【COTYおさらい】2022-2023COTY インポートカー・オブ・ザ・イヤーを獲得したヒョンデIONIC 5は、どんなクルマ?

韓国メーカー初、ヒョンデがインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに輝く

 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーで「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」はヒョンデIONIC 5(アイオニックファイブ)が受賞した。韓国メーカーがこの賞を獲得するのは初の快挙になる。

 本誌はヒョンデIONIC 5をどのように紹介してきたか。菰田潔さんのレポート本誌『CAR and DRIVER』(2023年1月号)から一部抜粋、紹介していこう。

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 久しぶりにHYUNDAIが日本市場に帰ってきた。昔は「ヒュンダイ」と呼んだが、いまは韓国風に「ヒョンデ」と呼ぶ(車検証にはヒュンダイと書いてあったが)。

 上陸したのはIONIQ5(アイオニックファイブ)とNEXO(ネッソ)の2モデル。どちらも走行中に排出するCO2はゼロ。IONIQ5はBEVでNEXOはFCV(水素燃料電池車)だ。メイン試乗車はIONIQ5のラウンジ(RWD)。モータースペックは217ps/350Nm。満充電時の走行距離は618kmに達する。

 日本の一般道で走る久しぶりの韓国車は、昔と比べると格段によくなっていた。トータルで600km以上走ったが、スピードを出すほどにそのよさを実感する。ピタッと路面を掴み、安定感のある直進性とコーナリング時の回頭性のよさが気持ちいい。

 前輪荷重は950kg、後輪荷重は1040kgとやや後ろが重め。これが発進加速でのトラクションのよさに繋がっている。コーナリングでもフロントが軽いことが回頭性を高めているのは間違いない。

 室内は結構広い。運転席、後席ともにルーミーだ。レッグルームもヘッドクリアランスも十分で快適なドライブができる。

 ただしシートとハンドルの位置関係、その背後にあるメータークラスターの角度がイマイチ筆者のポジションには合わなかった。インストルメントパネルの情報がハンドル位置(チルト)を上のほうにしないと全部は見えないのだ。たとえばウインカースイッチを作動すると、メーター内に後方カメラの映像が映る。そのスペースはスピードを表示していたのだが、映像表示が現れると位置が上に動いて速度表示は小さくなる。快適なポジションだとステアリングリムに隠れて速度が見えなくなってしまうという不都合が起きてしまうのだ。

 運転席と助手席の間のアームレストの下には広いスペースが空いている。セカンドバッグなどを置くことができて便利だ。テスラなどでも当たり前だが、BEVならではのスペース効率だ。

 ハザードランプはダッシュボード中央にレイアウト。平常時でも赤く光ってその存在を示し、オンにするとスイッチ自体も点滅する。非常にわかりやすい。欧州車では当たり前だが、日本車は少ない。欧州を主戦場にしているヒョンデらしい対応だ。

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 日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務めるフリーアナウンサーの安東弘樹さんは、本誌の連載エッセイでヒョンデの試乗インプレッションをまとめている。

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 ヒョンデIONIQ5に乗りました。これまで、イベントなどで見てはいたものの、運転する機会には恵まれず、YouTube動画などを観て、期待に胸を膨らませていました。IONIQ5は、2022年の「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたモデルです。それだけに「実際はどうなのか」と思案しておりました。

 試乗会の拠点は、横浜にあるヒョンデのCXC(Hyundai Customer Experience Center)。2022年7月にオープンした購入相談から納車、整備までを提供する施設です。現代的でクリーンで、スタイリッシュな建物でした。

 試乗コースは、CXCから鎌倉経由で箱根に向かい、箱根で1泊し翌日に横浜のCXCに戻ってくるという行程です。

 IONIQ5と久しぶりに対面した印象は、「自然光の下で見ると存在感がある」というものでした。シンプルに申し上げると「あらカッコイイ」といったところ。20世紀に「21世紀のクルマ」としてデザインされたような、「古新しい」とでも表現できるようなデザインです。

