クラウン・クロスオーバーRSアドバンスト 価格/6SAT 640万円 試乗記
登場以来、16代目クラウンは何かと話題の中心になっている。近ごろ、街中で見かけるようになった新型の「本命」ともいえるのがRSだ。デュアルブーストハイブリッドを搭載したモデルである。
デュアルブーストハイブリッドはトヨタHVの新たな選択肢。エンジンが主でモーターがアシストを行う「パラレル式」だ。フロントに2.4リッターターボ(272ps/460Nm)とモーター(82.9ps/292Nm)、そして6速AT(トルコンの代わりに湿式クラッチを採用)などを搭載。ネーミングのとおり「ターボとモーターで過給」を行う。リアは独立したモーターで駆動するeAxle(80.2ps/169Nm)。駆動方式は、電動4WDの「E-FOURアドバンス」になる。
パフォーマンスは鮮烈だ。走り始めは電動車感が強め。バッテリー残量が多い時はEV走行を積極的に行う。そのままアクセルをグーっと踏み込むと、THS2にはなかったアクセルとエンジンの直結感とターボの過給遅れのない応答性の高さ、そして高回転までストレスなく回るスッキリとしたフィーリングに圧倒される。ハイブリッドというよりも「よくできた内燃機関」と呼びたくなる気持ちよさだ。
やや残念なのは「濁音」の多いエンジン音。音量的にはそれほどではないが、静粛性の高さから相対的に目立つ。何らかの減衰機構で音を吸収するか、ASCを活用した音質改善などを期待する。
フットワークは新次元。サスペンションのセットアップ(新摺動構造採用のAVS)とアルミホイール(剛性に加え、しなやかさを持たせた構造)、リアモーターの使い方(常時AWD)はRS独自。ステアリング系は初期応答のよさ、滑らかな操舵感、直結感の高さなど新型に共通の美点を備えたうえで、操舵力を若干重めに設定している。
ハンドリングは駆動方式の概念が変わる。コーナー進入時は4WDの安定感を持ちながら操舵感はレクサス以上にスッキリ。コーナリング中はまるで重量配分が整った縦置きFRのような感覚が味わえる。リアに荷重をしっかりと乗せながら曲がる旋回姿勢は通常のFRよりもFRらしいと感じたほど。コーナー脱出時にアクセルをグッと踏み込んだときも、FRのようなリアタイヤの蹴り出しを実感する。しかも4WDの安定感を伴ったままなのが素晴らしい。トラクション性能は秀逸。そしてハンドリングには、操る楽しさがある。
乗り心地は通常モデルよりも若干引き締められた印象。しかしAVSの効果と相まって入力の優しさが感じられ乗員へのショックは小さい。体感的にはむしろ快適に感じた。
筆者は先代の高い基本性能を活かした精度の高いハンドリングを高く評価していた。16代目の真打、RSは「電気モーター」と「制御」を上手に活用したことで、それに負けない走りを実現している。パワートレーン/フットワークともにクロスオーバーというよりも新時代のスポーティセダンと呼びたい爽快なモデルである。
グレード=RSアドバンスト
価格=6SAT 640万円
全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース=2850mm
車重=1920kg
エンジン=2.4リッター直4DOHC16Vターボ
エンジン最高出力=200kW(272ps)
エンジン最大トルク=460Nm(46.9kgm)
モーター最高出力=フロント61kW(82.9ps)/リア59kW(80.2ps)
モーター最大トルク=フロント292Nm(29.8kgm)/リア169Nm(17.2kgm)
WLTCモード燃費=15.7km/リッター
駆動方式=4WD