ホンダは2021年8月30日、スーパースポーツの2代目NSXの最終モデル「NSX Type S」を発表し、9月2日よりNSX PERFORMANCE DEALERにおいて購入申し込みの受付を開始した。販売台数は全世界で350台を予定し、日本では2022年7月に30台限定で発売。車両価格は2794万円に設定している。
2代目NSXは2022年12月に生産を終了すると公表しており、今回発表されたNSX Type Sはその最終バージョンで、かつこれまでのNSXを超えるパフォーマンスとデザインを追求した集大成モデルに位置する。開発指針としては、加速性能やコーナリング性能、そして空力・冷却性能などを徹底的に突き詰め、「ドライバーとクルマとの一体感」と「操る喜び」の提供を目指し、合わせて機能的進化を実現する新デザインを随所に採用した。
まずエクステリアは、「パフォーマンス・デザイン」をコンセプトに、NSX Type Sが目指す高いパフォーマンスを実現させるための機能と、存在感のあるデザインを高次元で融合させる。前後バンパーには新タイプを採用し、エアロダイナミクス性能の大幅な向上を追求。また、空力と冷却を両立させたトータル・エアフロー・マネジメントのさらなる向上を目指し、デザイナーとレース経験のある技術者が最先端のシミュレーションや風洞実験、走行試験を何度も重ねて作り上げた。具体的には、フロア下への整流を考慮したカーボンファイバーフロントスポイラーと、空力特性を考慮したインテーク形状により、ひと目見てType Sとわかる存在感を創出。ヘッドライトにはブラックハウジングを施したジュエルアイLEDタイプを組み込む。一方、リア部はよりワイドスタンスを強調し、レーシングマシンからインスパイアされた迫力の大型リアディフューザーなどによって、圧倒的な走りを予感させる後ろ姿を具現化。ボディサイドには、“Type S”ロゴを貼付した。
ボディカラーはホンダ初のマットカラーとなるカーボンマットグレー・メタリックや新色のロングビーチブルー・パールのほか、バレンシアレッド・パール/ヌーベルブルー・パール/サーマルオレンジ・パール/インディイエロー・パールⅡ/カジノホワイト・パール/130Rホワイト/ベルリナブラック/クルバレッドという、スーパースポーツとしての魅力を高める全10色をラインアップしている。
内包するインテリアは、Type Sとしての存在感を主張する機能的で上質なパフォーマンス・コクピットに仕立てたことが訴求点だ。インストルメントパネルの中央には、強固な骨格を思わせるガーニッシュデザインを採用。羽根のような軽さを追求したエクステリアを支える強固なコクピットをイメージする。合わせて、インストルメントパネル内部にアルミ押し出し材のビームを配置し、実際にコクピット強度を高めるなど、目に見えない部分の軽量化と作り込みにもこだわった。また、グローブボックスやシートへの精緻な刺繍ロゴの配備や、“Type S”のグレード名と“000/350”のシリアルナンバー、“PRECISION CRAFTED BY PERFORMANCE MANUFACTURING CENTER”の生産工場(米国)ロゴを刻んだ専用プレートなどによってType Sの特別感を演出する。カラーリングとしては、エボニー/レッド/オーキッドの3タイプを設定。シート表皮はエボニーとレッドにセミアニリンレザー×アルカンターラとセミアニリンフルレザーを、オーキッドにセミアニリンレザー×アルカンターラを採用。ルーフライニングはアルカンターラで仕上げた。各パーツのデザインも注目で、ステアリングホイールにはインナーフレームにマグネシウム材を用いた本革巻きタイプを、メーターには視認性と表現の自由度に優れたTFTタイプを採用。また、メーターはインテグレーテッド・ダイナミクス・システムのモード(SPORTモード/SPORT+モード/TRACKモード/QUIETモード)に応じて表示を変化させ、ダイナミクス特性を視覚的にイメージできるようにアレンジする。Type Sキー2個付のHondaスマートキーシステムやHondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器(リアワイドカメラ付)も標準で装備した。
パフォーマンス面に関しては、卓越した動的性能を持ちながらも、「誰もが快適に操ることができる人間中心のスーパースポーツ」という初代モデルからのコンセプトを継承しつつ、2代目NSXのダイナミクス性能をさらに引き上げることで、フラッグシップスーパースポーツとしての至極の走りを徹底追求する。
パワートレインはホンダ独自の電動化技術である3モーターハイブリッドシステム“SPORT HYBRID SH-AWD(Super Handling-All Wheel Drive)”の3492cc・V型6気筒DOHC24Vツインターボエンジン+3モーター(前27kW×2/後35kW)+リチウムイオン電池+9速デュアルクラッチトランスミッションを採用する。エンジンは燃焼効率の向上や高耐熱材ターボの採用による過給圧アップ、冷却性能の向上などを実施し、パワー&トルクは従来の507ps/56.1kg・mから529ps/6500~6850rpm、61.2kg・m/2300~6000rpmへと向上。また、IPU(インテリジェントパワーユニット)のバッテリー出力と使用可能容量を拡大し、システム全体の出力・トルクも449kW(610ps)/667Nm(68.0kg・m)へと引き上げた。さらに、運転時の高揚感やドライバーとクルマとの一体感をいっそう高めるために、エンジンサウンドのチューニングや、減速時などで瞬時に適切なギアにシフトダウンできるパドルホールド・ダウンシフトをホンダ車として初採用している。
足回りについては、グリップ性能を高めた前245/35ZR19 93Y/後305/30ZR20 103Yサイズの専用ピレリP ZEROタイヤを採用するとともに、新デザインの専用鍛造アルミホイールを組み込んで、ワイドトレッド化によるサーキット走行時の限界性能とコントロール性をさらに向上。また、走行シーンに応じて最適な4つの走行モードが選択可能なインテグレーテッド・ダイナミクス・システムをセッティング変更し、Type S専用にアクティブ・ダンパー・システムおよびEPS(電動パワーステアリング)の各制御や駆動配分制御の見直しを図る。QUIETモードにおいては、EVドライブの加速性能向上とEV走行領域の拡大を実施。SPORT/SPORT+モードでは、全輪の駆動制御や姿勢制御を最適化することでコーナーのターンインから立ち上がりまでドライバーのイメージに限りなく忠実なライントレース性や、加速時の高いレスポンス性を実現する。そしてTRACKモードでは、サーキットでのハイパフォーマンス走行における高いコントロール性や、エンジンサウンドの一体感を向上させるなど、すべてのシーンにおいてType Sならではの「操る喜び」を具現化した。