【注目モデル試乗】官能のスポーツセダン。BMW・M3はエンジンだけでなく足が素晴らしい!

BMW・M3 価格▷1351〜1496万円 試乗記

BMW・M3コンペティション 現行G80型はFRとともにM3史上初の4WDを設定。スタイリングはM4共通マスクとマッシブなフェンダー処理で凄みを演出

BMW・M3コンペティション 現行G80型はFRとともにM3史上初の4WDを設定。スタイリングはM4共通マスクとマッシブなフェンダー処理で凄みを演出

時代に合わせて進化するM3

 4→6→6→8→6→6。この数字が何を示すのか、BMWファンであればすぐにお気づきだろう。そう、歴代M3に積まれたエンジンのシリンダー数である。
 E30型をベースとした初代M3(1985年)は2.3リッターの自然吸気4気筒エンジンを搭載してデビュー。F1でも活躍したM10と呼ばれる鋳鉄製ブロックを土台とするこのパワーユニットは6750rpmの高回転域で200㎰を生み出した。また初代は、グループAレーシングカーのホモロゲーションモデルという役割も担っており、軽量化にも配慮されていた。車重はほぼ1200kg。4気筒エンジンだったから可能なライトウェイトといえる。

 その後のM3は車重の増加に伴い、2代目のM36型(93年)ではストレート6に換装。4代目M3のE90型(2007年)ではついにV8が搭載された。しかし5代目F80型(2013年)はターボ化されてストレート6に復帰。この流れは、最新の6代目G80型(2021年)にも受け継がれている。ちなみに最新M3コンペティションは3リッター直6DOHC24Vツインターボを搭載。パワースペックは510ps/650Nmを誇る。

M3リア

M3エンジン

最新G80型は絶品のフットワークが魅力

 世代ごとにさまざまな特徴を備えたM3だが、とりわけ現行型はエポックモデルだ。FRとともにはM3として初となる4WDが設定されたこともそのひとつ。だが、個人的に注目しているのは足回りの味付けが大きく変わった点である。

 先代M3の足回りは全般的に突っ張るような傾向が見られた。うねった路面ではグリップレベルが断続的に変化し、ステアリングが左右にとられる印象があった。ところが新型は、まったく異なる。凸凹路面に対してもタイヤがしなやかに追従。グリップレベルが大幅に安定したうえに、ステアリングがとられる挙動はほぼなくなった。さらに先代はブレーキを残したままコーナーに進入するトレーリングブレーキを使うと、ブレーキをリリースした際に挙動が不安定になる傾向が散見された。新型ではこの弱点も解消。おかげで、コーナーの進入から出口まで、ステアリングの舵角を一定に保ったままクリアできるシーンが格段に増えた。

 最新M3は、コーナリング時にマージンを見積もる必要がない。タイヤのグリップ限界まで積極的に攻められるようになったのである。私は、これこそがスポーツドライビングの本来あるべき姿だと受け止めている。しかも、DSC(スタビリティコントロール)をオフにしてMトラクションコントロールを調節すると、「M」の文法どおり、オーバーステアを引き出すことも可能。この辺の味付けは見事としかいいようがない。
 もちろんストレート6は恐ろしく滑らかでありながら独特の鼓動が感じられる絶妙の設定。ここに適度なメカニカルノイズも加わってドライバーを官能の世界へと誘う。

 M3はBMWのこだわりと情熱がぎっしり詰まった最高のドライバーズカーである。

M3インパネ

M3シートBMW・M3主要諸元

M3サイドビュー

グレード=M3コンペティション
価格=8SAT 1351万円
全長×全幅×全高=4805×1905×1435mm
ホイールベース=2855mm
トレッド=フロント:1615/リア:1605mm
車重=1740kg
エンジン=2992cc直6DOHC24Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=375kW(510ps)/6250rpm
最大トルク=650Nm(66.3kgm)/2750〜5500rpm
WLTCモード燃費=10.1km/リッター(燃料タンク容量59リッター)
(市街地/郊外/高速道路:6.9/10.4/12.3 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:275/35R19/リア:285/30R20+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=4名
最小回転半径=5.2m

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