【新車解説】エコカーからの脱却。新型トヨタ・プリウスが提示する最新21世紀カーの新価値

トヨタ・プリウス 価格:275~392万円(PHEVは2023年春発売予定) 新車ニュース

初代プリウスは世界初の量産ハイブリッドとして1997年12月に登場。5代目となる新型は「ひと目ぼれするデザイン」と「虜にさせる走り」をキーワードにエモーショナルな存在に進化した。足元は19インチアルミ装着。写真はPHEV

初代プリウスは世界初の量産ハイブリッドとして1997年12月に登場。5代目となる新型は「ひと目ぼれするデザイン」と「虜にさせる走り」をキーワードにエモーショナルな存在に進化した。足元は19インチアルミ装着。写真はPHEV

トヨタのHVは約1億6200万トンのCO2排出削減に貢献

 2022年11月16日、 「Hybrid Reborn」をコンセプトに開発された5代目プリウスが発表された。
    1997年12月、「21世紀に間に合いました」という名コピーとともに初代が姿を現してから四半世紀。当初は耳慣れなかった「ハイブリッド」は、すっかり一般化した。いまやガソリンやディーゼルエンジンなどと同様の自動車用パワーユニットのひとつとして完全に市民権を獲得している。この現状は、25年前にはまったく想像できなかった。デビュー当初は「1台のクルマにエンジンとモーターという2つの動力源を積むなんてバカげている」といった批判の声すら聞かれたのだ。それが当たってはいなかったことは現在の普及具合を見れば明らかだろう。

 確かにハイブリッドは、2種類のユニットを搭載することでコストや重量面でハンディキャップを背負うのは間違いない。一方で、そんな異なる方式がお互いのウイークポイントを補うことで、単独ユニットを搭載したモデルでは成し得なかった効率の高さを発揮するのが魅力。そこが、「一過性のショートリリーフにすぎない」という予想を覆して長期政権を担い、さらには「エコカーの主役」といえるほどのポジションを獲得した要因である。

 ちなみにプリウス発売後、トヨタはグローバルで2030万台(うちプリウス約505万台)のハイブリッド車を販売。累計、約1億6200万トンものCO2排出削減に貢献したという。

真正面

未完成なイメージだった初代。最新5thモデルはスポーティ/高機能に大変身!

 自分自身、「何だか面白そう!」という純粋な興味で、デビューと同時に初代プリウスを購入した。
 開発の最中にはDレンジに入れたのにバックするような有様で、開発者から「これはモノにならないかもしれないナと思ったこともありました」という逸話(?)を耳にしていたとおり、初代の初期型はちょっと物足りない動力性能など、まだ「プロトタイプ」を思わせる部分があったことを思い出す。

 しかしプリウスは、スマートフォンやスマートウォッチといったガジェット類がそうであったように、まさに日進月歩の勢いで性能・機能の向上を果たした。登場後わずかに2年半を待たずして行われたマイナーチェンジでは、加速も燃費もまるで別のクルマのように素晴らしく進歩していた。予想と覚悟はしていたとはいえ大きなショックを受けたというのも、いまでは懐かしい思い出だ。

 2代目以降は名実ともにグローバルカーに発展。国際的に高い評価を獲得する。フロントからルーフを通ってボディ後端へと続くエアロダイナミクスを強く意識したワンモーションラインは、2代目で確立されたスタイリング上のアイデンティティ。そして、その流れはさらに徹底され5代目モデルに継承された。新型が、グンと流麗でスポーティになりながらもひと目で「プリウスだ!」と認識できるルックスの持ち主であることは、まさにこの特徴があるからだといってもいいだろう。

 サイズは全長×全幅×全高4600×1780×1430mm、ホイールベースは2750mm。全長は旧型比で50mm長く、幅は20mmワイド、高さは40mmも低い。ホイールベースは50mm長くなり、その分、リアオーバーハングが短縮されている。

 パワートレーンは2リッターと1.8リッターのハイブリッド(HEV)、そして2リッタープラグインハイブリッド(PHEV)の計3タイプ。今冬、日本をはじめ北米や欧州などグローバルなマーケットでHEVの発売が開始され、PHEVは、2023年春ごろに加わるという。

 新型は走りの実力を一気に高めた点が大きな個性だ。2リッターのHEVはシステム出力が193psと現行型比の1.6倍になり、2リッターのPHEVは同223psと公表。現行型と同等の燃費を達成しながら、2リッター・HEVで7.5秒、2リッター・PHEVは6.7秒というスポーツカー並みの0→100km/h加速タイムを実現する。

 新型は、これまでのプリウスにはないドライビングダイナミクスの達成が大きな見どころ。プリウスとしては第2世代となる「TNGA」を用いたプラットフォームにも、ボディ各部の補強やサスペンションのリファインなど手が加えられた。

 もちろん、プリウスらしく実用面の配慮も万全である。PHEVは、従来ラゲッジスペースに置かれていた電池パックをリアシート下部に移設。トランク容量拡大と低重心化を実現した。さらにEV航続距離は50%以上向上している。充電中のパワーオンでエアコンやオーディオの使用を可能とする「マイルームモード」を設定したこともポイントだ。

 ハイブリッド車は、ピュアEV一択の欧州勢からは「追放」の動きも感じられる。しかし特別なインフラ整備を必要とせず、かつ多くのユーザーの手に届く価格で提供され、実際に大幅なCO 2削減に貢献している魅力的な存在である。その先駆けにして代表であるプリウスは、「価値ある選択」の現実解であることは間違いない。

リアビューインパネ

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