フェラーリが“トゥルースポーツカー”を謳う4ドア4シーターモデルの「プロサングエ」を京都の世界遺産の仁和寺でお披露目。車両価格は4760万円からに設定
フェラーリ・ジャパンは2022年11月8日、同ブランド初の4ドア4シーターモデルとなる「プロサングエ(Purosangue)」を京都の世界遺産の仁和寺で披露した。日本での車両価格は4760万円~に設定。ユーザーへの納車開始は2023年後半を予定している。
イタリア語で「サラブレッド」を意味する車名を冠したプロサングエは、本年9月に本国デビュー。75年に渡るマラネッロの歴史において初めての4ドア車となる革新的な1台で、かつ既存のクロスオーバー車やSUVとは一線を画すドライビングダイナミクスおよびドライビングプレジャーを実現した“トゥルースポーツカー”を標榜している。その根幹となるのが、パワーユニットをフロントアクスルの後方に配した、いわゆるフロントミッドシップのレイアウトを採用したこと、そしてパワーユニット自体に跳ね馬の高性能モデルのアイデンティティでもあるV12エンジンを搭載したことにある。
まずフロントミッドシップ化に関しては、V12エンジンをキャビン寄りの低い位置に搭載したうえで、8速DCTのトランスミッションをリアに配するトランスアクスル方式を採用。合わせてパワートランスファーユニット(PTU)をエンジン前方に配し、さらに進化版4×4システムの「4RM-S evo」を組み込んで、前後重量配分をスポーツカー並みの49:51に仕上げた。
次にエンジンに関しては、旗艦FRクーペモデルの812用“F140”の派生型で、シリンダーバンク角65度、ドライサンプ、F1由来の可変吸気システム、高圧のダイレクトインジェクションシステムを採用した、コードネームF140IAの6496cc・V型12気筒DOHC48Vユニットを搭載。窒化スチール製クランクシャフトのストローク延長や、内部のオイル流路の再設計、冷却液およびオイルのポンプアッセンブリーの改良、バルブタイミングの変更、吸気系のダクトとプレナムのジオメトリーの見直し、排気システムのジオメトリーの最適化、そして専用セッティングのECUの組み込みなどを実施し、できる限り低い回転域から最大のトルクを発揮しつつ、かつフェラーリの自然吸気V12エンジンの典型であるリニアで無尽蔵なパワーデリバリーを失わない、新時代のパワーユニットに仕立てる。圧縮比は13.6:1にセッティングし、最高出力は725ps/7750rpm、最大トルクは716Nm/6250rpmを発生。最高許容回転数は8250rpmに設定した。
組み合わせるトランスミッションには、ドライサンプの採用とクラッチアッセンブリーの大幅な小型化によって軽量かつ低重心な設計とした改良バージョンの8速DCT(8速オイルバス式デュアルクラッチトランスミッション)を採用。ギア比は専用セッティングで、力強い加速を演じるほか、高速道路を走行する際には燃費が向上するようトップのギア比を高めに設定する。性能面では、最高速度が310km/h以上、0→100km/h加速が3.3 秒を実現した。
基本骨格については、閉断面の押し出し材を鋳造材で接合したスペースフレームシャシーに、荷重を受けるアルミニウム製シートメタル、アルミニウムやカーボンファイバー、高強度スチールといった素材を適材適所に配したうえで構造用接着剤を多用したボディシェルで構成する。また、懸架機構にはマルチマティック社のトゥルーアクティブスプールバルブ(TASV)システムで可能となった、新設計のアクティブサスペンションを採用。48V電動システムによってダンパー下部に配したモーターがダンパー内のリサキュレーティングボールスクリューを動かし、油圧を最適に制御してロールとピッチングを効果的に抑える。さらに、操舵機構には4RM-S evoと統合制御した4WSを採用してハンドリング性能を向上。ほかにも、8.0バージョンのサイドスリップアングルコントロール(SSC)や、新世代のグ リップ推定2.0付ABS evo、フェラーリ車初採用のヒルディセントコントロール(HDC)などを組み込んで、走行安定性を高めた。
