日産ノート・オーラNISMO 価格:286万9900円 試乗記
ノート・オーラNISMO(以下オーラ・ニスモ)がデビューした。オーラ・ニスモは、ノートシリーズの第3弾であると同時に、新世代ニスモロードカーの幕開けになる。コンセプトは“大人の琴線に触れる”電動シティレーサー。新型は全てが新しく、しかも刺激的な電動スポーツに仕上がっている。
エクステリアはニスモがレースで培ったエアロダイナミクスをフィードバックした造形。新たにフォーミュラEをインスパイアしたデザインによりスポーティなだけでなく洗練された印象を演出した。インテリアは専用ステアリング&メーターグラフィック&シートを採用。ニスモ定番のレッド&ブラックのコーディネートは、幅広い年齢層を魅了するハイセンスな仕上がりである。
パワートレーンは、オーラをベースにファインチューニングした。標準仕様のオーラでも旧型eパワー・ニスモSに匹敵するパフォーマンスの持ち主だが、さらに刺激的になっている。136ps/300Nmのモータースペックはそのままに、「加速の伸びの良さ」、「レスポンス」を重視した制御系チューニング(VCM)が施された。
その違いは発進した瞬間から歴然だ。オーラは、ノートからの出力アップ分(+20ps/+20Nm)を「ゆとりの走り」に使う。対してオーラ・ニスモは「パフォーマンス」に振り分けた。標準はトルク感、ニスモはパワー感を重視した制御だ。
ドライブモードはECO/ノーマル/ニスモの3タイプ。ECOでも制御は標準仕様のスポーツに相当し、ノーマルではアクセル操作に対する応答の鋭さと伸びのある加速感により「おーっ、速い」と実感。ニスモは日常域では「ちょっと鋭すぎ!?」と思うくらい刺激的である。速度域が高いコーナリング時には繊細なアクセルワークが求められる。クローズドコースがピッタリなモードだ。
力強さと扱いやすさを高次元でバランスしたノーマルが「一般道ベスト」だろう。デフォルト設定のEcoも十分以上のパフォーマンスだが、オーラ・ニスモのキャラクターを考えると「穏やかすぎ!?」に感じてしまったのも事実だ。
シャシーの変更部位は多岐に渡る。ただしボディ補強は必要最小限。それはノーマルで十分な剛性を持っていたからという。
シャシーは専用サスペンション(20mmローダウン、Rモノチューブ式ダンパーなど)、ミシュラン・パイロットスポーツ4(205/50R17)+専用アルミホイール(7J)の組み合わせ。EPS制御やシャシー制御も専用となる。
フットワークははっきり進化した。旧型の走りは「マイルドなノーマルをチューニングでカバー」だったが、オーラ・ニスモはベース車の飛躍的進化で、「ニスモ=スポーツ」を明確に意識した味付けになっている。
ハンドリングは「痛快なのに冷静」と言った印象だ。標準オーラよりも姿勢変化を抑えたセッティングで、リアの接地感の高さが生む安心感とフロントのノーズの入りのバランスが絶妙。セオリー通りに走らせている限りFFながらアンダーステアは最小限。舵角の少なさはeパワー4WD並み。これは4本のタイヤを効果的に使いながら旋回している証拠である。
軽快感も際立っている。車両重量はベース車とほぼ同等にも関わらず、コーナリング時は「バッテリーを外した?」と錯覚してしまうくらいの気持ちのいいクルマの動きと、まるでワイドトレッド化したかのような安定感が印象的。今回、試乗コース中にパイロンスラロームが用意されていた。ノーマルは切り返しの際に「ヨッコラショ」と上屋の重さを感じたが、オーラ・ニスモは別物。まるで上屋が軽くなったかのような低重心感があり、結果的に無駄な動きが少なくリズムよく走れた。
オーラ・ニスモの素晴らしい走りは、電子制御デバイスなどの「飛び道具」ではなくすべてシャシーチューニングの「技」で実現している。ちなみに評価はR35 GT-Rの開発ドライバーも務めた神山幸雄氏が担当した。
快適性もハイレベル。いなしの効いた足の動きによるバネ下のスッキリ感と、空気の力(=エアロ)で車体の動きを抑えた事によるバネ上のフラット感が実感できる。「角が取れた優しい硬さ」という印象だ。足回りは標準オーラよりも引き締められ、ストローク感も抑えられているが、スポーツモデルとして見ると「乗り心地、いいでしょ」と言える絶妙な味付けである。これならファミリーカーとして使っても苦情は最小限だろう。
価格は286万9900円。旧型ニスモS比で約20万円高に収めた。「ノートは割高」と言われる中で戦略的なプライスである。もちろん、レカロシートやナビ+プロパイロットなどをプラスするとそれなりの価格になってしまうが、高い実力を知ると「指名買い」したくなる。オーラ・ニスモは強い魅力を放っている。
グレード=NISMO
価格=286万9900円
全長×全幅×全高=4125×1735×1505mm
ホイールベース=2580mm
フロントオーバーハング=860mm
リアオーバーハング=680mm
トレッド=1510×1510mm
最低地上高=115mm
重心高=523mm
前後重量配分=前:63.9/後:36.1
車重 =1270kg
エンジン=1198cc直3 DOHC12V(レギュラー仕様)
最高出力=60kW(82ps)/6000rpm
最大トルク=103Nm(10.5kgm)/3600~5200 rpm
モーター=交流同期電動機(EM47型)
最高出力=100kW (136ps)/3183~8500rpm
最大トルク=300Nm(30.6kgm)/0~3183rpm
WLTCモード燃費=23.3km/リッター(燃料タンク容量36リッター)
(市街地/郊外/高速道路=22.5/25.3/22.4km/リッター)
サスペンション=前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ドラム
タイヤ&ホイール=205/50R17(ミシュラン)+7Jアルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.2m
●主な燃費改善対策:ハイブリッド/アイドリングストップ/可変バルブタイミング/ミラーサイクル/電動パワーステアリング
●主要装備:NISMO専用サスペンション/前後専用LEDフォグランプ/専用フロントグリル+前後バンパー+サイドシルプトテクター+ルーフスポイラー/ミシュランPS4タイヤ&17インチアルミ/専用シート地/本革&アルカンターラ巻きステアリング/レッドシートベルト/インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)/インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)/BSW(後側方車両検知警報)/ヒルスタートアシスト/インテリジェントエマージェンシーブレーキ/標識検知機能(侵入禁止、最高速度、一時停止)/車線逸脱警報/ふらつき警報/踏み間違い衝突防止アシスト/FRソナー/インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)/IRカット&スーパーUVカット断熱グリーンガラス/プライバシーガラス(リア3面)/アダプティブLEDヘッドライト/インテリジェントオートライト/電制シフト/プッシュパワースターター/e-POWERモードスイッチ/EVモード/インテリジェントキー/オートAC/6対4分割リアシート/アドバンスドドライブアシストディスプレイ(12.3㌅)/イモビライザー/前席エアバッグ/運転席ニーエアバッグ/前席サイドエアバッグ&カーテンエアバッグ
●メーカーop:レカロ製スポーツシート39万6000円/フードデカール5万5000円/寒冷地仕様5万7200円/ニッサンコネクトナビパッケージ+プロパイロット34万9800円
●ボディカラー:ピュアホワイトパール&スーパーブラック2トーン(7万1500円)/ブリリアンチシルバー&スーパーブラック2トーン(5万5000円)/ダークメタルグレー&スーパーブラック2トーン(5万5000円/)ガーネットレッド&スーパーブラック2トーン(8万2500円)/スーパーブラック