メルセデス・ベンツC200アバンギャルド 価格:9SATC 654万円 試乗記
190Eをルーツに持つCクラスは、約40年間にわたってセグメントリーダーに君臨してきた。とくに従来モデルは好評を博し、日本でも販売台数10万台を達成した。SUV全盛の時代にあって憧れのセダン&ワゴンだったのだ。Cクラスとしては5世代目となる新型(W206型)は、高い人気を背景に従来イメージを継承。堅実かつ現代的なモデルチェンジを受けてデビューした。
昨今の内燃機関を積んだロングセラーモデルが世代交代する際の要点は、電動化とデジタル化に集約される。新型Cクラスの場合、パワーユニットをマイルドハイブリッド(ISG)もしくはPHEVとすることで全グレードの電動化を達成。中でもPHEV(=C350e)は、EVとして最大100kmほど走る電動車。「これからの時代の最適解」となり得るモデルとして、発表直後から大いに話題をさらった。
デジタル装備関連では、先行デビューしたフラッグシップのSクラスから多くを受け継いでいる。最新の運転支援システムはもちろん、片側130万画素のLEDヘッドライトやARナビゲーション、リアアクスルステアリングなどが、その代表例だ。
内外装の基本デザインもSクラス譲り。最新メルセデス共通造形でまとめられた。新型は190E以来、最もSクラスに似たCクラスになった。デザインに加えて内容もSクラス譲りであるという点こそがW206型の凄みだ。
試乗車はC200アバンギャルドのAMGライン&リアアクスルステアリング装着車。パワーユニットは、新開発1.5リッター直4ターボ(M254型・204ps/300Nm)に15kW電気モーターを加えた48VのISGシステムを積む。ボディサイズは全長×全幅×全高4785×1820×1435mm。旧型と比べると全長は80mm長く、全幅は10mmワイド、全高は5mm高い。かつて「コンパクトメルセデス」と呼ばれたCクラスも立派になったものである。ただし、サイズは大きくなっても取り回し性が悪化していないのがメルセデス流。リアアクスルステアリング車の最小回転半径は5m。非装着車でも5.2mと旧型比で小回りが効く。車重こそやや増加しているが、より使い勝手がよくなったのは評価ポイントだ。
走り出してすぐに力強さを実感した。旧型に比べて明らかに出足が鋭く、その後の常用域におけるトルクの厚みがはっきりと頼もしい。中間加速も鋭さが増しており、非常に扱いやすい。エンジンで20ps/20Nm、モーターで5kWパワフルになった効果は明白。比較のため旧型に乗り換えて、そのパフォーマンス差に驚いたほどだ。
新型は、モーターをエンジンとミッションとの間に組み込んでいる。これにより一段と効率的にアシストできるようになった。しかもエンジン再始動時の振動は皆無。回生ブレーキやコースティングのスムーズさも見事だ。
似合わないとは思いつつ、峠道を意識的に攻め込んでみた。スポーツ性が売り物のセダンでないにもかかわらず、ハンドリングは正確。足回りもよく動いており、安心して踏み込んでいける。懐が深く、簡単には破綻しない。高水準のシャシー性能は全域における安心感の源になっている。
不満は常用域のブレーキフィール。軽く踏んで減速したい場合に思ったほど制動しないことがあった。制動能力自体は高いが、コツをつかむのがちょっと難しい。
高速走行時の直進安定性は予想どおり素晴らしい。制御の細かいリアステアがよく効いている。安定感、安心感はほとんどEクラスレベル。ボディが少し大きくなった影響もあって、新型CクラスのライバルはひょっとしてEクラスではないか、と思ったほどだ。
新型ではっきりと違うのはインテリアのデジタル化だ。デザインも機能もすべてがSクラスと同様のメルセデス最新技術でまとめられている。つまり世界トップクラスの新しさと機能が味わえる。
新型C200の完成度は高い。だが、ドライブフィールそのものは熟成の進んだ旧型最後期モデルもなかなか優秀だった。それを思うと、「いまが乗り換えるタイミングで、車種はCクラスに決めている」というユーザーでない限り、あわててディーラーへ駆け込む必要はないかもしれない。トータルに判断して、新型Cクラスの本命は、PHEVのC350eだと思う。価格も納車時期も未定だが、待つだけの価値はある。C350eを見てから、どのCクラスにするかを決めるのも悪くない。
グレード=C200アバンギャルド AMGライン装着車
価格=9SATC 654万円
全長×全幅×全高=4785×1820×1435mm
ホイールベース=2865mm
トレッド=フロント:1590/リア:1575mm
車重=1700kg
エンジン=1494cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=150kW(204ps)/5800〜6100rpm
最大トルク=300Nm(30.6kgm)/1800〜4000rpm
モーター最高出力=15kW
モーター最大トルク=208Nm
WLTCモード燃費=14.5km/リッター(燃料タンク容量66リッター)
(市街地/郊外/高速道路=10.2/15.0/17.1km/リッター)
サスペンション=フロント:4リンク/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:225/45R18/リア:245/40R18+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=5名
最小回転半径=5.0m(リアアクスルステアリング装着車)
主な燃費改善対策=ハイブリッド/アイドリングストップ/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング
主要装備=レーダーセーフティパッケージ(アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック+アクティブブレーキアシスト+アクティブブラインドスポットアシスト+アクティブレーンキーピングアシスト+アクティブステアリングアシスト+トラフィックサインアシストなど)/ドライブアウェイアシスト/リアクロストラフィックアラート/クロスウインドアシスト/アテンションアシスト/360度カメラシステム/パークトロニック/デジタルライト(ウルトラハイビーム付き)/アダプティブハイビームアシスト・プラス/アジリティコントロール・サスペンション/プライバシーガラス/レザーツインシート/前席メモリー付きパワーシート/分割可倒式リアシート/マルチファンクションステアリング(パドルシフト付き)/電動チルト&テレスコピック機構/ダイナミックセレクト/フットトランクオープナー/前席左右独立温度調節式クライメートコントロール/MBUX(11.9インチメディアディスプレイ+12.3インチコクピットディスプレイ+自然対話式音声認識機能+HDDナビゲーションなど)+ETC2.0車載器
装着メーカーop=ベーシックパッケージ(ヘッドアップディスプレイ+MBUX・ARナビゲーション)15万4000円/AMGライン(スターパターングリル+AMGスタイリングパッケージ+18インチAMG5ツインスポークアルミ+ロゴ付きブレーキキャリパー+フロント・ドリルドベンチレーテッドディスク+スポーツサスペンション+AMGスポーツステアリング+レザーARTICO/ダイナミカシート&レザーARTICOダッシュボード+メタルウィーブインテリアトリム+ステンレス製ペダル+スポーツモード)32万6000円/リア・アクスル・ステアリング14万5000円
ボディカラー=モハーベシルバーメタリック(op9万4000円)
※価格はすべて消費税込み ※標準車はフロント:225/50R17/リア:225/50R17+アルミ