 サイズは新鮮です。全長×全幅×全高は4635×1890×1645mm。数値だけ見るとミッドサイズSUVというディメンションですが、ホイールベースは、何と3000mmと長大。室内は開放的で広く、ドライバー以外も快適に過ごせる空間でした。インテリアの素材はエコフレンドリーなものが選ばれています。肌触りがよく、安っぽさは感じません。

横浜市のヒョンデCXCの2階にあるカフェスペース

 試乗車は最上級グレード、ラウンジの2WDと4WDモデル。往路は2WD、復路は4WDでした。

 走りの印象に移りましょう。

 ラウンジの駆動バッテリーの総電力量は72.6kwhで航続距離はWLTCモードで2WDが618km、4WDは577km。モーター出力は2WDが217ps/350Nm、4WDは305ps/605Nmです。EVらしくとくにトルク数値の大きさが印象的。そして、そのスペックどおり、加速はとてもスムーズで気持ちいいものでした。暴力的ではないものの、一瞬で速度が上がっている、という感覚です。追い越しのときなどのストレスは皆無で、これは安全にも寄与すると思いました。そして何より感銘を受けたのは、そのドライバビリティ。重心が低く、安定しているのはもちろん、操作性も優秀です。

 ステアリングに付いたパドルを操作することによって、ほとんどフットブレーキを使わずに加減速を自在にコントロールできます。右のパドルを引くと回生が弱くなり、0というポジションはコースティングモードで回生はされません。一方、左のパドルを引くと回生を3段階で調節。回生が強ければ、それだけ充電されて、バッテリー残量が増えます。また、0のポジションから左のパドルを4回引くと回生量が最大になり、フットブレーキを踏まずとも停止まで行う、いわゆる“ワンペダルモード”になります。

 今回パドルを駆使して、あの箱根ターンパイクの下りをフットブレーキを踏まずに走りきりました。小田原料金所に着いたとき、バッテリー残量は65%から78%に増加。MTならともかく、エンジン車のATと比べたら、運転が楽しいのはIONIQ5のほうかも、とさえ思いました。  さらにウィンカーの作動時には、その方向の斜め後方の映像が自動的にモニターに表示されたり、家電や住宅にクルマから給電するV2L、V2Hにも対応するなどユーザーフレンドリーな装備は満載です。価格は479万~589万円。

 試乗開始時のバッテリー残量は98%で航続距離表示は490km。一瞬カタログ値との乖離を感じましたが、記憶を呼び起こしてみたら、これまで乗ったBEVの中で、その差が最小だったことに気づきました。実際に試乗を終えた後には計算上、当初の表示値を上回っていたので電費も優秀といえるでしょう。  私にとっては初めての韓国メーカー車。いや恐れ入りました。

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 安東さんが「箱根ターンパイクを回生ブレーキだけで下って来られる」と驚いていた。箱根ターンパイクは箱根を代表するワインディングのひとつで、全長約16km、標高差約1000m。下りはブレーキに厳しいことで知られるが、そこを安心・安全なスピードまで減速する回生力がいかに強力かがよくわかる。

 安東さんは「古新しい」と表現したデザインは、総じて高い評価を得ていた。

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■主要諸元

グレード=アイオニック5ラウンジ(AWD)
価格=589万円
全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm
ホイールベース=3000mm
トレッド=フロント:1628/リア:1637mm
車重=2100kg
モーター型式=フロント:EM07/リア:EM17(交流同期電動機)
モーター最高出力=225kW(305ps)/2800〜8600rpm
モーター最大トルク605(61.7)/0〜4000rpm
一充電走行距離=577km(WLTCモード)
交流電力量消費率=142.4Wh/km(WLTCモード)
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池 駆動用バッテリー総電力量=72.6kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=255/45R20+アルミ
駆動方式=AWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.99m

2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会・表彰式の様子

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