トヨタ・スープラRZ 価格:8SAT 731万3000円 試乗記
スープラは、GRブランドのオリジナルモデル第一弾として復活した。BMWとの共同開発には今も賛否があると聞く。自動車産業はビジネスであり収益性はスポーツカーでも無視できない。トヨタは「スポーツカーを持続的に提供する」というビジョンを掲げている。その目的に対してBMWと組むことが最適解だと判断したのだ。その決断をボクは高く評価している。
エクステリアは筋肉質なフォルム。近未来を感じさせるだけでなく、先代(A80系)や往年のトヨタ2000GTのイメージを上手にオマージュした造形である。インテリアは上下に薄いインパネと幅の広いコンソールがスポーツカー空間を構築。スイッチ類にBMWテーストが残るが、操作系の多くはスープラ専用アイテムでまとめている。
エンジンは直列6気筒の3ℓターボと直列4気筒の2ℓターボ(出力違いで2タイプ)、トランスミッションは全車8速ATのみの設定。プラットフォームはアルミニウム/スチールの骨格構造。ボディ剛性はカーボンモノコックのレクサスLFAを上回る。サスペンションはフロントがダブルジョイントストラット、リアはマルチリンク式で、一部グレードに電子制御ダンパーやアクティブデファレンシャルが組み込まれる。
スープラも86と同じように「スポーツカーは進化が大切」を実践している。2019年のデビューから僅か1年(2021年モデル)でメカニズムには大きくメスが入った。
RZの3ℓエンジンは直噴インジェクターの噴射圧アップやターボ、エキゾーストマニホールド、圧縮比の変更により最高出力が340psから387psに向上。初期モデルより回すほどにパンチが増す特性になった。パフォーマンスだけでなくスポーツエンジンらしいメリハリや盛り上がりなど官能性能もアップしている。
フットワーク面はボディフロント回りの剛性アップとサスやアクティブデファレンシャルのセットアップを変更した。アップデート効果は絶大である。クイックすぎてシビアだったステアリング系は薄皮一枚プラスされたような穏やかさが生まれ、結果として直進安定性が向上。クルマの挙動変化を活かした自然で連続性のある動きによりハンドリングも初期型のピーキーさが影を潜めた。
最新モデルの走りは、全体的に緊張していた筋肉がほぐれ、強さの中にしなやかさがプラスされた印象。スポーツカーとしてのポテンシャルはもちろんGT性能も引き上げられた。まさに「成長」という言葉がふさわしい。前回の改良からそろそろ1年が経過する。次の一手が楽しみである。
グレード=RZ
価格=8SAT 731万3000円
全長×全幅×全高=4380×1865×1290mm
ホイールベース=2470mm
トレッド=前:1595/後:1590
車重=1530kg
エンジン=2997cc直6 DOHC24Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=285kW(387ps)/5800rpm
最大トルク=500Nm(51.0kgm)/1800~5000rpm
WLTCモード燃費=12.0km/リッター(燃料タンク容量52リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=8.1/12.6/14.6km/リッター)
サスペンション=前:ストラット/後:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=前:255/35ZR19/後:275/35ZR19+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最小回転半径=5.2m
●主な燃費改善対策:直噴エンジン/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング/アイドリングストップ
●主要装備:AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)/前ブレンボ製17inアルミモノブロック4ポッド対向キャリパー/アクティブデファレンシャル/直径100mmヘアライン仕上げデュアルテールパイプ/19インチ鍛造アルミ/6灯式LEDヘッドライト/マットブラック塗装ドアミラー/プリクラッシュセーフティ/ステアリング制御付きレーンディパーチャーアラート/ブラインドスポットモニター/アダプティブハイビーム/レーダークルーズコントロール/クリアランスソナー/リアクロストラフィックアラート/本革巻きステアリング/パドルシフト/スポーツペダル/スポーツモード/ローンチコントロール/8.8インチTFTメーター/ヘッドアップディスプレイ/アルカンターラ&本革スポーツシート/シート電動調節機構/シートヒーター/カーボンオーナメントパネル/アルミドアスカッフプレート/トヨタ・スープラコネクトHDDナビゲーションシステム/JBLプレミアムサウンドシステム(12スピーカー)/DCM(専用通信機)/左右独立温度調節式オートAC
●ボディカラー:ホワイトメタリック
※価格はすべて消費税込み