クルマは街の景観を左右する。走り去る姿に注目。 スタイリッシュであるか否か の判断基準は人それぞれ。個人的に大事だと考えているのは、速さや楽しさの演出が適度で真に美しいフォルムを追求していること。スポーツカーがカッコよさの頂点という価値基準ではない。今回はコンパクトカーやSUVまで含めたオールジャンルの中から、道を歩いていて走り過ぎる姿がスタイリッシュであると思う車種をセレクトした。クルマは街の景観を左右する重要な要素である。
レクサスLCを見て思い浮かぶのは、日本的。東洋的というキーワードだ。メタリックな縁取りを施した小振りなライト、フロントフェンダーからピラーへの滑らかなつながり、大胆なのに派手ではないリアフェンダーの張り出し、薙刀を思わせるルーフ左右のモールなど、ヨーロッパの競合車にはない優美で繊細な世界観で統一されている。日本的、東洋的なクルマはこれまでも、Kカーのハイトワゴンや5ナンバーミニバンなどがあった。でもそれは、低速短距離移動という道路事情に合わせた車種だった。レクサスLCはラグジュアリークーペという西洋がメインマーケットになるジャンルで、ライバルにはない独自の存在感を提示したところが素晴らしい。クーペはプレミアムブランドのイメージリーダーとして不可欠な存在であるとレクサスは認識し、欧米のライバルに負けない魅惑的なプロポーションと、西洋とは異なる独自の美意識を備えたLCをラインナップした。日本人のひとりとして嬉しく、誇りに感じる。
1962年に生まれたオリジナルA110をそのまま蘇らせたようなフォルムに感心。中身はリアエンジンからミッドシップに転換しているが、造形バランスは崩れていない。しかも新鮮な印象を発散する。攻撃的なスタイリングが目立つ最新スポーツカーの中で、エレガンスを感じる存在感は貴重。必要以上のサイズアップをせず、小型軽量にこだわった作りも共感できる。
EVだからとモダンに仕立てず、丸目のヘッドライトが象徴するように、周囲に溶け込むフレンドリーな存在を目指した思想に感心する。キーを持ってクルマに近づくとデイライトが点灯し、ドアハンドルがポップアップする動作は、クルマと対話しているような感覚。それでいてデジタルドアミラーなど最新技術は、「今日性」を象徴している。完成度が高い。
街で見かけるといまなお振り返ってしまう。200万円台の実用的なハッチバックが、ここまで魅惑的なスタイリングを備えていることは驚きだ。マツダが2012年から展開してきた「魂動(こどう)デザイン」のひとつの到達点と言えるだろう。生まれ故郷の広島で、マツダ3は東京以上にたくさん走っている。マツダのイメージリーダーという認識が強いことが伝わってくる。
5位:VOLVO XC40
現行ボルボのデザインは日本でも高く評価されている。中でも完成度が高いのがXC40だ。基本的なテイストはブランド共通ながら、サイドウィンドウ後端のキックアップや台形のフェンダーなどでカジュアルな雰囲気を演出する。2トーンカラーやクラシカルなリアパネルを含めて、北欧らしいロングライフを受け継ぎつつ遊び心をプラスした造形が好ましい。