アウディが次世代EVコンセプト「スフィア」シリーズの第4弾となる「アクティブスフィア コンセプト」を発表。新しい電動クロスオーバークーペは卓越した優雅さとオフロード性能を備えたうえで、ボディ後部がピックアップスタイルに変身
独アウディは2023年1月26日(現地時間)、次世代電動クロスオーバークーペのコンセプトモデル「アクティブスフィア コンセプト(activesphere concept)」を発表した。
アウディは次世代の電動プレミアムモビリティに対するビジョンとして、コンセプトカーの「スフィア(sphere)」シリーズを展開。2021年にはGTロードスターの「スカイスフィア コンセプト(skysphere concept)」とプレミアムセダンの「グランドスフィア コンセプト(grandsphere concept)」、2022年には都市型マルチパーパスビークルの「アーバンスフィア コンセプト(urbansphere concept)」という3モデルを披露しており、今回発表したアクティブスフィアはシリーズの第4弾で、かつシリーズの集大成となる1台に位置している。
アクティブスフィアは究極の自由を提供する、意欲的なアウトドア愛好家に最適なパートナーとして開発される。デザインは米国有数の海岸道路であるパシフィックコーストハイウェイのすぐ近くのマリブに居を構えるアウディデザインスタジオが担当。基本スタイルはクロスオーバータイプのクーペボディで構成し、凸面と凹面がスムーズにつながってソフトな陰影をもたらすアピアランスや、大型のフランク(フロントフード)を通して見通しの良い前方視界を乗員に提供する透明ガラス製のシングルフレームグリル、同じく透明ガラスを配して開放感を演出したドア下部およびテールゲート、アウディの4リングスロゴを反映したスリムな超微細マイクロLEDヘッドライト、流麗なラインを描くルーフ、オフロードイメージを高めるアンダーガード、22インチ大径ホイール+285/55R22タイヤなどを採用して、エレガントかつスポーティなSUVクーペスタイルを具現化する。フロントとリア、サイドエリアのドア下部にアークティックティール(Arctic Teal)と呼ぶダークカラーの高光沢塗装仕上げを配して、フロアアセンブリーとキャビンを視覚的に並列に見せるマットな演出を施したことも特徴だ。また、ホイールにはオフロード走行時で冷却性能を最適化するために開き、オンロード走行時では空力性能を最適化するために閉じる可動部を組み込み、さらに左右のフロントドアに設置したスタイリッシュなリアビューカメラは空気抵抗を最小限に抑えるようデザインして、空力性能を最大限に高めた。ボディサイズは全長4980×全幅2070×全高1600mm、ホイールベース2970mmに設定。合わせて前後オーバーハングを短縮し、さらに最低地上高は208mmを基本にオフロード走行時で40mm高く、オンロード走行時で40mm低くセットできる可変システムを組み込んで、オフロード走行時のアプローチアングルは18.9度、ディパーチャーアングルは28.1度を確保した。
リアセクションに可変アーキテクチャーを採用したことも、アクティブスフィア コンセプトの訴求点。透明なリアウィンドウスライドをルーフとほぼフラットな状態にスライドさせることができ、同時にリア下部の垂直部分が手前、水平に展開し、電動自転車用のブラケットを備えたアクティブバックと称する荷台が出現する。また、リアシート後方のラゲッジフロアから電動バルクヘッドが展開して、キャビンを雨や風から保護。さらにルーフ構造の中央には、定位置では完全にルーフとフラットな状態になるスキーラックを装備した。
インテリアに関しては、機能的かつミニマリストにデザインしたことが特徴で、垂直および水平基調のパネルが直角に交わった空間アーキテクチャーを採用。また、水平方向にはコントラストカラーを配し、シート面とドア、フロントパネルを温かみのあるラバレッドカラーで統一し、ダークカラーのエクステリアと新鮮なコントラストを演出する。セントラルゾーンの上下には、ダーク系のカラー(ブラック、アンスラサイト、ダークグレー)も導入。Bピラーを省いたうえで前後ヒンジ式のドアを組み込んで、広いドア開口部を実現したこともトピックだ。
自動運転モードとドライバーが自ら運転するモードでコクピットのアレンジを大きく差異化したことも見逃せない。自動運転モードで走行しているときは、ダッシュボード、ステアリングホイール、ペダル類を見えない位置に格納。前席では、ドライバーの前にフロントエンドまで広がる開放的なスペースが出現する。一方でドライバーが自ら運転する場合は、ダッシュボードとステアリングホイールがフロントウィンドウ下から展開。ドライバーは、人間工学に基づいた理想的なドライビングポジションに調整することができる。また、ドアに設置したMMIタッチレスコントロールによって、ウィンドウの開閉やシートの調整などを目と手で操作できるようアレンジした。
新しい操作システムとして、物理的現実とデジタル領域を組み合わせたAudi dimensionsを採用した点もトピック。システムの中心となるのは革新的な複合現実ヘッドセットで、ユーザーはこのヘッドセットを装着すると、現実世界にバーチャルコンテンツを重ねた3次元画像表示のAR(拡張現実)を前方の視界空間に見ることができる。コンテンツにはリアルタイムに切り替わるスピードメーターなどの計器類や、クライメートコントロールの操作、高解像度の3D地形グラフィックスによるナビゲーションなどを設定。バーチャルディスプレイをセンターコンソールに投影して、ウェブコンテンツを表示させることも可能だ。さらに、車外からでもヘッドセットユーザーと車両間との接続を可能とし、パソコンやスマートフォンを介することなくナビゲーションルートや車両のメンテナンス情報などを準備することができるよう設定している。
キャビン空間自体は4座のセパレートシートを組み込むとともに、長いセンターコンソールを高めの位置に設定し、合わせてシートシェル内側の上端をセンターコンソールと平行に配してアームレストとして機能させて、リラックスできる居住性を確保する。また、シート自体は座面、背もたれ、ショルダー部分を3つの別個の円周シェルとしてデザインし、機能的な自動車用シートとエレガントなラウンジチェアのような雰囲気を融合させた。
基本骨格には、アウディの電気自動車用プラットフォームであるプレミアム プラット フォームエレクトリック(PPE)を採用。前後のアクスル間には総電力量約100kWhのバッテリーモジュールを搭載し、前後のアクスルに配した電気モーターはシステム最高出力325kWと同最大トルク720Nmを発生する。また、充電には800Vテクノロジーを導入。10分ほどで300km以上走行するためのエネルギーを充電することが可能で、また25分未満でバッテリー残量5%から80%まで回復させることができる。一充電走行距離は600km超を実現した。一方でシャシー面では、前後5リンク式で構成するとともにアダプティブダンパーを組み込んだ、先進のアウディアダプティブエアサスペンションを採用。前述のARやデジタルシステムとともに、魅力あふれる最高の長距離ツーリングおよびアウトドア体験を提供するという。