6代目にフルチェンジした新型日産セレナの開発コンセプトは、「家族との遠出を最大限楽しむためのミニバン」。歴代セレナのDNAである「BIG/EASY/FUN」を最新テクノロジーで徹底的に磨き上げている。
パワートレインは先代同様にガソリンとe-POWERの2種。大きく変わったのはe-POWERで、日産初となる1.4リッターの発電専用エンジン(72kW)+高出力モーター(120kW/315Nm)の組み合わせだ。実際に走らせると先代に対して余裕すら感じる絶対的な力強さはもちろん、静かで滑らかなフィーリングに驚く。新型は、日産の主力モデルだけに、すべてにわたって大幅に進化している。
ちなみにMクラスミニバンは、トヨタ・ノア/ヴォクシー(以下ノアヴォク)、ホンダ・ステップワゴン、そして日産セレナによる熾烈なシェア争いが続く。そんな中、2022年は全モデルが新世代に刷新。その戦いは更に激しさを増している。それぞれを簡単に比較していこう。
先陣を切って登場したノアヴォクはトヨタのクルマづくりの構造改革「TNGA」をフル活用した意欲作。見た目はキープコンセプトだが、新プラットフォーム採用による基本素性のレベルアップで「ミニバン=移動のためのクルマ」からの脱却を果たした。パワートレインはガソリンが最新の2リッターNA、ハイブリッドは第5世代のTHSⅡ(1.8リッター+モーター)を搭載。常用域での出力アップと実用燃費のバランスは、ライバル比で頭一つ抜ける。
ステップワゴンは原点回帰路線。エクステリアは初代を彷彿とさせるボクシーなフォルムにシンプルかつ優しさを持ったフロントマスクを採用。その一方で先代の特徴だったワクワクドアをアッサリやめるなど割り切りも見せた。1.5リッターターボ/2リッターNA+2モーター(e:HEV)のパワートレインとプラットフォームは先代を徹底的にリファインして使用している。過去を振りらないホンダが熟成の道を選んだことで、基本素性は大きくアップ。ミニバンだが実用域より高速域の方がハンドリングのバランスが優れるのはホンダらしい。
そんな中、最後発のセレナはどうか? パワートレインは刷新、プラットフォームは熟成方向だ。最新のe-POWERはスペック的にはステップワゴンのe:HEVに劣るものの、実際に乗るとその差は僅差、逆に電動車感は上回る。フットワークはノアヴォクが最新、ステップワゴンは先代の進化版に対して、セレナは3世代前の進化版とスペック的には不利だが、大規模に手が入っているので実際に乗ると劣勢に感じる所は少なく、むしろ常用域での扱いやすさや乗り心地に関してはノアヴォク/ステップワゴンを上回る面もある。加えて、プロパイロット2.0はライバルを大きく超える武器だ。
Mクラスミニバンの3台は、それぞれ一長一短があるが、断言できるのは「どれも同じ」ではなく各モデルの「個性」が明確であること。つまり、欲しいクルマを選べばOK。満足感が高いに違いない。
※【本誌取材ノート】は雑誌『CAR and DRIVER(カー・アンド・ドライバー)』掲載記事と連動したコンテンツです