いすゞが第7世代となる新型エルフを発表。「選べる自由、それが“運ぶ”の未来」をコンセプトに、デザイン、ホスピタリティ、エコノミー、セーフティ、コネクテッド、ラインアップの6つのポイントを中心に進化。ブランド初の量産バッテリーEVとなる「エルフEV」も設定
いすゞ自動車は2023年3月7日、フルモデルチェンジした小型トラックの「エルフ」シリーズを発表した。
約17年ぶりの全面改良で第7世代に移行するエルフは、「選べる自由、それが“運ぶ”の未来」をコンセプトに、デザイン、ホスピタリティ、エコノミー、セーフティ、コネクテッド、ラインアップの6つのポイントを中心に大幅な進化を果たす。また、ブランド初の量産バッテリーEVとなる「エルフEV」を新規に設定した。キャブタイプとしては、標準キャブ、ハイキャブ、ワイドキャブをラインアップ。グレード展開は標準仕様のST、充実装備のSG、最上級モデルのSEカスタムで構成する。従来と同様、バンやダンプも用意した。
デザイン面では、「PLEASURE to CARRY」をコンセプトに内外装を一新。先進性とタフさ、機能性と華やかさを高い次元で両立し、「運ぶ」を担うドライバーがトラックを使う楽しさを感じられるデザインを追求する。
エクステリアに関しては、商用車らしい堅牢さを表現しつつ、フロントフェイスで躍動感や先進性を表現。キャブデザインはスムースで力強い骨格を基調に、躍動的なフロントフェイスと先進機能を取り込んだ造形で仕立てる。具体的には、キャブ前面をユーザーユーティリティゾーン/ブランド表現ゾーン(いすゞの新ブランドアイデンティティであるWORLD CROSS FLOWを採用)/冷却開口&機能表現ゾーンと目的別にゾーン分けしたレイヤーゾーンドフェイスや、LED化したハイ&ロービームヘッドランプ(Bi-LED、ハイは可変配光型LEDも設定)/ターンランプ/フォグランプなどを配した。ボディ色はベーシックなアークホワイトのほか、ダークカーキメタリック(カスタム専用カラー)やフリントグレーメタリック(カスタム専用カラー)、パープリッシュブルー、ウィートランドイエロー、ダークブルー、ハイウェイオレンジ、マリンブルー、カーディナルレッド、トランスブルー、ウッドランドグリーン、ゼラニウムレッド、クイックシルバーメタリック、サンベルトグリーン、ポーラーホワイト、エボニーブラック、サハラベージュ、エーエルグレーといった多彩なカラーを設定している。
内包するインテリアは、徹底したドライバー目線の設計によって、乗る人や使う人への深い思いやりを具現化。日本を支える働くクルマに「ホスピタリティ」という新しい発想を取り入れるとともに、親しみやすさと軽快感を表現して、長く使う道具としてのタフさやロングライフで褪せないデザインを創出する。インテリアカラーにはドライバーの多様化を意識したニュートラルな色味や素材を採用し、一方で人が直接触れる部分をブラックで表現することで識別性を向上させ、合わせて傷のつきにくさに配慮した。装備面では、走行中の視線移動や操作を最小限にし、運転に必要な先進安全装置や車両コンディション情報を的確に伝える7インチメーターディスプレイや、便利機能エリア/先進安全装置スイッチ/トラック固有装置関連スイッチ/ランプ・ブザーおよび架装追加スイッチエリアという4つのエリアにゾーニングしたインパネスイッチ、走行中に操作頻度の高いスイッチをステアリングに配してステアリングを握ったままで安全に操作ができるステアリングスイッチなどを採用。さらにオプションとして、AM/FMラジオとMIMAMORIコントローラの機能を統合して操作性・視認性を向上させたタッチパネル搭載7インチセンターディスプレイを用意した。
居住性を高めたこともトピックで、より低反発なウレタン素材を採用して座り心地を向上させ、同時に表皮縫製やスライドピッチを変更した運転席シートを配備する。オプションとして、アームレストやシートヒーターも用意。シート表皮はトリコットスエードを標準で、ビニールシートやトリコットスエード+合成皮革(SEカスタム)をオプションで採用した。ステアリング・シート・ペダルの配置および形状をすべて見直してドライビングポジションを最適化し、合わせてシートを薄型化してヘッドクリアランスを拡大させた点も、コクピットの特徴である。乗降性の改善も行い、Aピラーが立ったボクシーなキャブ骨格により広いドア開口面積を実現したほか、ドア開度の最適化や上下からアクセス可能なセミグリップ式ドアハンドル(標準キャブ)およびグローブを着けたままでも握りやすいタテ型グリップ式ドアハンドル(ハイキャブ/ワイドキャブ)の設定、グリップの長さを延長したアシストグリップの装着、ドア施錠・解錠とエンジン始動を容易化するキーレスライドの設定などを実施した。装備面では小型トラックに求められる多彩なアイテムを採用し、収納スペースの拡大を図るなど日々の仕事に寄り添った使い勝手の良さを実現している。
