【クルマの通知表】日本に電動車時代を告げるKカー、受注再開した日産サクラの完成度をユーザー目線でチェック

日産サクラ 価格▷233万3100〜294万300円 試乗記

サクラはデイズをベースに内外装を専用デザインで仕上げたBEV。ラインアップはG(写真/294万300円)とX(239万9100円)、そしてビジネスユースのS(233万3100円)

サクラはデイズをベースに内外装を専用デザインで仕上げたBEV。ラインアップはG(写真/304万400円)とX(254万8700円)、そしてビジネスユースのS(249万3700円)

航続距離180kmでも日常使用なら心配なし!

「わずか180kmの航続距離で大丈夫か?」という声をよそに、サクラが売れ行き絶好調だ。航続距離が短くても、それが「軽自動車なら大丈夫」と、物事を合理的に判断する人や、いち早くBEVに乗ってみたいという人がそれだけ大勢いたということだろう。

 サクラは日産EVのエントリーモデルであり、軽自動車のフラッグシップに位置づけられる。プラットフォームを含め、デイズと共通性が高いものの、内外装は別物。新鮮な印象を与える。細部まで作り込まれたボディパネル造形や、一文字のテールランプなどは、軽自動車とは思えない雰囲気をかもしだしている。

 インテリアも上質だ。広い範囲に配されたファブリックや眼前の大きな画面の2つのディスプレイが目を引く。ドリンクホルダーを助手席側に設定しなかったのは、せっかくの雰囲気を壊さないためだという。プレミアムインテリアパッケージ(op4万4000円)を選ぶと、ステアリングは本革巻きとなり、内装色はブラックを基調にベージュのシートが組み合わされる。 使い勝手に対する配慮は万全。収納スペースは豊富にあり、飲み物のぐらつきを軽減したり、パワーウィンドウのスイッチベース部を微妙に傾けて乗員から見えやすくするなど、使う側の立場に立った配慮がなされている。リアシートはリクライニングと前後スライドが可能で、最後端にしたときの広さは驚くほどだ。

スタイリングは前回の東京モーターショーに出展されたプロトタイプ「IMk」のイメージを投影。ライト類はLED

スタイリングは前回の東京モーターショーに出展されたプロトタイプ「IMk」のイメージを投影。ライト類はLED

室内はドアトリムを含めアッパー部をファブリックで仕上げた上質な作り。多彩な小物入れなど使い勝手も優秀。Gは日産コネクトナビ/プロパイロット標準装備

室内はドアトリムを含めアッパー部をファブリックで仕上げた上質な作り。多彩な小物入れなど使い勝手も優秀。Gは日産コネクトナビ/プロパイロット標準装備

静かで滑らか、そして力強い走りは印象的

 モータースペックは64ps/195Nm。ドライブしてまず感じるのは、非常に乗りやすいことだ。俊敏で力強い加速と、静かで滑らかな走りは、通常エンジンの660ccターボとは一線を画する。最大トルクは軽ターボの2倍近い。交通の流れに乗せるのもラクだ。
 エコモードでも、モーター駆動の強みでストレスを感じる場面はないが、市街地は車速をよりコントロールしやすいノーマルモードが適する。スポーツモードは一段とキビキビとした走り味が楽しめる。

 ハンドリングはスッキリとしていて気持ちがよい。BEVの強みで重心が低く、運転していて安定感を感じる。動力性能面でも運動性能面でも、軽自動車とBEVは相性がよいものだとつくづく思った。
 車検証によると、車両重量は1090kgで、前軸重590kg、後軸重500kgとバランス的にはまずまず。バッテリーを床下に搭載した関係で、重量マスが車体の中央寄りになるのはプラス面だけではない。直進安定性はやや不利になる。そのため高速巡行時に据わりがよくなるよう、操舵力を少し重めに設定したという。

 乗り心地は前席については良好。後席は足回りのストロークが短い影響で、少し硬さを感じる。サスペンションの共通性が高いデイズ4WDで感じたのと同様だ。ただし、サクラはブッシュの容量を増やすなど対策が効いて、いくぶん突き上げは軽減された。取り回し性は抜群。最小回転半径は4.8mと、小回りがきく。

