【最新モデル試乗】VWの最新BRV、ID.4は「欧州の今」を実感させる本気モード全開

VW ID.4 Proローンチエディション 価格:638万5000円 試乗記

VW ID.4 Proローンチエディション ID.4はVWの電動車ブランド「ID.」の中心となるクロスオーバーSUV。2021年「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。すでにグローバルで15万台以上を販売している

VW ID.4 Proローンチエディション ID.4はVWの電動車ブランド「ID.」の中心となるクロスオーバーSUV。2021年「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。すでにグローバルで15万台以上を販売している

VWの新たな主役。BEVのID.4の販売スタート

 VWは電動車ブランドの「ID.シリーズ」を立ち上げるとともに、「Way to ZERO」のコンセプトにのっとり、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、持続可能な企業になることを宣言している。

 ID.シリーズの展開は活発だ。2020年に欧州で発売したコンパクトハッチのID.3を皮切りに、2021年には欧米および中国市場に向けてクロスオーバーSUVのID.4とSUVクーペのID.5をリリース。さらに中国市場に7シーターのID.6を投入した。直近では欧州でかつてのワーゲンバスのイメージを投影したID.BUZZの予約受注がスタートした。いまやID.シリーズは、VWの主役といった存在感を放つ。

 その中から日本に初上陸を果たしたのが、売れ筋のSUV。世界戦略を視野に開発されたID.4である。グローバルですでに15万台以上を販売しており、2021年には「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得したことでも知られる。当初販売される日本仕様はProとLiteという2種のローンチエディション。価格はProが636万5000円、Liteは499万9000円の設定になる。2種のローンチエディションはすでに完売。2023年第2四半期以降に正式カタログモデルのLite(514万2000円)とPro(648万8000円)の導入が決まっている。カタログモデルは制御にかかわるハード&ソフトウェアの改良が実施され、航続距離がさらに伸びた。Liteは398kmから435km、Proは561kmから618kmへと、それぞれ大幅に改善している。

スタイリングはラウンディッシュ。クリアで流れるような造形は「自然」から着想を得たという。Cd値は0.28。全長に対してホイールベースを長く採ったプロポーションが特徴。Proのモータースペックは204ps/310Nm

スタイリングはラウンディッシュ。クリアで流れるような造形は「自然」から着想を得たという。Cd値は0.28。全長に対してホイールベースを長く採ったプロポーションが特徴。Proのモータースペックは204ps/310Nm

Proはフロント:235/50R20/リア:255/45R20タイヤとアルミを装着。足回りはやや硬めのセッティング。最小回転半径は5.4m

Proはフロント:235/50R20/リア:255/45R20タイヤとアルミを装着。足回りはやや硬めのセッティング。最小回転半径は5.4m

コンセプトは毎日を豊かにするBEV。高い完成度と気持ちのいい走りが光る

 ID.4は、「毎日を、もっと新鮮に、もっとワクワク過ごしたい。そんなあなたへ……」、「あなたとあなたの家族の日々をアップデートし、新しい幸せのかたちを見せてくれる1台」、とWEBサイトや資料などで表現。特別なクルマではなく日常生活を豊かにするファーストカーとして位置づけられている。

 技術的にはEV専用に開発された「MEBプラットフォーム」を採用。駆動用バッテリーを前後の車軸間にレイアウトすることで、4585mmという全長に対し、2770mmという長いホイールベースを実現した。

 キャビンは快適志向。「オープンスペース」と呼ぶ広々としたフラットな室内空間は、大型SUVに相当する広さを誇るとともに、543~1575リッターという大きな荷室容量を確保しているのが特徴である。
 走りにおいても、重量がかさむバッテリーをボディ下部に搭載した結果、車両の低重心化と最適な車両の重量バランスを両立。リア駆動にしたことで、優れた操舵性とトラクション性能を実現したという。

 ちなみにモダンなスタイリングは、「自然」から着想を得たといい、0.28という優れたCd値を達成している。VWらしく控えめながらも、既存のVW車とは異なるアプローチの新しさを感じさせる。

