三菱ランサー・エボリューション4 新車時価格:5MT 299万8000円(1996年式) 試乗記
1350kgのボディに与えられたエンジンは、280psのピークパワーを絞り出す2リッターツインカム16Vターボ。4.82kg/psというパワーウェイトレシオは、国産最強のRX-7タイプRよりわずかに0.1kg/ps大きいだけである。
エボ4のクラッチはズシリと重い。しかし、強力なパワー&トルクを受け止めるクラッチであることを考えれば、十分にリーズナブルだ。
エボ4は速い、とにかく速い。パフォーマンスに優れたクルマでも普通は3速に入るころには車速の伸びは鈍る。しかし、エボ4の場合、体がシートに押し付けられる加速が終わることはない。なおかつフルタイム4WDならではの路面にピタリと張り付くような直進性は、すさまじいスピードをサラリとこなす。スピードリミッターを作動させることなど朝飯前である。はっきりいおう。ステアリングを握るドライバーに最も求められるのは「自制心」だ。
エボ4のトピックのひとつに、AYC(アクティブヨーコントロールシステム)がある。これは、各種センサーが読み取った情報をもとに新開発のトルクトランスファーデフが後輪の左右間でトルクスプリットを行うシステムだ。目的はアンダーステアやオーバーステアを抑え、ニュートラルステアを実現すること。
わかりやすくいえば、「曲がりやすく、かつスピンしにくい特性を与える」ということだ。
実際、回頭性はいい。ステアリングインプットに対してノーズが素直にインを向いてくれるため、狙ったラインをトレースしやすい。ある一定レベルまでは舵もよく利いてくれるし、タックインの動きも穏やかだ。
しかし、本気になって激しくコーナーを攻め、アンダーステアが出始めたら、攻略は難しい。アクセルオンでアンダーを消そうとしても、状況はほとんど改善されない。
コーナー手前でしっかりと減速し、一定速でコーナーを回り、十分に姿勢が変わってから強烈なトラクションとパワーを使って立ち上がっていく、というのがエボ4の実力を最大限に発揮するドライビングスタイルだ。
(カー・アンド・ドライバー 1996年9月26日号発表)
ランサー・エボリューション4(E-CN9A型)は1996年8月発売。歴代ランエボで最も生産台数が多く、ラインアップはGSRとRSの2種。RSは競技ベース車両で、GSR比で90kg軽いが装備はスパルタン。ラリーやダートトライアルなどモータースポーツに使用されたクルマも多く、コンディションチェックは重要だ。価格は上昇傾向。走行6万km、事故歴ありの車両でも250万円のプライスタグが付く。最近、流通量は減少傾向にある。
グレード:エボリューション4(1996年式)
新車時価格:299万8000円
寸法・重量:全長×全幅×全高4330×1690×1415mm ホイールベース2510mm 車重1350kg
エンジン:1997cc直4DOHC16Vターボ(280ps/6500rpm 36.0kgm/3000rpm)
サスペンション:フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:205/50R16+アルミ
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
※4thモデル/生産期間:1996~1999年