日産自動車は3月23日、「ブリコーラジュの発想によるプロトタイプセダン、コンテンポラリー・ライフスタイル・ビークル」を公開した。
ブリコラージュ(bricolage)はフランス語で、「日曜大工、家庭内れ修繕・修理、工作」といった意味である。現代のクルマは、開発コンセプトを効率的に具体化するためのアイデアと技術が求められるのに対し、コンテンポラリー・ライフスタイル・ビークルはスカイラインをベースに「こんな工夫を盛り込んだら、もっと便利になる」というアプローチから開発されたモデルといっていい。
「セダンで快適に「食べる」、「寝る」、「遊ぶ」ための多くの仕掛けを詰め込んだプロトタイプモデル」とメーカーは説明する。これで思い出すのは。1988年に発表された、日産セフィーロのキャッチコピー「くうねるあそぶ(=食う、寝る、遊ぶ)」である。
初代セフィーロは、人々の生活(食う、寝る、遊ぶ)を快適に演出するための理想のセダンとして開発された。スカイライン(R32)&ローレル(C33)とプラットフォームを共有した、4ドアスペシャルティ(室内空間が広い)という位置付け。2ドアスペシャルティとして大人気を誇っていたシルビア(S13)のセダンバージョンというキャラクターも持ち合わせていた。
コンテンポラリー・ライフスタイル・ビークルは、既存のスカイラインをベースに、サイドミラーゴミ箱、スライド式サイドテーブル、ステアリングホルダー(スマホやタブレット用)、サンバイザーテーブル、脱着式ディスプレイ(ステアリングホルダーに装着できる)、ボトルヒーター、AIセンシングカメラ、これっきりワンボタン、自動リクライニングシート、シートフラットスペーサー、ヘッドフラットスペーサー、折りたたみフットレスト、ブランケット収納、ムーンルーフビジョン、寝たままワンボタン、フルフラットベッド枕、フルフラットベッド(トランクスルーを活用)、ヘッドレスト収納、100Vアウトレット、長傘収納、バンパー下収納(リア)、グリップ兼用ハンガー、フルフラットコンテナ、ポータブルバッテリー、アウトドア用フック、屋外シアタースクリーン、屋外シアタープロジェクターと多数の装備を施した。いずれも簡単操作で、車内で快適かつ便利に過ごせるように考え抜かれたアイテムである。
そういえば、日産は1961年、初代ブルーバードに「ファンシーDX(デラックス)」というグレードを設定していた。女性をターゲットに据え、ピンクの2トーン塗装もあった。ウインカーの作動音がオルゴールだったり、サンバイザーに化粧品入れが組み込まれていたり、後席にはミニテーブルが用意されていたりと、女性が車内で快適かつ楽しく過ごすための配慮が随所に施されていた。ファンシーDXが女性に提供しようと考えた「おもてなし」「快適な空間演出」「便利な使い勝手」が、60年以上の時を経てコンテンポラリー・ライフスタイ・ビークルにも息づいている。