価値があるかどうか、それはヒトそれぞれの価値感により異なる。
例えそれが「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」のイヤーカーに輝いたとしても、である。価値があるかどうかは、あくまでも個人の判断だ。
自分としては、クルマはまずカタチが命だと思っている。操縦性に優れていて、高い動力性能があり、環境性にも優れている。しかしそこに優れたカタチが無ければ話は終了。自分がいい、買おう、と思わないモノはヒト様にも薦めない。
今年デビューしたクルマの中では、日産からはエクストレイルが気に入った。ボクは新技術に興味があり、そんなクルマには物欲スイッチが入る。日本初のHEVである初代プリウスに当然飛びつき、以後3世代まで愛車にしたのは、そのためだ。
エクストレイルは日産独自のHEVであるe-POWERの、発電機たるエンジンに新開発の可変圧縮機構のVCターボを搭載!! 1.5リッター 3気筒の圧縮比を可変して2.8リッターに相当する性能を実現した。発電エンジンの性能がアップすれば、それだけ電気を生み出せ、当然モーター出力を高められる。この新ユニットは、エンジンとしての振動が少なく、回転しても鼓動も音も軽い、と言う利点から今後のe-POWERの核になる技術だ。
搭載されるのがSUVのエクストレイルという事も良い。高い着座位置からの視界は広く、操縦がしやすい事に結びつく。
順不同で続くのは、新機構のHEVを搭載した新生クラウンである。注目はデュアルブーストと呼ぶ2.4リッター直4ターボと新しいHEV。6ATとの組み合わせで、従来のTHSⅡモデルとは別種の気持ちよさを提供する。走行性能がダイレクトになり、明確に進化した。
クルマ自体もクロスオーバーにクラス分けをしたが、これが新世代のクラウンである。とする大英断が素晴らしい。
もう一台もやはりHEV。ホンダe:HEVを搭載したシビックである。昨年エンジンのみのモデルはリリース済みだが、今年は真打ちのe:HEVと最強のタイプRが正式にノミネートされた。
ホンダの2モーター式HEVは過去に紆余曲折、いろいろと走行性能に課題があったが、新開発e:HEVのモーター主体ながらエンジン車を忘れさせない策とその操作に忠実な走りはお見事。
FWD最速の座を世界で争うタイプRは、そのスタイリングでまずは惹かれ、エンジンと操縦性能の高さに惚れた。発売と同時にオーダーしても半年〜1年。既に2年〜3年待ちと言う異常事態は、どのメーカーの新型モデルにも言える。売れるときにクルマが造れないメーカーと欲するユーザーの歯ぎしりが聞こえる。
ちなみに最新の輸入車ではロータスの最新モデル、エミーラが気に入った。この他BEVも続々とデビューしている。その性能は買いだが充電という最大の難問から個人的には購入しないので、パス。
かつらしんいち/1959年、東京生まれ。現役レーサーでありモータージャーナリスト。ニュル24時間レースには8回出場し、アストンマーチンのワークスドライバーとしてクラス優勝に貢献。AJAJ会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
本誌執筆陣9名のジャーナリストが考える「価値あるクルマ」とは?