トヨタ・セリカGT-FOUR・WRC仕様 新車時価格:5MT 327万1000円(1994年式) 試乗記
WRC(世界ラリー選手権)への参戦を意識したGT-FOURのパワーユニットは2リッター直4ツインカム16Vターボ(255ps/31.0kgm)。4WDシステムは、センターデフにビスカスLSDを配置し、リアにトルセンLSDを組み込んでいる。
実戦投入を意識した迫力あるエクステリアは、新型の注目ポイントだ。大胆な開口部を設けたフロントマスクは、インタークーラーへの冷却風を多く取り入れ、エンジンルームのクーリングをするための造形である。限定販売(世界2500台)のWRC仕様のリアスポイラーは、高速で確実なダウンフォースを生む。
GT-FOURの加速力はスポーツカーレベルにある。右足に力を込めると、周囲の景色はあっという間に後方に流れ去る。意のままにスピードコントロールが可能な生粋のサラブレッドといっていい。ただし、走らせるにはそれなりの心構えが必要だ。最低でも3000rpm、レスポンスのいい豪快な加速を味わいたいならば4000rpm以上をキープしたい。GT-FOURのエンジンは、現代のターボユニットとしては、段差感がはっきりとしている。低回転トルクが細いわけでないが、回せば回すほど精彩を増していくのだ。これはスポーツ派にとって、うれしい性格である。
5速MTは歴代GT-FOURの中で、最も優れたシフトフィールだった。各ギアをレッドラインまで引っ張って、タイミングよくシフトアップを決めれば、次のギアでも有効なブースト領域に入る。
フットワークは、ソリッド感の高い乗り心地が特徴だ。スーパーストラットサスペンションを採用したFFモデルよりも、さらにワンランク硬質な印象を受けた。それでもボディ剛性が向上しているため、ハードセッティングの足回りでもさほどの不快感はない。
フロントのグリップ限界は確実に高い。
コーナリング時の挙動は、最終的に前輪側から徐々に狙ったラインを外れていく。しかし、そのポイントはスポーツモデルとして十分に満足できる。
ブレーキは「素晴らしい」と称賛できる。
(カー・アンド・ドライバー 1994年 4月10日号発表)
GT-FOURとしては3rdモデルとなるST205型は、1994年2月に発売。同時にラリー参戦ホモロゲモデル「WRC」を世界で2500台(国内2100台)販売した。WRCはハイマウントリアスポイラーが特徴。現在の流通価格は200万円前後。コンディション良好車は500万円近いプライスタグが付く。WRC実戦での活躍経験は少ないが、各部の完成度は高く、走りが楽しめる。「戦うクルマ」という意味では最新GRヤリスの兄貴分になる。
グレード:GT-FOUR・WRC仕様車(1994年式・世界2500台限定車)
新車時価格:5AT 327万1000円
寸法・重量:全長×全幅×全高4420×1750×1305mm ホイールベース2535mm 車重1380kg
エンジン:1998cc直4DOHC16Vターボ(255ps/6000rpm 31.0kgm/4000rpm)
サスペンション:フロント:スーパーストラット/リア:ストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:215/50R16+アルミ
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
※3rdモデル/生産期間:1994〜1999年