エコノミーに関しては、内燃機関においてさらなるCO2削減を目指し、新型トランスミッションの開発およびその他の改良により、燃費性能の向上を追求する。パワーユニットとしては、メモリとセンサーを持つインジェクター「i-ART(自律噴射精度補償技術)」や、センサーと計算モデルからEGR量を制御してNOxを低減するモデルベースEGR (Exhaust Gas Recirculation)制御、オイル劣化を予測して交換時期の延長を図るオイル劣化モニタリング、流入する排気ガスの高温化を実現してスス詰まりや堆積を低減するDPDの近接配置などを採用した、最先端ディーゼルの4JZ1型2999cc直列4気筒DOHC16Vコモンレール式ディーゼルターボエンジンを搭載。仕様としては最高出力150ps/2800rpm、最大トルク38.2kg・m/1280~2800rpmを発生する4JZ1-TCSと、最高出力175ps/2860rpm、最大トルク43.8kg・m/1450~2860rpmを発生する4JZ1-TCHの2機種を用意した。一方でトランスミッションには、5速または6速MTのほか、AT免許で運転可能なAMT(自動変速式マニュアルトランスミッション)として新開発9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の「ISIM(アイシム、Isuzu Smooth Intelligent TransMission)」を設定する。ISIMは9速に多段化したことでエンジン回転数の上昇を抑え、低騒音化による運転疲労軽減を実現。また、クラッチを奇数段(1/3/5/7/9速)と偶数段(2/4/6/8速)で分担するデュアルクラッチ構造による素早いシフトチェンジで変速時のトルク抜けやシフトショックを低減し、トラックのイメージを塗り替えるドライブフィーリングを成し遂げた。燃費性能については、前述のパワートレインの改良に加えてキャブの空力改善や省燃費タイヤの採用拡大により、全車で2025年度燃費基準(JH25モード重量車燃費基準)を達成。なかでも2t積ISIM搭載車(ecostop付)は+15%達成を実現し、CO2削減に貢献している。
セーフティについては、先進安全装備およびドライバーをサポートする運転支援機能の充実化を精力的に実施する。システム面では、ステレオカメラの性能向上に加えて、近距離ミリ波レーダーおよびドライバーステータスモニターを追加し、プリクラッシュブレーキ(右左折時)や全車速車間クルーズ、レーンキープアシスト、ドライバーステータスモニター、ドライバー異常時対応システム、可変配光型LEDヘッドランプ、標識認識機能、標識連動型スピードリミッター、フロントブラインドスポットモニターという9つの安全支援機能を新規に設定する。また、安全支援機能は装着が義務化されている機能を中心に構成する「BASIC」を基に、都市内配送で有効な機能を加えた「STANDARD」、自動車専用道での走行時に有効かつ利便性の高い装置を含む「ADVANCE」、そして操舵制御まで行う「PREMIUM」という全4種のパックオプションを用意した。ほかにも、配送トラックに求められる安全性の向上として自動作動機能付き電動パーキングブレーキを標準装備。さらに、路上故障で多くを占めるタイヤトラブルへの対応としてタイヤの空気圧や温度をドライバーが確認監視できるタイヤ空気圧モニタリングシステムをオプションで設定した。
コネクテッドの面では、昨年10月にサービス提供を開始した商用車情報基盤「GATEX(ゲーテックス)」を利用した商用車テレマティクス「MIMAMORI」と、いすゞ独自の稼働コネクテッドサービスである高度純正整備「PREISM(プレイズム)」を採用。PREISMにおいてはスマホアプリの機能を拡張し、車両だけではなく、ドライバーとも“つながる”ことでユーザーの安心と安全な稼働を支援する。さらに、PREISMで用いているコネクテッド技術を活用した、架装物のモニタリングシステム(架装コネクテッド)に対応する新開発デバイスを2023年中に車両実装し、架装物の稼働も支えることでユーザーの車両(シャシー・架装)の安心と安全な稼働を幅広くサポートする予定だ。
