Cクラスとしては5世代目、1982年デビューの190E(W201)から数えると第6世代になるメルセデスの主力モデルがフルチェンジした。欧州では春以降、日本でも早ければ年内に発売の予定だ。Cクラスは30年間で1050万台を世界中で販売したベストセラーモデルである。昨年はメルセデスの販売台数中、実に7台のうち1台がCクラスだったという。なお、フルチェンジはつねに7年刻みである。
新型Cクラス(W206)のオンライン発表会を見て「これは190Eの再来だ」という印象を抱いた。内外装のデザインが日本でも先日発売された新型Sクラスに本当にそっくりで、歴代Cクラスの中でも最も共通点が多いように思えたからだ。それが1980年代における190EとSクラス(560SEL)との関係性を思い出させた。もちろんそれだけではない。新型Cクラスに、メルセデス初の「ベイビーベンツ(=190E)」を世に問うと同じくらいの強い意気込みを、デジタルマジシャンを使った「愉快で周到な」発表会から感じ取ったからである。
新型Cクラスは、190Eのデビューからほぼ30年。大変革の時代を迎えたクルマ社会に向け、この先の10年(正確にはモデルライフの7年か)の最善とはなにか、という問いに対する回答である。クルマ社会そのものをこの世にもたらした会社=ダイムラー・メルセデスならではの強い意志が結実している。
新型Cクラスを「次世代の主流」と感じた最大の要因はパワートレーンだ。ガソリン、ディーゼルともに4気筒エンジンだけになり、すべてが最新世代(ディーゼルは初、ガソリンは第2世代)となるISGシステム(48Vマイルドハイブリッド)を採用。しかも上級版として、電気モーター+バッテリーのPHV仕様を設定したのだ。全車をエレクトリファイ(電動化)したシリーズは新型Cクラスがメルセデス初となる。
注目は新開発のPHVが、WLTPモードで最大100kmをピュアEVとして振る舞うこと。4気筒エンジンと9速オートマチックとの間に組み込まれた95kW&440Nmの電気モーターを、荷室下に設置された25.4kWhのリチウムイオンバッテリーで駆動することで、フル充電時に100kmの航続距離を稼ぐ。
航続距離100kmという数字そのものは、BEVであれば非難轟々だろう。けれども新型Cクラスはプラグインハイブリッド。ドライブ距離が伸びる場合、高効率の内燃機関が対応する。日々の移動距離が100kmを超えるというユーザーはさほど多くなく、アメリカでさえ平均60km程度といわれている。日本の平均的なユーザーはおそらくその半分、30km程度ではないか。あくまでも平均値なので実情はさまざまだろうが、それでもEVとして100kmの航続距離があればたいていの場合、環境負荷を最小に抑えて走れそうだ。
ボクはほとんど毎日クルマで移動する。そのほとんどは半径50km圏内。しかし、それを超えるときはいきなり5okm級のロングクルーズになってしまうため、これまでBEVがマイカー選びの候補に入ることはなかった。航続距離40km㎞程度のプラグインハイブリッドも中途半端で敬遠してきた。だが100kmまでEVとして走り、それ以上を燃料(できれば軽油がいいなぁ)で走るCクラスなら大いにアリだと思った。これはいい。
ボディサイズは旧型に比べて少し大きくなり、とくにホイールベースが延長された。これにより室内空間、とくに後席の居住性が改善された。ラゲッジスペースも床下にバッテリーを積んだにも関わらず、容量アップを実現。ホイールベースは長くなったが、最小回転半径など取り回しに劣化が見受けられないのは、このクラスとしては初めてリアステア(=4WS)を導入したからだ。このあたりもSクラスの技術を継承している。
もうひとつのハイライトがインテリア。これはもうエクステリア以上に新型Sクラスと瓜ふたつといっていい。もちろん各種の機能や装備も同レベルに揃う。中央の縦型スクリーンをドライバーに向けて6度傾けてあるあたり、スポーティさも重視するCクラスのキャラクターが見て取れる。
ボディタイプはセダンとステーションワゴンが同時にデビュー。ボクはPHVのワゴンが気になって仕方ない。