フェラーリ・スタイリングセンターが手がけたエクステリアは、しなやかな曲線を描く迫力あるアッパーボディと、力強いスタンスのアンダーボディという2つのステージに分けた、新感覚のスポーティなGTスタイルを採用。ディテールも印象的で、LEDデイライトを配したシャープな造形のLEDヘッドランプや、DRLの上下に配したエアインテーク、Aピラー前に装着した空力パーツのエアロブリッジ、前後のホイールアーチとアンダースポイラーを強調した抑揚のあるサイドパネル、水平のカットラインの両端に配した左右2分割のLEDリアコンビネーションランプ、大型のディフューザー内に組み込んだ左右2本ずつ計4本出しのエグゾーストなどを装備して、大胆かつ独創的なルックスを創出する。風洞実験やCFD(数値流体力学)によるシミュレーションを繰り返して、優れたエアロダイナミクス性能と、エンジンおよび補器類の冷却性能を確保したことも、スタイリングの特徴だ。一方、足もとには専用デザインの前9.0J×22/後11.0J×23鍛造アロイホイールを装着。表面をエレガントなダイヤモンドカットで仕上げたうえで外縁部に放射状エレメントを配して、ホイールアーチからの高温の空気を効率的に排出する。タイヤは前255/35R22、後315/30R23という前後異径サイズを装着した。
肝心の4ドアは、前後端ヒンジ式の観音開きで構成する。フロントドアは開放角度が63度で、他のフェラーリ車より5度広く開き、また後部ドアは新設計の電動ヒンジを内蔵するとともに79度の大開口を確保した。さらに、リアゲートにはスタビラス社の電動リフターを備え、同時に73度まで開くように設定し、473リットルのラゲッジスペースを有効に使えるようアレンジした。
4名乗りで構成したインテリアは、エレガントでスポーティなラウンジを意図してデザインする。インパネはドライバー側とパッセンジャー側をほぼ対象のデュアルコクピット造形とし、同時に10.2インチのディスプレーを配してドライビングエクスペリエンスへの関与に必要なあらゆる情報を提供。また、快適性に関連する操作はインパネ中央部分に隠されたロータリー型インターフェースで行い、さらに後席の乗員も第2のロータリー型インターフェースで同じ機能にアクセスできるように設定した。一方、センタートンネルにはラグジュアリーなトリムをあしらい、合わせて金属のギアシフトゲートで占められたY字状の構造エレメントを配備。パワーウィンドウのスイッチや2個のカップホルダー、ワイヤレス充電ゾーンと組み合わせたキーコンパートメントなども、統一性を持たせて美しくデザインした。
シートについては、個々に調節可能な独立したスポーツタイプの4座席を配備。後席には可倒機構を内蔵する。ラグジュアリーを追求すると同時にサステナビリティも重視し、リサイクルのポリエステルを使った新組成のアルカンターラ表皮や、同じくリサイクルのポリエステルを使ったルーフライニングのファブリック、海から回収された漁網をリサイクルしたポリアミド製のカーペットなどを採用した。
最新のADAS(先進運転支援システム)を標準装備したことも、プロサングエのトピック。具体的には、アダプティブクルーズコントロール(ACC)や自動緊急ブレーキシステム(AEB)、オートハイビーム(HBA/HBAM)、レーンデパーチャーウォーニング(LDW)、レーンキープアシスト(LKA)、ブラインドスポットディテクション(BSD)、リアクロストラフィックアラート(RCTA)、トラフィックサインレコグニション(TSR)、眠気や脇見を検知するドライバードラウジネス&アテンション(DDA)、リアビュー・パーキングカメラ(NSW)などを組み込んだ。
なお、プロサングエの発表の場でフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表取締役社長は「すべてのフェラーリは何よりもまずスポーツカーで、プロサングエもプロダクトレンジにおけるスポーツカーという位置づけ。さらに、妥協のない快適性と多用途性を備えたゲームチェンジャーでもある」とコメントしている。