三菱アウトランダーPHEV 価格▷484万1100~570万5700円 試乗記
アウトランダーの完成度はプレミアムサルーンに匹敵
ステアリングを握るまで、アウトランダーPHEVはオフロード重視のタフなSUVだと思い込んでいた。
なにしろ三菱といえば長年ジープを作り続けてきた4WDスペシャリスト。頑丈でオフロードに強いSUVを作るのは得意中の得意で、そうした経験がかつてのパジェロに息づいていたのは明らかだった。その伝統が、現代のパジェロたるアウトランダーに継承されていると予想していたのだ。けれども、現実のアウトランダーは、そんな先入観を見事に裏切ってくれた。
何より車内のノイズレベルが驚くほど低い。「PHEVだから、エンジンがかかっていなければ静かなのは当たり前」なのだが、アウトランダーはエンジンが始動しても「シュルシュル」と軽い音を立てるだけ。うるさいとはまるで感じない。そもそも、注意していなければエンジンがかかったことにさえ気づかないほど。おまけにロードノイズも小さい。車内の静粛性は圧倒的である。
乗り心地も、サスペンションの動きだしがしなやかで、タイヤの当たりが柔らかく感じられる。だからといって、決してやわな足回りではない。タイヤに大入力が加わればそれなりの衝撃が伝わってくるものの、基本的な乗り心地が良好であることは確かだ。
というわけで、新型アウトランダーはオフロードに強いが、それだけの粗削りなSUVではない。プレミアムサルーンと見紛うほどの快適性を備えていた。
前後2基のモーターが生み出す動力性能は十分以上。ノーマルモードでの発進時のマナーはとりわけ滑らかだ。スロットル操作による車速コントロールが容易でギクシャクしにくい。一方、スロットル操作に対する反応が鋭敏になるパワーモードでは迫力ある加速感が味わえる。前後Gの変化が急峻すぎて、やや煩わしいと感じたほどだ。
カタログ上のEV航続距離は83km(WLTCモード)。これは掛け値のない実力。試乗時、メーターでは87kmと表示された。これだけ航続距離が長いのは、車載バッテリーがPHEVとしては大容量の20kWhだから。そしてこの大容量バッテリーと電力を外部に供給できる給電機能が、アウトランダーに通常の「自動車」とは異なる価値をもたらしている。
給電機能は多くの日本製BEVにも搭載されている。しかしBEVの場合、バッテリー容量は大きくても100kWh。アウトランダーは前述のとおり20kWhと小さいが、こちらにはエンジンで発電するという手がある。ちなみにアウトランダーの燃料タンクは56リッター。これをバッテリー容量に換算すると、実に509.1kWhにもなる。実際には、これにエンジンの熱効率や発電効率を掛け合わせなければいけないが、並のEVを凌ぐエネルギー量であることは明らか。三菱自動車のウェブサイトに「一般家庭の最大12日分の電力をまかなえる」と書かれている。アウトランダーPHEVは、実によく考えられた実力車である。
三菱アウトランダーPHEV主要諸元
グレード=P
価格=570万5700円
全長×全幅×全高=4710×1860×1745mm
ホイールベース=2705mm
トレッド=フロント:1595/リア:1600mm
最低地上高=200mm
車重=2110kg
エンジン=2359cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=98kW/5000rpm
最大トルク=195Nm/4300rpm
モーター最高出力=フロント:85kW/リア:100kW
モーター最大トルク=フロント:255Nm/リア:195Nm
駆動用バッテリー=リチウムイオン
総電力量=20kWh
WLTCモードEV走行換算距離=83km
WLTCモードハイブリッド燃費=16.2km/リッター(燃料タンク容量56リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:17.3/15.4/16.4km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=255/45R20+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=7名
最小回転半径=5.5m
※撮影協力/小田急・箱根レイクホテル
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