アルピーヌA110S 価格:7DCT 864万円 試乗記
往年のネーミングそのままに、現代のアルミモノコック技術とミッドシップレイアウトで復活したアルピーヌA110は、まず1stモデルを彷彿とさせる個性豊かなスタイリングに引き込まれる。
ボディは、魅惑のプロポーションと安定感の持ち主。愛くるしいフェイスと、大きく張り出したフェンダーが絶妙なバランスをもたらしている。もちろん走りは抜群だ。ワイドなトレッドと4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンション、そしてミシュランPS4がもたらす前後の高い接地性が、すべての動きに安定性と余裕を生む。
ミッドシップマウントされたエンジンは後輪で路面を蹴り加速する。理想的な前後の重量バランスにより、前輪はステアリングの方向にどの速度域でも素直な旋回性を示し、後輪は横方向に逃げない。駆動力を与えながら旋回速度を高めることを可能にしている。ブレーキも素晴らしい。まるで後方から強い力で引き戻されるかのように制動する。
路面を確実に捉える安定したグリップ力と、ドライバーが操作したそのままにクルマが動く正確無比な操縦性は、A110シリーズ共通の持ち味。高性能バージョンとなるSグレードは、その特性をいっそう磨き込んだスペシャルモデルだ。いちだんと引き締まった設定のサスペンションは、ボディをフラットに保ちつつ高い車速まで導く。
こうした特性を持つため、A110Sに乗ると、コーナーを目指したくなる。これほどコーナリングが決まるクルマは珍しい。現代のライトウェイトスポーツカーとして最上位レベルにある操縦安定性と、ボディコントロール性は、ドライビングした誰もを虜にする魔力を秘めている。軽さを武器に、水すましのように身をひるがえした1stモデルの感覚が甦る。Sの乗り味は標準グレードよりも硬い。ただし上質な硬さだ。粗いイメージは微塵もない。さすがフランス車である。
エンジンは1.8リッター直4ターボ。日産由来のユニットをアルピーヌが制御系からチューンしたこの強心臓は絶品。Sでは標準比40psアップのハイチューンとなり、292psをマークする。最大トルクは320Nmと変わらないものの1110kgのボディを軽々とダッシュさせる威力は、並のスーパースポーツよりも切れ味が鋭い。アクセルを踏んでも、戻しても足の動きに忠実にレスポンスする特性と、レーシングエンジンのように豪快で、絶妙に音量を抑えたエグゾーストサウンドに心くすぐられる。
A110Sは、ベストハンドリングカーであり、エンジンの醍醐味を直感的に味わえるリアルスポーツである。
グレード=S
価格=7DCT 864万円
全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
ホイールベース=2420mm
トレッド=フロント:1555×リア:1550mm
車重=1110kg
エンジン=1798cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=215kW(292ps)/6420rpm
最大トルク=320Nm(32.6kgm)/2000rpm
WLTCモード燃費=12.8km/リッター(燃料タンク容量45リッター)
(市街地/郊外/高速道路:8.3/13.8/15.8km/リッター)
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:215/40R18/リア:245/40R18+アルミ
駆動方式=MR
乗車定員=2名
最小回転半径=5.8m
主な燃費改善対策=未公表
主要装備=EBD(電子制御制動力配分システム)付きABS/EBA(緊急時ブレーキアシスト)/解除スイッチ付きESC(横滑り防止装置)/前後パーキングセンサー+リアカメラ/ALPINEテレメトリー/SPORTボタン/アイドリングストップ/クルーズコントロール/シャシースポール/ヒルスタートアシスト/アルミ製パドルシフト/フルLEDヘッドライト/デイタイムライト/スポーツエキゾースト/フラットアンダーボディ/リアディフューザー/サベルト製軽量モノコックバケットシート/ブラックステアリングセンタートリム/アルミ製ペダル/助手席フットレスト/オレンジステッチインテリア/フルカラーTFTメーター/マイクロファイバールーフトリム/7インチマルチファンクションタッチスクリーン/FOCAL製軽量4スピーカー/オートAC/4輪ハイドロリックコンプレッションストップ・ダンパー/ブレンボ製ブレーキ/オレンジブレーキキャリパー/FUCHS製18インチ鍛造アルミ
ボディカラー:ブルーアルピーヌメタリック(op21万4000円)
※価格はすべて消費税込み