつねにモーターで発生させるとはいえ、あくまでもエンジンで発電するハイブリッド車なのでバッテリー容量は約1.5kWhとごくわずか。
それゆえエンジンが稼働する場面は少なくない。だが新型では、それをロードノイズが高まったシーンを狙って行うなど、エンジンの存在感をマスキングする手法が実に巧みになっている。
感覚的な静粛性が従来型とは比較にならないほど高まっていると同時に、路面への当たり感が優しく、クルージングシーンでのフラット感も高いなど、フットワークの質感も大幅に向上。結果として、世界的に見てもこのクラスでトップランクといえる、総合的に優れた走りの質感を実現した。
新型ノートは「予想と期待を超える商品力の持ち主」に仕上げられていた。カテゴリーが異なるとはいえ、その高い完成度は、ひと足先にデビューしたSUVのキックスの立場を危うくするのでは、と心配したくなるほどだった。
グレード=X
価格=218万6800円
全長×全幅×全高=4045×1695×1520mm
ホイールベース=2580mm
トレッド=フロント:1490×リア:1490mm
車重=1220kg
エンジン=1198cc直3DOHC12V(レギュラー仕様)
最高出力=60kW(82ps)/6000rpm
最大トルク=103Nm(10.5kgm)/4800rpm
モーター=交流同期電動機(EM47型)
最高出力=85kW(116ps)/2900〜10341rpm
最大トルク=280Nm(28.6kgm)/0〜2900rpm
WLTCモード燃費=28.4km/リッター(燃料タンク容量36リッター)
(市街地/郊外/高速道路=28.0/30.7/27.2km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=185/60R16+スチール
駆動方式=FF
乗車定員=5m
最小回転半径=4.9m
●主な燃費改善対策=ハイブリッド/アイドリングストップ/可変バルブタイミング/ミラーサイクル/電動パワーステアリング
●主要装備=ヒルスタートアシスト/インテリジェントエマージェンシーブレーキ/標識検知機能(進入禁止、最高速度、一時停止)/車線逸脱警報/ふらつき警報/踏み間違い衝突防止アシスト/前後ソナー/インテリジェントトレースコントロール(コーナリング安定性向上システム)/IRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラス/プライバシーガラス(リア3面)/ハイビームアシスト/インテリジェントオートライト/電制シフト/プッシュパワースターター/e-POWERモードスイッチ/EVモード/インテリジェントキー/オートAC/6対4分割リアシート/イモビライザー/前席エアバッグ/運転席ニーエアバッグ/前席サイドエアバッグ&カーテンエアバッグ/スチールホイール+フルカバー
●装着メーカーop=プロパイロット&ニッサンコネクトナビ(ナビリンク機能付きプロパイロット+SOSコール機能付きプロパイロット緊急停止支援システム+ステアリングスイッチ+日産コネクトナビ+移動物検知機能付きインテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェントルームミラー+後側方検知機能+USB電源ソケット+ワイヤレス充電器ほか)44万2200円/ホットプラスパッケージ(ヒーター付きドアミラー+ステアリング&前席ヒーター)+クリアビューパッケージ(ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ)+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター7万3700円/本革シート+LEDヘッド&フォグランプ+本革巻きステアリング+ピアノブラック調フィニッシャー+リアセンターアムレスト+185/60R16タイヤ+16インチアルミほか33万5500円
●ボディカラー=バーガンディー
※価格はすべて消費税込み
撮影協力●マースガーデンウッド御殿場