本稿では『CAR and DRIVER』2023年1月号掲載の試乗記こぼれ話をお届けします。
「次世代のEパフォーマンス」をテーマに開催した、ポルシェはBEVワークショップは、4つのパートによって構成されていた。
今後2年間をかけ、BEVワンメイクレースのデモンストレーションを行う「718ケイマンGT4 eパフォーマンス」、そして「フォーミュラE」のニューマシン。3点目は今後マカンから導入がスタートする新BEVプラットフォームの「PPE」。最後が販売好調の「タイカン2023年モデル」である。
ポルシェは今後もBEVを順次投入。2030年までには販売台数全体の80%以上をBEVとすることで、CO2排出量削減に貢献していく計画を発表している。それだけに今回のワークショップは、ポルシェのエンジンからの脱却を印象づける内容だった。
そうすると、気になってくるのが、ポルシェのアイコンでありイメージリーダーである「911の今後」である。
ポルシェの電動化に極めて前向きな姿勢は100年以上の歴史に裏打ちされたものといって間違いない。
創業者フェリー・ポルシェの父で、自動車技術などの開発を専門に請け負っていたフェルディナント・ポルシェは、1898年に初のBEV「エッガー−ロナーC2フェートン」を完成させるなど、他に先駆けてBEVの可能性に着目する先見の明の持ち主だった。
では、ポルシェにとって精神的支柱といっても差し支えのない911もまた、将来的にBEVに生まれ変わってしまうのだろうか?これに関する正式なアナウンスはいまのところない。だが私は911が今後もエンジン車として生き残ると確信している。
CO2排出量を削減する方法は、電動化が唯一の道ではない。エンジンで燃焼させても実質的にCO2を排出しないカーボンニュートラルフューエルであれば、エンジン車もゼロエミッション車になりうる。そして、聞くところによれば、ポルシェもカーボンニュートラルフューエルの可能性を熱心に探っているとされる。
もうひとつのヒントがポルシェの電動化に関する将来計画だ。これによれば2030年の段階でも販売台数の10%以上がエンジン車だという。ちなみに、911の販売比率は昨年の段階で約13%。これが単なる偶然ではないことを、私は強く願っている。