VWゴルフ 価格:291万6000〜375万5000円 試乗記
ゴルフⅧと紹介される8thゴルフは、2019年秋に本国デビューした。欧州では本流のハッチバックはもちろん、「エステート」を名乗るステーションワゴンも登場済み。さらに、「ひとつのブランド」として確立しているGTIをはじめ、4WDシャシーにオーバー300psの強心臓を組み合わせた、「スーパーゴルフ」のRまで、多彩なバリエーションを展開中だ。
一方、日本では、世界を襲ったコロナ禍だけでなく、最近では半導体不足という新たな災難にも見舞われ、新型の発売は遅れに遅れていた。それでも、まずハッチバックのベーシックなバージョンからとラインアップを厳選して、新世代8thゴルフが日本の道を走り始めることになった。
日本仕様は4グレード。sTSIアクティブベーシック(291万6000円)/eTSIアクティブ(312万5000円)/eTSIスタイル(370万5000円)/eTSI・Rライン(375万5000円)というバリエーションだ。
いずれもFWD仕様で、搭載エンジンはアクティブが3気筒の1リッター(110ps)、スタイルとRラインは4気筒の1.5リッター(150ps)である。トランスミッションはそれぞれ7速DCTを組み合わせている。
これまで同様にTSIの記号が与えられている点から、全車がターボ付きガソリン直噴エンジンだとわかる。目を引くのは、TSIの前に付くeの記号だ。
eはフロントシート下にレイアウトされた専用バッテリーやベルト駆動式のスタータージェネレーターなどで構成する、48V式のマイルドハイブリッドシステムを示している。48Vシステムを得た結果、減速時の回生やアイドリングストップに加えて、従来は不可能だった走行中のエンジン停止ができるようになり、いっそうの燃費性能向上≒CO2排出量の削減に挑んでいる。
試乗車はアクティブとRライン。1リッター仕様のアクティブは新型の販売主力モデル。1.5リッターユニットを搭載したRラインは、専用デザインのホイールとスポーツサスペンションなどで、スポーティなキャラクターを与えられていた。
新型のルックスは、いかにも「ゴルフらしい」たたずまい。グリル上端と高さを揃えた薄型ヘッドライトが、精悍な印象をかもし出している。それでも「まじめで質実剛健な表情」の持ち主であることに変わりはない。
ボディサイズは全長×全幅×全高4295×1790×1475mm。旧型(同4265×1800×1480mm)に対して大きな変更がなかったのは、従来型同様のMQB骨格を採用した点からも想定内。全幅がわずかながらも縮小方向に進んだのは、日本では「ホッとした」という思いのユーザーが多いのではないだろうか。Cd値は、0.30から0.275にリファインされた。
アクティブで試乗スタート。過給機が与えられるとはいえ「わずか1リッター」の小排気量で満足に走るのか? といぶかるファンは少なくないだろう。実際にアクセルを踏み込むと、それは杞憂にすぎないことが明らかになる。
2000rpmにして得られる最大トルク値は200Nm。自然吸気ガソリンの2リッター級ユニットに匹敵する太さだ。力強いのは当然である。しかも、最新1リッターユニットに与えられたターボは、排気エネルギーに応じて容量を可変化できるバリアブルジオメトリー方式。排気温度が高いガソリンユニットには適用が難しく、かつてはポルシェ911ターボ程度しか採用例が見られなかった「高級」なアイテムである。低回転域の使用を強いられる街乗りシーンでも想像を超える太いトルク感が得られる実力に驚いた。
フットワークのテイストは、「期待どおりのVW車らしさ」という印象。決してソフトではないが路面への当たり感は十分に優しく、速度がアップするほどに高いフラット感を提供してくれる。シャープというわけではないが、動きの素直さが際立つハンドリングは気持ちがいい。
アクティブからRラインに乗り換えると、乗り味がやや硬めに感じられるのは事実。が、その差はわずかで、速度が上がるにつれてフラット感が高くなるという特徴は同じだ。Rラインのエンジンスペックは150ps/250Nm。最高出力で40ps、最大トルクで50Nmという差は確かに実感できる。だが個人的には「アクティブでは、ダウンシフトを行ってもエンジンブレーキがほとんど期待できないのに対し、Rラインはアクセル操作だけで車間距離の調整が容易」だと感じた。加速力よりも、むしろドライバビリティにRラインの優位性を実感した。
グレード=eTSIアクティブ
価格=7DCT 312万5000円
全長×全幅×全高=4295×1790×1475
ホイールベース=2620
車重=1310kg
エンジン=999cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=81kW(110ps)/5500rpm
最大トルク=200Nm(20.4kgm)/1500〜3500rpm
モーター最高出力=9.4kW(13ps)
モーター最大トルク=62Nm(6.3kgm)
WLTCモード燃費=18.6km/リッター(燃料タンク容量47リッター)
(市街地/郊外/高速道路=14.7/19.1/20.6)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トレーリングアーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/55R16+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.1m
主な燃費改善対策:アイドリングストップ/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/気筒休止/電動パワーステアリング/充電制御/DSG/48Vハイブリッドシステム
主要装備:アダプティブクルーズコントロール(全車速追従機能付き)/緊急時停車支援システム/レーンキープアシスト/同一車線全車速運転支援システム(トラベルアシスト)/レーンチェンジアシストシステム/ハイビームアシスト/リアビューカメラ/プリクラッシュブレーキ/LEDヘッドランプ/リアフォグランプ/オールティンテッドガラス/3ゾーンフルオートAC/アレルゲン除去機能付きフレッシュエアフィルター/VW純正インフォテイメントシステム・レディ2ディスカバー/デジタルメータークラスター/ETC2.0対応車載器/モバイルオンラインサービス/本革巻きマルチファンクションステアリング/パドルシフト/前席ハイト&ランバーサポート調節機能/スマートフォンワイヤレスチャージ/エレクトロニックパーキングブレーキ/インテリアアンビエントライト/電子制御ディファレンシャルロック(XDS)/16インチアルミ(5ダブルスポーク)/テンポラリースペアタイヤ
装着メーカーop:ディスカバープロパッケージ19万8000円/テクノロジーパッケージ(LEDマトリクスヘッドライト+スタティック&ダイナミックコーナリングライト+ダイナミックライトアシスト+駐車支援システム+前後パークディスタンスコントロール+オプティカルパーキングシステム+オールウエザーライト+ヘッドアップディスプレイ+LEDテールランプ)20万9000円
ボディカラー:ライムイエローメタリック(op3万3000円)
※価格はすべて消費税込み