私にとってもっとも特別なGT-RはR35である。これは否定しようがない。最大の理由は、本誌にも記したとおり、16年目を迎えた今も進化し続け、世界トップクラスのパフォーマンスを維持している点にある。
この15年間を支えた技術陣の粘り強い開発には頭が下がる。その土台を作り上げた開発初期のメンバーの高い志には心から敬意を表したい。
とりわけ特筆すべきは、そのボディ剛性の高さと基本レイアウトの優秀性。もしもこのふたつが備わっていなければ、15年という歳月に持ちこたえることができず、「どんな開発を行っても性能向上は期待できない」という事態に陥っても不思議ではなかったはず。その意味で言いえば、技術陣を率いた水野氏の先見の明にはただただ驚かされるばかりだ。
私自身が考える“R35”GT-Rの優れた点をひとつ挙げるならば、それはATTSA E-TSのセッティングにある。滑りやすい路面でフルパワーをかけたR35は、当然のことながらオーバーステアの姿勢をとろうとする。しかし、これを察知したATTSA E-TSは、エンジンパワーの抑制やブレーキ・トルクベクタリングなどに頼ることなく、トルクをフロントにより多く配分することで姿勢を立て直そうとする。おかげで、エンジンパワーをいささかもロスすることなく、爽快にコーナーを立ち上がっていくことができる。
こんなことができるスーパースポーツカーは、世界中探しても滅多に見つからないだろう。
大谷達也(おおたにたつや)/電機メーカーの研究室に勤務後、自動車専門誌の編集に携わり、2010年よりフリーランスに。ハイパフォーマンスカーが得意ジャンル。英語で海外エンジニアと直接インタビューできる語学力の持ち主。AJAJ(日本ジャーナリスト協会)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員