ID.4は効率と安全のためバッテリーの適正な温度管理を徹底。充電時間は90kWの急速充電で約40分(80%まで)、6kWの普通充電では約13時間(100%)

ID.4は効率と安全のためバッテリーの適正な温度管理を徹底。充電時間は90kWの急速充電で約40分(80%まで)、6kWの普通充電では約13時間(100%)

室内はシンプルで広々とした印象。操作系はドライバー正面のメータークラスターと中央の12インチタッチスクリーンに集約

室内はシンプルで広々とした印象。操作系はドライバー正面のメータークラスターと中央の12インチタッチスクリーンに集約

 インテリアデザインも、これまでとはひと味違った雰囲気がある。色使いにも遊び心を感じた。12インチのタッチディスプレイを備えたインフォテイメント系は、ゴルフ8に通じる最新世代。使いこなすには少々慣れが必要だが、機能は充実している。

 後席はヒップポイントが高めに設定されているおかげで見晴らしがよい。床下にバッテリーを積む都合上、前席下への足入れ性はあまり余裕がないのだが、ヒール段差は十分に確保されている。センタートンネルがない足下は広々。リアシートは4対6の2分割可倒式。センター部はトランクスルー式なので、4人を乗せたまま、ある程度の長尺物を積むこともできる。

 駆動モーターの出力は、高性能版のProが150kW(204ps)、バッテリー容量は77kWh、0→100km/h加速タイムは8.5秒。速さをアピールするBEVではないが、WLTCモード航続距離は最大561km(正式カタログモデル618km)と十分に確保されている。

 海外では、駆動方式をAWDとしてバッテリー容量を増やした高性能版もあり、将来的には日本仕様にも設定されるかもしれない。ひとまず発売時はProと、出力とバッテリー容量、そして航続距離をそれぞれ125kW(170ps)/52.0kWh/388km(正式カタログモデル435km)に抑えたLiteの2種類が導入される。今回はProに試乗した。

 走行モードはエコ/コンフォート/スポーツ/カスタムの4種類が選べ、それに合わせて動力性能の特性が変わる。全体的にアクセル操作に対する初期の応答がやや過敏に感じられたが、発進から流れに乗せるまでの力強く押し出してくれる感覚はなかなか気持ちがよい。後輪駆動であることが効いている。

 車検証によると、車両重量は2140kgで、前軸重が1010kg、後軸重が1130kgとリア寄りの配分となっている。鼻先が軽く、小さな舵角でスッと応答遅れなく曲がる軽快な回頭性は、後輪駆動なればこそ。引き締まった足回りも、車両重量を感じさせない運動性能を実現した要因である。

 ID.4は見た目の部分でVWらしからぬ「攻め」が見えた。とはいえ全体としてはVWらしいそつのない仕上がりが印象的。魅力的な電動車の選択肢が増えたことを歓迎したい。

シートはレザレット(人工皮革)とマイクロフリースのコンビ。非動物由来のエコ素材で構成。大型サイズでしっかりとした座り心地

シートはレザレット(人工皮革)とマイクロフリースのコンビ。非動物由来のエコ素材で構成。大型サイズでしっかりとした座り心地

ラゲッジ容量は後席使用時543リッター、最大1575リッター。後席は3分割形状。センタースルー機構付き

ラゲッジ容量は後席使用時543リッター、最大1575リッター。後席は3分割形状。センタースルー機構付き

VW ID.4主要諸元

ID.4リア

グレード=Pro ローンチエディション
価格=636万5000円
全長×全幅×全高=4585×1850×1640
ホイールベース=2770
トレッド=未公表
車重=2140kg
モーター型式=EBJ(交流同期電動機)
モーター定格出力=70kW
モーター最高出力=150kW(204ps)/4621〜8000rpm
モーター最大トルク=310Nm(31.6kgm)/0〜4621rpm
一充電走行距離=561km(WLTCモード)
交流電力量消費率153Wh/km(WLTCモード) 
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=77.0kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=フロント:235/50R20/リア:255/45R20+アルミ
駆動方式=RWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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