パワーだけではない魅力。エモーショナルさが価値。 パワーユニットの電動化は世界的な傾向。とはいえ、フィーリングやサウンド、そしてパワフルさなどが際立つエモーショナルなエンジンはまだまだ健在。秀逸な代表作を、「この先、絶滅してしまう」と思われるものも含めて探した。高回転・高出力型の多気筒のガソリンエンジンに、「これぞ」と思える逸品が多い。だが技術の進化でターボユニットやディーゼルにも絶品フィーリングの持ち主が存在する。エンジンは奥が深い。
水平対向の6気筒という稀有なレイアウトは、911の心臓部に欠かすことができない1stモデル以来のDNA。そんな911シリーズの中でもGT3用は、4リッター自然吸気式にして最高出510㎰を発揮。レブリミットは9000rpmという特別高性能なユニット。各部にタフな専用設計を採用し、ベーシックなカレラ系と異なる「サーキット生まれ」と紹介するのが適当な生い立ちを備える。GT3のフラット6は、典型的な高回転・高出力型である。最高速度は318km/hに達し、0→100km/h加速を3.4秒(DCT)でクリアする。まだ最新992型GT3のテストドライブは実現していない。しかし基本的に同ユニットを搭載する従来の991型GT3の経験から、回転数が高まるにつれてアクセルレスポンスがシャープさを増し、官能的なサウンドとともに弾けるような強烈加速を味わわせてくれるパフォーマンスが想像できる。スポーツ派に向けた究極の911。トランスミッションは6速MTと7速DCTが選べる。
ディーゼルは鈍重でノイジー……そんな固定観念を突き崩すユニットが、マツダの2.2リッタースカイアクティブD。シーケンシャルツインターボという凝ったメカを採用。低回転域でフレキシブルという特性を持ちつつ、高回転の伸びにも優れる。スペックは200ps/450Nm。豊かなトルクはガソリン4リッタークラスと同等。高速道路での走りは「向かうところ敵なし」の実力だ。
新開発3リッター・V6ツインターボ・エンジンを日本向けに初搭載したのが、2019年にマイナーチェンジしたスカイライン。レスポンスを重視したターボチャージャーや電動VTC、ミラーボアコーティングなど最新技術を投入。400R用はベース仕様の304psに対し、独自チューニングで405psまでパワーアップ。高回転域で伸びるフィーリングはスポーティで刺激的だ。
アウディのフラッグシップスポーツ、R8は5.2リッターの自然吸気V10ユニットを搭載。キャビン背後にミッドシップマウントする。パワースペックは620㎰/580Nm。この先、生き残りが難しいハイスペックエンジンである。大排気量なのに軽々と8000rpmまで回り、最大トルクも6000rpm超で発生。生粋の高回転・高出力型ユニットが奏でるサウンドは最高だ。
5位:BMW 740d
7シリーズは、6.6リッター・V型12気筒を頂点に、PHVなど多彩なパワーユニットをラインアップする。「これぞベストチョイス」と思えるのが、ターボ付き3リッター直6ディーゼルを搭載の740dシリーズ。スペックは320㎰/680Nm。全域でトルク感にあふれるテイストが、剛性感が高いボディやしなやかなフットワークとハーモニーを奏で、極上のドライビングを約束する。