ホンダ・インサイトEXブラックスタイル 試乗記
ホンダ・インサイトEXブラックスタイル 価格:362万8800円
HVシステムは新方式IMA
新型インサイトは3rdモデル。ハイブリッド専用車としてはトヨタ・プリウスに次ぐキャリアを誇る。インサイトのキャラクターは世代が移行するごとに大きく変わってきた。
1stモデルは2名乗車のパーソナルクーペ。1リッター直列3気筒エンジンにモーターを組み合わせた、IMA(インテリジェント・モーター・アシスト)と呼ぶパラレル式ハイブリッドシステムだった。
2ndモデルもIMAシステムを搭載していたが、エンジンは1.3リッター直列4気筒(のちに1.5リッターを追加)に拡大、ボディは5ドア5名乗車になり、実用性を大幅に高めた。
最新の3rdモデルは、流麗なファストバックスタイルという点は旧型と同じだが、ハッチゲート未装備の4ドアセダンに変化した。
3rdモデルのスリーサイズは全長×全幅×全高4675×1820×1410mm。2ndモデルと比較して、全長は285mm長く、全幅は125mmワイドになった。
ボディサイズについて開発担当者は、「グローバル視点でハイブリッド車の真ん中を狙ったら、このスペックになった」と説明していた。つまり歴代インサイトは通常のモデルチェンジを行っているのではなく、「その時代に最適なハイブリッド車の具体化」というテーマを持っているのだ。
新型のハイブリッドシステムは新方式。IMAから、ステップワゴンやCR-Vと同様の2モーター方式のスポーツハイブリッドi-MMDに変化した。組み合わせるエンジンは1.5リッター直列4気筒。ボディサイズを基準にして考えると、効率重視のダウンサイジングを果たしたといえる。パワースペックはモーターが131ps/27.2kgm、エンジンは109ps/13.7kgm。
3rdモデルは2モーター方式のスポーツハイブリッドiーMMDシステム搭載 EV/ハイブリッド/エンジンの各モードを走行状況に応じて自動的に選択 パワフルで効率的な走りを追求
上質な雰囲気。着座位置は低くスポーティ
i-MMDシステムは、バッテリー電力で走行するEVモード、エンジンが発電した電力でモーターを駆動するハイブリッドモード、エンジンの出力軸と駆動軸を直結したエンジンモードを自動的に選択するシステム。高効率で好評のi-MMDを、ホンダは今後の電動化モデルの核に位置づけている。インサイトよりも小さい車種に搭載する計画もあるようだ。
エクステリアデザインはシビック・セダンに似ている。ボディサイズはインサイトのほうがやや大きいが、プラットホームを共有し、ホイールベースは2700mmで同値。ディテールはシビックよりシンプルで落ち着きがある。インサイトのほうが「格上」だと伝わってくる。
インテリアは大人っぽい雰囲気だ。オーソドックスな丸型の2眼メーターやステッチを入れた助手席側ソフトパッドが上質感をアピールする。着座位置に対してインパネが低いレイアウトはシビックと同様で、1980年代のホンダ車を思わせる開放感が得られた。
センターコンソールのドライブセレクターは、ホンダのハイブリッド車ではおなじみのボタンタイプ。この方式を採用した利点で、コンソール内に補機用12Vバッテリーが置けたという。ホンダらしいスペース効率発想だ。
後席の居住性は余裕たっぷり。身長170cmのパッセンジャーなら楽に足が組め、頭上空間も余裕がある。バッテリーを含めたモーター駆動用ユニットを後席座面下に収めた成果で、519リッターの容量を誇るトランクは奥行きだけでなく深さもある。
EXブラックスタイルは助手席側ソフトパッドトリムにウルトラスエードを使用 8インチワイドモニターナビ標準 パドル式3段階切り替え減速セレクター装備
力強く、静粛。快適性はハイレベル
試乗車はEXブラックスタイル。1390kgの車重に対して1.5リッターエンジンとモーターの組み合わせで十分な加速が得られるのか、懸念していたが、杞憂に終わった。パフォーマンスはさまざまなシーンで力強く、しかも静粛性が高い。
シーンによってはエンジンが高回転まで回るときもあるが、セダンボディの遮音性が高いので気にならない。アクセルペダルを深く踏んだ際の回転の上がり方は唐突ではなく、自然な上昇だった。下り坂ではパドル操作でアクセルを離した際の減速度を3段階に調整できて便利だった。
サスペンションは「シビックよりもマイルドなチューニングにしている」(メーカー)そうで、確かにしっとりした乗り味になっていた。シビックよりも上級の車種だと伝わってくる。そのぶんフットワークはシビックよりもおっとりしたキャラクターだ。車両重量が100kg近く重い点も関係しているだろう。ただしこれは、シビックと比べての話であり、走りの性能はハイブリッド車としてかなり高いレベルにある。
新型インサイトは、あらゆる面で大人っぽいクルマに成長していた。数ある国産ハイブリッド車の中で、完成度はトップレベルにある。ホンダらしい1台だ。
ブラックスタイルのシートは本革とウルトラスエードのコンビ仕様 前席は電動調整式 乗り心地はしなやか 快適性はハイレベル 室内長1925mm
モーター(131ps/27.2kgm)+1.5リッターエンジン(109ps/13.7kgm) エンジンは主に発電用 WLTCモード燃費:25.6km/リッター 駆動用バッテリーは後席下に配置
※次ページにスペックを紹介
ホンダ・インサイトEXブラックスタイル主要諸元と主要装備
グレード=EXブラックスタイル
価格=362万8800円
全長×全幅×全高=4675×1820×1410mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント1545×リア1565mm
車重=1390kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=80kW(109ps)/6000rpm
最大トルク=134Nm(13.7kgm)/5000rpm
モーター=96kW(131ps)/5000〜8000rpm
モーター最大トルク=267Nm(27.2kgm)/0〜8000rpm
WLTCモード燃費=25.6㎞/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路=22.8/27.1/26.2㎞/リッター)
サスペンション=フロント・ストラット/リア・マルチリンク
ブレーキ=フロント・ベンチレーテッドディスク/リア・ディスク
タイヤ&ホイール=215/50R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m
●主な燃費改善対策:ハイブリッド/アトキンソンサイクル/アイドリングストップ/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング
●主要装備:ホンダセンシング(プリクラッシュブレーキ+誤発進抑制機能+歩行者事故低減ステアリング+渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロールなど)/ブラインドスポットインフォメーション/パーキングセンサーシステム/アジャイルハンドリングアシスト/デュアルピニオンアシストEPS/インライン形状LEDヘッドライト/電子制御パーキングブレーキ/エレクトリックギアセレクター/Hondaインターナビ+ETC2.0車載器/エコアシスト/マルチインフォメーションディスプレイ/スポーツモードスイッチ/オートAC/ホンダスマートキーシステム/本革巻きステアリング/本革+ウルトラスエードコンビシート&専用インテリア/前席電動調整機構/分割可倒リアシート/ブラックルーフライニング/チルト&テレスコピックステアリング/減速セレクター/トランクスポイラー/ブラッククロームメッキ・フロントグリル&リアバンパーガーニッシュ
●ボディカラー:クリスタルブラックパール
※価格とスペックは2019年3月現在