ラインアップについては、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、世界中の多様なユーザーニーズに対応する電気自動車の「エルフEV」を新規に設定したことが訴求点だ。車種としては、標準キャブのGVW3.5t未満車からワイドキャブのGVW7.5t車まで幅広く展開。将来を見据えた開発手法のI-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)により刷新した、ディーゼル車と基本的に共通のプラットフォームに、新開発のモーターおよびインバーターと高電圧バッテリーを搭載して電動システムを構成する。また、バッテリーパックはコンパクトに設計したうえで20kWhの総電力量を確保し、車両や使い方に応じたモジュラー方式を採用して、2パック(40kWh)、3パック(60kWh)、5パック(100kWh)を設定した。さらに、専用の水冷式バッテリー温度管理システムを採用し、キーON時および充電中もバッテリー温度をきめ細かく管理(低温側はキーOFFでも監視)。この温度管理を行うことで安定した性能を発揮するとともに、劣化防止にも貢献する。一方で充電に関しては、普通充電と急速充電に対応。長いケーブルでなくても荷役中でも充電できるように、充電口は車両右側キャブ後方に配置する。専用の機器を通しての外部への電力供給も可能とした。
内包するインテリアは、ディーゼル車からの急な乗り換えでも違和感がないように、EV固有の操作を極力減らすよう設計する。ディーゼル車のタコメーター部にはバッテリー出力・回生量を示すパワーメーターを配置し、またメーターディスプレイにはEV走行に必要な情報、具体的には充電残量や航続可能距離、充電所要時間、平均電費などを表示。航続距離を延ばす目的で、バッテリー消費を抑制するECOモード(シフトレバー台座のECOスイッチを押すことで作動)や、電力消費に配慮したヒートポンプ式エアコン(空気中の熱を効果的に利用)とPTCヒーター(電熱線による発熱)の併用、意図しない不要な暖房稼動を抑制するヒーターのON/OFFスイッチ、減速時のタイヤの回転力でモーターを回してその運動エネルギーを電気として回収(充電)する回生ブレーキ、その回生ブレーキの強弱調整ができるステアリング左側コンビスイッチおよびメーターディスプレイなども採用した。EV向けにモニタリング内容を大幅に拡張し、充電計画と連携した高度な運行管理を可能とするコネクテッドサービスを設定したことも、エルフEVの特徴である。
なお、車両価格は東京地区で標準キャブ2WD/2トン積/標準ホイールベース/木製平ボディ/SGグレード/ADASパックプレミアム/4JZ1-TCS型エンジン+9速AMTで648万1200円に設定。また、今後はエルフEVの特装車向けシャシーとウォークスルーバンである「エルフEVアーバントランスポーター」を、さらに同社のD-MAXに積む4JJ3型2999cc直列4気筒DOHC16Vコモンレール式直噴ディーゼルターボエンジンを最適化して搭載した「エルフmio」とEVユニット搭載の「エルフmio EV」をラインアップに加えると予告している。
新型エルフは、“加速させよう、「運ぶ」の未来。”という企業メッセージを通じていすゞグループが考え描く未来について発表した「ISUZU World Premiere 2023」において初公開されたが、この場では本年夏ごろに発売予定の新型フォワードも披露された。
今回のフルモデルチェンジで第6世代に移行する中型トラックの新型フォワードは、高度化・複雑化する物流業界の課題に対応するため、内外装の全面刷新に加えて各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を実施する。エクステリアはダイナミックなキャブデザインに変更して、中型らしい車格を創出。一方でインテリアはドライバーホスピタリティによる利便性向上や先進的なキャブ空間を表現するとともに、黒基調のデザインで高級感を演出し、合わせて高機能シートを新規に展開して居住性を高めたという。