ポルシェ911カレラ4S 試乗記
ポルシェ911カレラ4S 8SMT 1772万円
新型はニュルで7分25秒をマーク!
ニュルブルクリンク北コースのラップタイムは、旧型を5秒凌ぐ7分25秒――新しい911(992型)の資料の中にこのデータを見たとき、一瞬わが目を疑った。
このタイムは997型のポルシェ911GT3・RSやフェラーリ458イタリアを軽々と破り、かつてのカレラGT(2003年デビュー)に匹敵する。カレラGTがタイムアタックした時代に比べれば、一部コースは改修され、舗装も改められた部分がある。それでも、生産台数がごく少ない特殊なモデルを別とすれば、冒頭の数値は「とんでもなく速いタイム」だ。
新しいタイプ992型は、カレラSとカレラ4Sの2グレード構成。2WDと4WDのハイパフォーマンスバージョンをラインアップする。国際試乗会は、スペインの地中海に面したバレンシア近郊にあるサーキットを基点に開催された。
プロのドライバーが駆る991型GT3・RSを先導車としたサーキット走行で、早くも新型の圧倒的な速さを体感する展開になった。サーキットでテストを行ったのは、カレラ4Sと同じ「ワイドボディ」を持つ2WD仕様のカレラS。
ポルシェの試乗会の場合、リアアクスルステアリングやアクティブスタビライザー、セラミックコンポジットブレーキなど高価な「走りのオプション」を満載したモデルが用意されている。しかし試乗車は、そうした装備を持たない「素のカレラS」だった。
新型タイプ992型のスタイリングはキープコンセプト 450psを発揮する3リッター水平対向6気筒ターボはリアオーバーハングに搭載 新型は2WD/4WDともワイドボディ仕様
低回転域から際立つトルク感
先導車に続いてピットレーンを後にする。まず驚いたのは、いい意味で「ターボらしさ」を意識させない低回転域から際立つトルク感。回転が落ち込むコーナーの立ち上がりシーンで、前を走るGT3・RSとの距離が詰められるほど。さすがに、高回転域の伸びはGT3・RSが圧倒的でパワーの差を見せつけられたものの、ピエゾインジェクションシステムの初採用や、タービンとコンプレッサーホイールの大径化、インタークーラーレイアウトの刷新で、従来型比30ps増しの450psを発揮する新しい3リッター水平対向6気筒ターボのフレキシブルさとパワフルさは圧倒的。走りだしてすぐに、性能アップを実感した。
高い後輪接地感は、RRレイアウトならでは。フルアクセルでもトラクションコントロール機能の介入はほとんどない。新型の特徴のひとつは前後に異径のタイヤを履くことで、カレラS/カレラ4Sはフロント245/35ZR20、リア305/30ZR21サイズが標準。ワイド化と大径化で「縦長」になった接地面が、高いトラクション能力にも貢献している。
「世界初」という音響センサーを用いた路面検知システムでウエット状態をとらえ、スタビリティコントロールやエンジンのレスポンス制御で「ウエットモード」に切り替えを促すロジックが標準装備された。これはタイヤ接地面の拡大を受けた設定と考えられる。
新型は中央に10.9インチタッチスクリーン装備 写真はストップウオッチを装備したスポーツクロノパッケージ メーターは回転計を中央に配置した伝統の丸型形状 レッドゾーンは7400rpm以上 速度計は330km/h表示
シャープなターンインに感動
サーキット走行を終えると、次は緩急さまざまなコーナーが続く1周が70kmほどの一般道セッションへ。最初にカレラS、次にカレラ4Sの順でステアリングを握る。一般道の試乗車は、「走りのオプション」満載のモデルだった。軽快感に優れたカレラS、前輪接地感が高く、安定したカレラ4Sという駆動レイアウトの違いによる差と同時に、リアアクスルステアリング(4WS機構)の効果が高いことを実感した。
道幅がタイトで、きついコーナーが連続するワインディングセッションでは、後輪逆位相制御によって、あたかもひとまわり小さなモデルを操っているような印象だった。ターンインの場面で、カレラ4SでもカレラSと変わらぬシャープな感覚が堪能できた。しかも、どのような走行シーンでもいっさいの違和感を抱かせない。さすがポルシェだ。2台のテイストの違いに注目するなら、ボクの好みは前輪接地感がよく、後輪側を軸としたピッチング挙動が小さいカレラ4Sだった。
新型911は、走りの向上とともに、ドライバーアシスタンスシステムやコネクティビティ機能の充実など、「時代の要請」にも応えている。最新モデルはすべての点でグレードアップし、再びスポーツカー界のトップに立った。先ごろベールを脱いだカブリオレや、すでに公表されているMT仕様の設定を含めて、この先のバリエーション拡充が楽しみだ。
シートはショルダー部の形状変更でサポート性を改善 構造の工夫で約3kgの軽量化を達成 乗車定員は4名
ニュルブルクリンク北コースのラップタイムは旧型比5秒速い7分25秒 かつてのカレラGTに匹敵する量産スポーツ最速レベル カレラ4Sのトップスピードは306km/h
※次ページでスペックを紹介
ポルシェ911カレラ4S主要諸元と主要装備
グレード=カレラ4S
価格=8SMT 1772万円
全長×全幅×全高=4519×1852×1300mm
ホイールベース=2450mm
車重=1565kg
エンジン=2981cc水平対向6DOHC24Vツインターボ(プレミアム仕様)
最高出力=331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク=530Nm(54.1kgm)/2300〜5000rpm
サスペンション=フロント・ストラット/リア・マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント245/35ZR20/リア305/30ZR21
駆動方式=4WD
乗車定員=4名
最高速度=306km/h
0→100km/h加速=3.4秒(スポーツクロノパッケージ)
CO₂排出量=206g/km
※価格とスペックは2019年3月現在
※価格を除きスペックは欧州仕様