ホンダ・プレリュード2.0Si(1985年式) 新車時価格:5MT209万5000円/4AT 217万4000円 試乗記
プレリュードの人気は、一過性ではない。ガッチリと大地に根をおろし、ゆるぎない支持を得ている。人気の秘密は、「低く安定したプロポーション」と、「BMWのような高質感」にあると思っている。端的に表現すれば「高級なブランドもの」、そんな雰囲気を全身で発散しているのだ。
そのプレリュードに強力なモデルが追加された。2リッターツインカム16Vを積み込んだ2.0Siである。これまでプレリュードには、1.8リッターのSOHCしかなかった。トップ人気のスペシャルティカーとして、より上級のエンジンを求められていたことは確かだ。それは強力な走りがほしいというよりも、もっと贅沢で豊かなモデルに憧れる……というニュアンスが強かった。
新搭載の2リッターツインカム16Vは、160ps/6300rpm、19.0kgm/5000rpmのパワーとトルクを発揮する。
タコメーターのレッドゾーンは6500rpm、そこまで文字どおり、何のストレスもなく回り切る。レッドゾーンを無視して引っ張っても7000rpmでカット装置が作動するまで、すんなり回り続ける。しかもトップエンドまで強力なパワーが持続する。
95mmという長いストロークを持ちながら、ここまで気分よく、パワフルに回る。さすがホンダというべきか。この高速性能のうえに、低速性能にもとても優れたエンジンなのだ。文句なしである。
ハンドリングは、従来のプレリュードとはかなり違う。新しいSiは、従来の「水すまし」のようなキビキビ感が適度に抑えられ、「しっとりした軽快さ」に変わった。いわば大人のハンドリングになったのである。
高速道路での直進安定性は、明らかによくなっている。凹凸のある不整路面に出会うと、微妙にふらつくような感じはすっかりなくなった。リラックスして、クルマまかせで走っていられるようになった。
コーナリング能力もOKサインが出せる。タイトコーナーを攻め込んだときは、もうひと息、フロントのグリップ能力が高ければ……と思うこともある。しかし160psハイパワーを、無難に支えている、といっていい。急発進にもトライしたが、挙動は安定していた。
乗り心地は、良路では非常にいい。小さな突起や、なめらかな凹凸は、4輪がしなやかに追従して、ボディをほぼフラットに保つ。いい感じの乗り心地/乗り味は、とても洗練され、上質だ。
ただし、強めの段差や突起、あるいはヒビ割れた舗装路などの、悪条件の路面になると、乗り心地はあまりよくない。強めのショックを伝えてくる。
プレリュード2.0Siは、魅力的なクルマだ。スペシャルティ度とブランド性が、確実に跳ね上がった。(カー・アンド・ドライバー:1985年8月26日号掲載)
2ndプレリュード(E-AB/BA1型)は1982年11月デビュー。当初は、ツインキャブレター仕様の1.8リッターシングルカム(125ps)のみだったが、85年2月に2リッターツインカム(160ps)を積むSiを追加。魅惑的なスタイリング、サンルーフ標準の充実装備、そしてシャープなハンドリングで高い人気を誇った。欠品パーツが多い影響か市場に出回っている台数は少なめ。とくにSiは少数派。1.8リッターモデルが最近150〜200万円で取り引きされていた。
グレード=2.0Si(1985年式)
新車時価格=5MT 209万5000円/4AT 179万3000円
全長×全幅×全高=4375×1690×1295㎜
ホイールベース=2450mm
車重=1040kg(AT10kg増)
エンジン=1958cc直4DOHC16V(160ps/6300rpm 19.0kgm/5000rpm)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:ストラット
タイヤ&ホイール=195/60HR14+スチール
駆動方式=FF
乗車定員=4名