「次世代のEパフォーマンス」をテーマに、イタリアで開催されたポルシェBEVワークショップは、4つのパートによって構成されていた。
第1は「718ケイマンGT4・eパフォーマンス」。このクルマは、純粋な電気自動車(BEV)によるワンメイクレースの将来像を探るためのプロトタイプで、ベースは718ケイマンGT4クラブスポーツ。
ここに80kWhのバッテリーと前後2基のモーターを搭載し、クォリファイモードでは800kW(約1088㎰)、およそ30分間の走行が可能なレースモードでも450kW(約612ps)を発揮。サーキットでは現行の911カレラ・カップカーとおおむね同等のラップタイムを記録するという
ポルシェは、今後2年間をかけ、世界各地でこの718ケイマンGT4・eパフォーマンスのデモンストレーションを実施。レース関係者やドライバーなどの意見を聞き取ったうえで、将来的なBEVによるワンメイクレース開催の可能性を探っていく計画だ。
今回はこのプロトタイプカーに同乗試乗できた。セミウエットコンディションでも、レース用ウエットタイヤと4WDを駆使して強烈な加速性能を実現している点が印象的。
また、電気系になんらかの異常が起きた際にはボディの各所に取り付けられた警告灯が赤く点滅して危険を知らせるなど、安全性に深く配慮している点はいかにもポルシェらしいと感じた。
第2パートは、電動フォーミュラカーによるワンメイクレース「フォーミュラE」。フォーミュラEは、来年度から第3世代のマシンに切り替わる。2019年からフォーミュラEに参戦しているポルシェは、これに向けてニューマシンを開発中。新型は、とくに軽量化に注力したという。
フォーミュラEを含む多くのレースシリーズでは車両の最低重量が規則で定められているため、これを下回る軽量化は無駄なようにも思えるが、ポルシェは軽量化を推し進めたうえで、重心高や前後重量配分を考慮してバラストを搭載することにより、マシンの運動性能を最適化しようとしている。
それ以外にも、フロントにも発電機を搭載して4輪でブレーキ回生を行えるようにした点や、従来型に比べてピークパワーを100kW(約136ps)増して350kW(約476ps)とした点などが、第3世代フォーミュラEの特徴という。
3番目のテーマは最新BEV用プラットフォーム「PPE」に関する内容。DセグメントからFセグメントまでカバーできるPPEは、現在、「次期型マカン」用プラットフォームとして開発が進められている。
つまり、近々デビュー予定の新型マカンはBEVに生まれ変わる。ただし、当面はエンジンを搭載した現行マカンも併売されるというのでご安心あれ。
最後のテーマは「タイカン2023年モデル」に関するもの。
最新モデルはパワートレインやADAS、コネクティビティに関係するソフトウェアが進化しており、航続距離が伸びる可能性があるほか、利便性・安全性の改善が図られている。しかも、これらを実現するソフトウェアが無償提供されるのも注目すべき点だ。
今回はこの新型タイカンに試乗するチャンスもあったが、少なくともターボとGTSに関してはサスペンションのしなやかさがぐっと向上して快適性が高まったほか、ステアリングから得られる接地感も大幅に改善。目を見張る進化を遂げていた。
ポルシェは今後もBEVを順次投入。2030年までには販売台数全体の80%以上をBEVとすることで、CO2排出量削減に貢献していく計画である。