軽自動車所有率がいちばん低いのは東京都である。そんな東京で、指名買いされるモデル、それがスズキ・ハスラーだ。時代の革命車のひとつに数えていいだろう。
そのブームを巻き起こしたのはひとつ前の1stモデルなのだが、その当時、ハスラーがスズキのクルマだという認識率はかなり低く、「ハスラーがほしいけど、どこで売ってるのかわからない!」なんていう世間の声が上がったことに驚きを覚えたものである。
実は、そんな時代の寵児ハスラーの開発は、コスト面からかなり厳しい制約を課せられたらしい。「基幹車種のワゴンRをベースに、スペシャルティカーを作れ」という指令が出たものの、「変えていいのはデザインとサスペンションとタイヤだけ」といわれた開発陣。「そんな厳しいこというなら、いっそいっそのこと目いっぱい自由にやっちゃえ」と、言葉は悪いがエイヤッ!のノリで出したら、これが大ヒットしたとか(笑)。
中でも2トーンカラーモデルの人気が高かったが、正直いってここまで売れると思っていなかったため、作業工程の効率をさほど考えていなかったそう。なんでも、ボディとルーフのカラーの塗り分けのマスキング工程が手作業だったらしく、想定以上の注文に納期は数カ月待ちになったと聞く。
もちろん、見た目のキュートさだけではなく、厳しい制約の中で作ったとは思えないほど、しっかりSUVとして仕立てられていたからこその人気の高さだった。
中でも悪路の運動性能は驚くほど高く、私自身「さすがジムニーやエスクードを作っている会社は違うな~」と感動した日のことは、いまでも鮮明に覚えている。
そして、その考え方は現行の2ndモデルへとしっかりと受け継がれており、スノーモード、グリップコントロールやヒルディセントコントロールといった、悪路走破性を高め、それを簡単に扱える機能はさらに充実。また、最新モデルはエネチャージを進化させ、マイルドハイブリッド化したことにより、パワーモードの選択で高速道路での合流や中間加速などでの頼もしさがグッと増している。
排気量が小さいため苦手分野とされるACCの瞬時加速の反応も、モーターアシストによりずいぶんとスムーズになり、ハスラーでもっと行動範囲を広げてほしいという開発陣の気持ちが伝わってくる設定になっている。
デザインは正常進化だが、ユーティリティ面では相当の配慮と工夫が盛り込まれている。たとえば小柄な人には視界を妨げる可能性がある、上にポコンと膨らんだメーター上部をフラット化したり、車内でくつろげるテーブルがほしいという声に応えたり、ユーザーボイスを上手に取り入れている。
確かに、助手席の背もたれを前に倒して眺めてみると、「ここにマットを敷けば車中泊もできるし、テーブルもあると便利だな〜」なんて、活用シーンが頭に浮かんでくる。これは1stモデルのエイヤッ!のノリが根底に息づいている証拠ではないだろうか。
結論。ハスラーのヒットの真相は「眺めているだけでワクワクが浮かんでくるほど、真剣に遊び心を詰め込んだこと」にある。
1)開発時の厳しい制約を逆手にとって自由な発想で本格的なSUVを開発
2)キュートなスタイリングながら実は悪路走破性が驚くほどシッカリ
3)ユーザーボイスを上手に取り入れつつ ワクワクする活用シーンが想起できる
車名=ハスラー
グレード=Jスタイル2ターボ(4WD)
価格=CTV 183万3700円
全長×全幅×全高=395×1475×1680mm
ホイールベース=2460mm
トレッド=フロント:1285×リア:1290mm
室内長×幅×高=2215×1330×1270mm
最低地上高180mm
車重=880kg
エンジン=657cc直3DOHC12ターボ(レギュラー仕様)
型式=R06D型
最高出力=47Nm(64ps)/6400rpm 最
大トルク=100Nm(10.2kgm)/3600rpm
モーター型式=WA04C型(直流同期電動機)
最高出力=1.9kW(2.6ps)/1500rpm
最大トルク=40Nm(4.1kgm)/ 100rpm
WLTCモード燃費=23.4km/リッター(燃料タンク容量27リッター)
(市街地/郊外/高速道路=22.1/24.1/23.5)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:I.T.L.式
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=165/60R15+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=4名
最小回転半径=4.6m
Jスタイル2の特別装備はナノイー搭載フルオートAC/360度プレミアムUV&IRカットガラス/専用メッキⒻグリル/メッキドアハンドル&フォグランプガーニッシュ&インサイドドアハンドル/ルーフレール/インパネカラーガーニッシュ/ドアトリムガーニッシュ/レザー調ファブリックシートなど