初乗りは仙台ハイランドレースウェイだった。エンジンパフォーマンスは暴力的なほど、それをクルマ側の進化した制御で上手く乗せられている!と感じた。
マニアは現行型をR35と呼ぶ。海外ではGT-Rを「ゴジラ」愛称で迎えている。GT-Rの根幹は、まさに暴れるほどパワフルでトルクフルなエンジンだ。世界を相手にする第3世代は、一気に480ps/588Nm(初期型)にまでアップした! 2007年当時、それは世界と十分に戦えた。当時、このエンジンスペックを聞いて緊張した記憶が蘇る。有り余る出力は進化した4WDシステムが4輪に効率よく制御、配分。圧倒的な動力性能と世界最高水準のハンドリングが乗員を超高速の世界に誘う。
自動車開発を行うテストコースの聖地、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースでR35も鍛えられた。ここは丘陵地帯の地形そのままに道路が造られた結果、上下左右に捻れ平らな部分がほとんどない。最後の3kmに及ぶストレートも路面は荒れている。ハイパフォーマンスカーでは常に路面からの大きな入力で縦方向に激しく揺さぶられる。R35はストレートエンドで300km/hに達する。路面にタイヤを確実に接地させるサスペンション、それを支える強靭なボディ。そして超高速での空力の整流と路面に押さえつけるダウンフォースの高バランスが光る。
速度無制限のアウトバーンでの振る舞いも圧倒的だ。追い越しレーンを4WDの威力とともに、まさに300km㎞/hレベルで乗員が普通に会話できる安定性で突き進む。安心してアクセルを踏み込める懐の深さはまさに世界のトップクラスである。R35は超高速コーナリングでもドライバーの操作に正確に忠実に姿勢を変える。軽快ではないが鈍重にもならず、ステアリング操作どおりに安定して曲がる。まさに超高速移動のためのミラクルクーペ。GT-Rはエンジンパフォーマンスと目的地までの到達時間の速さを得るためなら、お金に糸目をつけないヒト達のために生まれたともいえる逸材である。
日本初といっていい300km/hカーをどう乗りこなすか。日本の速度規制では一般道は適当ではない。能力を引き出す最善の方法は、サーキットしかない。ただしサーキットだからといって闇雲にアクセルを踏み続けるだけでは曲がれない。R35デビュー当初は、中高速域の安定性を重視したため、低中速コーナーでは弱アンダーステア傾向を示した。その性格は後に改善され、現在ではクルマとドライバーが対話しながら乗れる自然な関係性に変化している。
GT-Rの強みは駆動力、有り余るパワーとトルクを路面に確実に伝達する技である。なのでコーナーに高速のまま進入し曲がるより、立ち上がり加速重視がベター。確実に減速し、ステアリングをいかに早く直進状態にできるかが重要になる。これはR32で動力をいかに効率よく伝えるか、を習得したベテランドライバーゆえの技術かもしれない。だがR35にも通用すると考えている。