 サクラは先進装備も充実。クルマの成り立ちからして、ロングドライブするためのクルマではないとはいえ、プロパイロットが高速道路を走る際の強い味方になってくれる。一方で軽自動車で初めてというプロパイロットパーキングは、機能としてはかなりのレベルだが、スマートに使いこなすには少々コツがいる。アラウンドビューモニターだけでもかなり安心感があり、駐車に苦労する心配はない。

 実走の電費計測結果は10.9km/kWhと上々だった。この電費をリーフで出すことはかなり困難。やはり軽さというのは強力な武器であることを実感した。WLTCモードで180kmという航続距離は、実際の走行感覚にかなり近い。
 充電については、バッテリー容量が小さいからこそのメリットを感じる。短時間の充電でSOC(バッテリー充電率)がみるみる上がっていく。SOCが高くなっても充電電力の落ち込みは小さい。リーフにはないバッテリー冷却システムを採用した効果に違いない。

 サクラは、乗ってみたいと感じさせ、実際にドライブすると、「いいな!」と思うBEVだ。現状は好意的な論調のほうが多いように見受けられる。ただし旧型リーフの場合は、しばらくしてからバッテリーの劣化が大きく取り沙汰された。サクラは「航続距離が短い」という宿命が今後どう評価されていくのか、大いに関心を持って見守りたい。
 ところで画期的なモビリティがぜひほしいという降雪地のユーザーもいるだろう。だが、現在4WDは未設定。将来的に実現するかもしれないが、スペースに制約のある軽自動車では当面、4WD化は難しそうだ。

充電は普通/急速に対応。30分の急速充電で約70km走行可能距離が増大した

充電は普通/急速に対応。30分の急速充電で約70km走行可能距離が増大した

駆動用モータースペックは64ps/195Nm。最大トルクは通常の軽ターボ車の約2倍の実力。180kmの航続距離は実用十分な印象

駆動用モータースペックは64ps/195Nm。最大トルクは通常の軽ターボ車の約2倍の実力。180kmの航続距離は実用十分な印象

通知表/日産サクラG 価格/304万400円

総合チャート

総合評価/73点

Final Comment

走りは「上質コンパクト」という印象。
BEVとの生活を楽しむには最適パートナー

 軽自動車の宿命で、どうしても伸び悩む項目もあれば、BEVなればこそ有利な項目もあり、全体としてはこのような結果なった。走りの質や使い勝手などは、軽自動車という制約を抜きにしても高く評価できる。電費の数値については、BEVになじみのない人にはイメージしづらいかもしれないが、10km/kWhを超えるというのはかなり優秀と認識いただいてよいだろう。サクラは、日常ユースを楽しむのに最適な環境先進車といえる。

使い勝手

快適性

動力性能

魅力

テストルート日産サクラ 主要諸元と主要装備

真横

グレード=サクラG
価格=304万400円
全長×全幅×全高=3395×1475×1655mm
ホイールベース=2495mm
トレッド=フロント:1300/リア:1295
車重=1080kg
モーター型式=MM48(交流同期電動機)
モーター定格出力=20kW
モーター最大出力=47kW(64ps)/2302〜10455rpm
モーター最大トルク=195Nm/0〜2302rpm
一充電走行距離=180km(WLTCモード)
交流電力量消費率=124Wh/km(WLTCモード)
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=20kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:3リンク
ブレーキ=フロント:フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=155/65R14+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=4.8m

主要装備:プロパイロット/プロパイロット緊急停止支援システム/インテリジェントエマージェンシーブレーキ/インテリジェント車線逸脱防止支援システム/ふらつき警報/踏み間違い衝突防止アシスト/標識検知機能/SOSコール/ヒルスタートアシスト/IRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラス/プライバシーガラス(リア3面)/LEDヘッドランプ/アダプティブハイビーム/インテリジェントオートライト/サイドターンライト内蔵ドアミラー/ステアリングヒーター/EV専用9インチ日産コネクトナビゲーション/ETC2.0車載器/オートエアコン/PTC素子ヒーター/ヒートポンプシステム(省電力暖房システム)/運転席シートヒーター/eペダルステップ/ドライブモードセレクター/5対5分割リアシート
装着メーカーop:プロパイロットパーキング5万5000円/プレミアムインテリアパッケージ4万4000円/165/55R15タイヤ+15インチアルミ2万2000円/充電ケーブル(コントロールボックス付き200V・7.5m)5万5000円/LEDフォグランプ+ホットプラスパッケージ8万3600円
ボディカラー:ホワイトパール/チタニウムグレー(op7万7000円)

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