乗り心地は総合力。快適性と、疲労軽減性が重要。 「乗り心地がいい=柔らかい」ではない。路面入力に対して当たりが優しいか、ショックを上手に吸収できるか、走行中の揺れが少ないかなど複雑な要素が関係する。つまり単純に硬い/柔らかいではなく、実際に乗ってみて快適か、疲れが少ないかが重要。「硬めだが不快に感じない」のは、乗り心地がいいクルマの一例。極上の乗り心地はサスペンションの設定、ボディ剛性、タイヤ、シートの仕上がりなど総合力から生まれる。
古くから「シトロエンは乗り心地がいい」といわれてきた。それは独自のハイドロニューマチックシステムの効果が大きかった。最近はコンベンショナルなサスペンションで、とくに前衛的な構造ではない。しかし、C5エアクロスSUVは、久々にシトロエンらしい乗り心地を実現した。秘密はハイドロニューマチックの現代的解釈「プログレッシブ・ハイドロリッククッション」と呼ぶ足回りにある。通常のゴム/ウレタン製バンプラバーの代わりにダンパー内にセカンダリーダンパーを内蔵。その効果は絶大である。日常域は非常に柔らかなタッチと比較的大きめの上下動で凹凸を吸収するが、速度が上昇するとバネ上がピタッと抑えられたフラット感覚に変化。コーナリング時は無駄な動きが少なくダイレクト感が高いロードホールディングを提供する。電子制御ダンパーかと錯覚するほど完成度が高い。この「不思議」な乗り心地はC5エアクロスの個性だ。多彩なパワートレーンの中で、ディーゼルがより似合う。
アルピナは、BMWベースの高性能モデル。Mモデルとは異なる独自の世界観を備える。大径の超偏平タイヤを履くが常用域はそれを感じさせない。繊細で優しい乗り味が印象的だ。だがいったんムチを入れると、無駄な動きを抑えたダイレクトなスポーツカーに即座に変貌。この二面性が「アルピナマジック」と呼ばれるゆえんだ。高価だが、それに見合う価値がある。
MIRAIは量産燃料電池車(FCV)。魅力は圧倒的な環境性能に加え、トヨタ/レクサス最良の走り味にある。常用域はフラットな走行姿勢/凹凸を上手に吸収する優しい乗り心地、ワインディングでは車重を感じさせない一体感あるクルマの動き/旋回性能を披露する。GAーLプラットフォームの基本性能のよさに加えて、電動パワートレーンのメリットが活きている。
近年スポーティ方向に舵を切っていたが、最新Sクラスはエレガント方向に戻った。操作に忠実な応答性はそのままに、人間の波長に合う「心地よいダルさ」がクルマの動きに残されている。街中では舗装が改善されたかと錯覚する快適性、ワインディングではボディがひと回り小さくなったかのような機敏性を見せる。高級車のベンチマークはさらに完成度が高まった。
5位:MAZDA CX-8
CXー8は日本市場におけるフラッグシップ。マツダの目指す「スムーズで滑らかな走り」を体現した1台だ。改良を重ねるスカイアクティブシャシー/スカイアクティブボディ/Gベクタリングコントロールが、大柄なボディを感じさせない自然なハンドリングと落ち着きある乗り味を提供。「SUVのGT」と呼びたくなるフィーリングは、欧州車と比べても魅力的である。