マツダ・ロードスターS 価格:6MT 260万1500円 試乗記
エンジンを楽しむ、というと個人的にはつい大排気量のマルチシリンダーNAを3ペダルマニュアルトランスミッションで、などと考えてしまう。だが、クルマはバランスの産物である。車体との絶妙なマッチングがあれば、実用エンジンだって十分に楽しめる。
その好例がロードスターだ。評価は世界的に高い。よくできたスポーツカーの代表である。それは量産オープンスポーツカーを消滅の危機から救った歴史的なモデル=ユーノス・ロードスターをルーツに持つだけに、当然の仕上がり(もちろん、当然へと仕上げる開発には苦労が多かったに違いない)というものだろう。
4thロードスター(ND型)には1.5リッター直4DOHC16Vが積まれている。専用セッティングが施されているとはいえ、ベースは実用ユニットだ。132ps/7000rpm、152Nm/4500rpmのスペッエクも平均的である。
ところが、ロードスターで走り始めると抜群の小気味よさが味わえる。6速MTであればなおさらで、クラッチミートと同時に感じる後輪駆動ならではの「押し出し感」が心地いい。リミットの7000rpmまで淀みなく吹き上がる。
チューニングは低中速トルク重視型。アクセル操作に対してダイレクトで力強い駆動力が得られる。ミッションとデフを一体化するパワープラントフレームが、駆動の応答遅れを防いでいることもプラスをもたらしているのだろう。
前後重量バランスは理想的な50対50。操縦性は「意のまま」だ。クイックにも滑らかにも、ステアリングの操作と、アクセルの踏み込みの連携で姿勢を操れる。リニアな応答感は、腕に覚えのあるドライバーを唸らせる。まさに「人車一体」のドライビング感覚である。
ロードスターは、パフォーマンスのよりどころが決してエンジン頼りではない分、構えて操る必要はまるでない。ほどよくエンジンを味わい、シャシーの動きをコントロールすることが、結果的にロードスターすべてを楽しむことにつながっていく。この連鎖。乗り出して徐々に乗り手とクルマが結合していく感覚こそが、ロードスターらしさだ。
自分らしく走ることが、なにより楽しいと感じる稀有な魅力の持ち主である。ライトウェイトスポーツの原点に回帰した最新4thモデルは、そのキャラクターがいちだんと鮮明になった。
ロードスターは、スポーツカーを生かすもダメにするのも、決め手は「全体のバランス」であるということを改めて教えてくれる。トップを開け放ち、オープンエアを満喫すると、クルマって素晴らしい!と実感する。
グレード=S
価格=6MT 260万1500円
全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース=2310mm
トレッド=フロント:1495×リア:1505mm
車重=990kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(プレミアム仕様)
最高出力=97kW(132ps)/7000rpm
最大トルク=152Nm(15.5kgm)/4500rpm
WLTCモード燃費=16.8km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路:12.0/17.7/19.5km/リッター)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R16+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最小回転半径=4.7m
主な燃費改善対策=ミラーサイクルエンジン/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/充電制御/電動パワーステアリング
主要装備=アドバンストスマートシティブレーキサポート/リアパーキングセンサー/ヒルローンチアシスト/LEDヘッドライト/ハイビームコントロールシステム/ガラス製リアウィンドウ付きソフトトップ/インテリジェントドライブマスター/セグメント液晶オーディオディスプレイ/本革巻きステアリング&シフトノブ/エアロボード(脱着式)/軽量タイプサンバイザー/マニュアルAC/ブラックメタリック塗装16インチアルミ/アルミ製パワープラントフレーム/大径エレキスロットル/アルミ製ボンネット&トランクリッド&フロントフェンダー/鍛造クランクシャフト/フロントスタビライザー/デュアルピニオン式電動パワーステアリング
ボディカラー=アークティックホワイト
※価格はすべて消費税込み リサイクル費用は1万740円