【ネオクラシック体験隊】フラットシックス＋MR＋オープン！ 初代ボクスターはポルシェの魅力が存分に味わえる傑作である

ボクスターは1993年のデトロイト・ショーでプロトタイプを発表。初代986型はそのイメージを忠実に再現。魅力は絶品のフラット6とオープンエア

スポーツカー好きを虜にするマジカルオープン

　ボクスターは、「ポルシェ／ミッドシップ／ボクサーユニット／オープン2シーター」という、スポーツカー好きを魅了するアイコンを備えた傑作。1993年のデトロイト・ショーでプロトタイプを発表。3年半後の1996年7月に正式デビューした。現代に続くポルシェ・テクノロジーをいち早く採用したボクスターは、世界的にスマッシュヒットを記録。当時、苦しい経営状況だったポルシェを見事に立て直した。

　ちなみにポルシェ車のルーツである1948年夏に製作された「356プロトタイプNo.1」は、ミッドシップの2シーターオープンだった。その意味でボクスターは、911と同様にポルシェの伝統を担う存在と表現できる。

　ボクスターは、最新の982型まで、4世代にわたる歴史を持つ。歴代、基本的なキャラクターは共通。それはスポーツカーの名門の作品だけに、初代の986型から高い完成度を誇っていたからである。どの世代も人気が高いが、最近、再評価されているのが第１世代だ。ハーム・ラーガイ氏が仕上げたプロトタイプとのデザイン上の連携が最も深く、走りも高水準。おまけに値上がり傾向とはいえ、まだ入手可能なプライスゾーンに留まっているからだ。「いつかはポルシェ」と考えているマニアにとって、最も現実的な選択肢が986型なのである。

新鮮な走行感感覚。ずっとステアリングを握っていたい！

　今回、魅力を味わおうと連れ出したのは2003年秋登録の後期型。2.7リッターのフラットシックスを搭載した、左ハンドルのティプトロニック（５速AT）である。後期型は、2.7リッター（228ps／260Nm）の標準仕様、3.2リッター（260ps／310Nm）のSともに、新型バリオカムを採用した改良型エンジンを搭載。幌はガラス製リアウィンドウ付きとなり、ボディ剛性が強化された熟成版。パフォーマンス面でも、所有する喜びという点でも、価値ある存在である。

　走り始めてすぐにフラットシックス・ユニットに魅了された。サウンドは最新のGTS4.0用以上に澄んだ印象で、吹き上がりは実にスムーズ。パワー自体は驚くほどではないが、0→100km／h加速を7.3秒でクリアし、248km／hのトップスピードに達する実力は、やはり並ではない。回すほどに刺激度を増すキャラクターと相まって全域でドライバーを心地よくもてなす。

　ハンドリングも超一級品。ワインディング路では、まるでドライバーの意を汲んだように自在にノーズが動き、高速道路での安定性は抜群。飛ばさなくても味わえる絶妙な人車一体感が、深い満足を与える。掛け値なく楽しい。まさにスポーツカーである。

　しかもトップを開け放つと、爽快な青空が独り占めできるのだ。取材車はシートヒーターが装着されていたこともあり、この季節でも痩せ我慢なしにオープンエアが満喫できた。

　986型ボクスターは、走りはもちろん、内外装を含めて、まったく古さを感じない。現在でもフレッシュで、ずっとステアリングを握っていたくなる。まさに一生ものの輝き、マニアの到達点にふさわしい。オープンスポーツだけにファッションにも気を配って乗り回したら、新たなライフステージがスタートしそうである。

2003年式ポルシェ・ボクスター（2.7／ティプトロニック）　新車時価格：5SAT　610万円　

ポルシェ・ボクスター主要諸元

グレード＝ボクスター（ティプトロニック）
新車時価格＝5SAT　610万円
全長×全幅×全高＝4320×1780×1290mm
ホイールベース＝2415mm
トレッド＝フロント：1465／リア：1530mm
車重＝1370kg
エンジン（プレミアム仕様）＝2687cc水平対向6DOHC24V
最高出力＝168kW(228ps)／6300rpm
最大トルク＝260Nm／4700rpm
10・15モード燃費＝8.3km／リッター(燃料タンク容量65リッター）
サスペンション＝前後ストラット
ブレーキ＝前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ＆ホイール＝フロント：205／55ZR16／リア：225／50ZR16＋アルミ
駆動方式＝MR
乗車定員＝2名
最小回転半径＝5.4m
※価格は消費税込み／スペックは新車時

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