GT-Rの魅力は妥協しないで創り上げたところにある。ボディもサスペンションも専用、エンジンも専用、シートもインパネもタイヤもハンドルも同様だ。そこまでやり切らないとノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)の走りを達成できなかったということだ。
GT-Rが鍛え上げられたアスリートの筋肉のように見えるのは筆者だけではないだろう。一般道ではもちろんその限界までは到達しない。サーキットでさえもノルドシュライフェより過酷な場所はないから、どこを走っても弱音を吐くことはない。ゴーンさんが赤字の日産を復活させたこと以外にした良い仕事は、GT-Rの開発を許可したことだ。社長直轄での開発だから、通常の開発ルールを度外視して達成できたのだ。
これほどトンがったモデルであるにも関わらず、一般市街地で普通に乗れるところもGT-Rの褒められるところ。しかも最新モデルでは乗り心地も快適になっている。シフトアップ、ダウンでのギクシャクも無くなっている。運転が難しいレーシングカーやスポーツカーではなく、誰でも普通に乗ることができる乗用車として使うことができるのだ。
しかも、そのような通常使用時にボディ剛性の高さが、桁違いの安心感を与えてくれるのも嬉しい。この感触はノルドシュライフェを完璧に走れる能力を垣間見た気にさせてくれる。GT-Rというネーミングを日本から世界に広めたことは胸を張っていいと思う。
菰田潔(こもだきよし)/1950年、神奈川県生まれ。自動車レース、タイヤテストドライバーを経てフリーランスのジャーナリストへ。クルマ好きというより運転好き、BMWドライビングエクスペリエンス・チーフインストラクター。AJAJ会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員