CES2023で取材したミニマルな電動バイクとスーパーな電動バイク。好対照が面白い

小さく折りたためる日本の電動バイク

ICOMAがCES2023で発表した折りたためる電動バイク「KOMA」

 CES2023ではクルマの電動化を象徴する展示や基調演説が多かった。この電動化の波は、バイクや自転車にも押し寄せている。

 たとえばアメリカ国内での工場建設と、VF6とVF7の米国発売を発表したベトナムのVinFastは、同時に電動バイク、自転車も展開する方針も明らかにしている。

CES 2023でBEVのほか電動バイクなどを発表したVinFastのプレゼンテーションのもよう。写真のクルマはVF7(VinFastのHPから)

 ジャパン・パビリオンに出展されたICOMA社のKOMAだ。こちらは原付きサイズの小型バイクだが、特徴は「折り紙のように折りたためるバイク」だ。

 社長の生駒崇光氏によると、「ガンダムのような日本の変形玩具から着想を得た、駐車場がいらず生活スタイルに溶け込むバイク」なのだそう。一般家庭のコンセントから充電でき、3時間の充電で30km走行できる。

 KOMAのサイズは全長×全幅×全高1230×650×1000mm、重量は50kg。折りたたんだときのサイズは690×260×690mmである。取手部分を引っ張れば女性でも簡単に移動できる。玄関に置いたり、室内のデスク下に収納できたりもする。ポータブル電源としてスマホを充電することもできる。

 350X570mmのサイドパネルはカスタム可能で、自分の好きなデザインを発注し、世界に1台だけのオリジナルバイクを作れるところも魅力だ。

高性能を追求したエストニア製スーパーバイク 

 こうしたミニマルデザインの対極ともいえる、電動バイクもCES、バージ・モーターサイクルである。この会社は、IT大国ともいわれるエストニアが発祥のメーカー。バージTSと命名されたスタイリッシュなモデルの特徴は後輪にインホイールモーターを装着している点にある。

 インホイールモーターとは、ホイールとモーターを一体化したもの。リアホイールに組み込まれたモーターが、エネルギーをロスすることなくダイレクトにパワーを伝える。

バージの電動バイク

後輪にインホイールモーターを装備するバージの電動バイク

 モーターがホイールと一体化することにより、ボディ部分にモーターを搭載する必要がなくなり、バッテリーの搭載するスペースとして使えるようになる。

 0〜100km/h加速は、わずか2.5秒、最大トルクは1200Nm、最大出力は201HP/150kW。最高速度は200km/hに達する。1充電当たりほ航続距離は375kmである。

 パワートレーンには走行モードが4種類設定されている。レンジは最大の航続距離を出すためのエコノミーモード、ゼンはスムーズでリラックスした乗り心地が楽しめる。ビーストは最大の加速性能でライダーのアドレナリンを全開にするモード、カスタムはそれぞれのモードの特徴を組み合わせて自分が最も楽しめる設定にするメニューだ。

フロントは一般的なタイヤとホイール、ブレーキで構成されている

 搭載されているバッテリーは20kWhで、25分で80%まで充電できる。チェーンなどの部品がないため、メンテナンスは最低限で済み、維持費はガソリンバイクと比べると安くなるようだ。

 電動バイクらしく、計器類はすべてタッチパネルに組み込まれている。充電状況やバッテリー残量、走行モード、時速などがパネル上に表記され、スマホのスクリーンのように時刻や天候なども表示できる。

 バージTSはエストニアの他デンマーク、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、アメリカで同時発売が予定され、現在予約受付中。デリバリーは今年9月からの予定である。TS、TSプロ、TSウルトラという3グレードが用意されている。0〜100km/h加速2.5秒を達成したグレードはウルトラだが、スタンダードのTSでも4.5秒と十分に速い。価格はそれぞれ2万6900ユーロ、2万9900ユーロ、4万4900ユーロとなる。

 電動化、エンジンがないという技術を背景にして、バイクにも省スペースを活かした独特の世界観が生まれることになりそうだ。それがハイスペックのスーパーバイクであれ、ミニマルデザインの小型バイクであれ、こうしたユニークな発想は今後も広がりそうだ。 

 

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